「立花隆 長崎を語る」刊行 被爆地ルーツに平和発信 長崎文献社

新刊を手に「立花さんと長崎との関わりを多くの人に知ってほしい」と語る堀編集長=長崎市大黒町、長崎文献社

 4月に80歳で亡くなったジャーナリスト、評論家の立花隆さんを追悼し、出身地長崎との関わりをひもとく「立花隆 長崎を語る」が長崎文献社から出版された。
 立花さんは1940年生まれ。田中角栄元首相の金脈問題を雑誌で追及し退陣に追い込むなど、戦後ジャーナリズムに大きな足跡を残したほか、宇宙や脳死、サル学、歴史など多彩なテーマで執筆活動を行い「知の巨人」として知られている。
 本作は、立花さんの長崎での講演録や論文などの再録、家族史、ゆかりのある本県在住者らの寄稿などで構成。講演録「次世代に語り継ぐ戦争」(2011年・長崎原爆資料館ホール)では、自身の生い立ちの他、学生時代に原水爆禁止運動に参加し1960年に渡欧、現地で原爆映画を上映するなどした体験がつづられている。
 寄稿は長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA=レクナ)の吉田文彦センター長らが執筆。それぞれ立花さんとの出会いのエピソードなどを紹介し、何事にも好奇心を持ち、被爆体験の継承に熱い思いを抱いていた立花さんの人物像に迫っている。
 家族史では、かつて活水女学校の教師を務めた父、橘経雄さんの教え子に、被爆者で医師だった故秋月辰一郎さんの妻、壽賀子さん(昨年11月、102歳で死去)がいたことに触れ、橘さんと秋月さん両夫婦がやりとりをしていた書簡の抜粋が掲載されている。
 立花さんと長年交流のあった長崎文献社の堀憲昭編集長は「晩年の立花さんは戦争、平和の問題を自身のルーツである被爆地長崎と結び付けて発信しようとしていた。そうした彼の実像を本書で多面的に描いた」と語る。
 四六判228ページ、1430円。

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