市民ボランティアが「地域猫」活動 30匹不妊化・去勢 毎日の餌やり、清掃 

猫に餌を与える菅原さん=長崎市茂木町

 飼い主のいない猫が長崎市の中でも多い方とされる茂木地区。約2年前から地区の住民ではない市民ボランティアが茂木港ターミナル(茂木町)付近に生息する野良猫の不妊化・去勢手術を実施。餌やりとふんの掃除なども合わせて行う地域猫活動に取り組んでいる。
 強い雨が降り続いた8月中旬、同市在住の菅原裕美子さん(39)はいつも通り午後4時ごろ同ターミナル近くに車を止めた。エンジン音が判別できるのか、次々に猫が集まってきた。
 餌はドライタイプ。1匹につき1枚の皿を使う。カメラを構える記者を警戒する猫もいれば、カリカリと一心不乱に食らい付く猫も。手作りの猫用トイレも近くに設けている。菅原さんは「ちゃんと掃除さえすればほとんどの猫はトイレを使ってくれる。でも雨が降ると掃除ができない」。びしょぬれになりながら分厚い雲を見上げた。
 2019年11月、同市内に住む菅原さんの母親が友人と一緒に同地区で地域猫活動を始めた。母がバイクで茂木港近くを通り掛かると猫がたくさんいた。「かわいそう。どうにかしないといけない」と感じたのがきっかけという。県外から長崎に戻った菅原さんも20年春から同行するようになった。
 猫は年に2、3回の出産が可能で一度に4~6匹産む。さらに交尾の際に排卵するため、妊娠率はほぼ100%。このため、餌やりと掃除だけでなく、捕獲(Trap)し、不妊化・去勢手術(Neuter)を受けさせ、地域に戻す(Return)。この「TNR」が重要とされる。
 菅原さんと母、そして一緒にボランティアに取り組む仲間が協力し、これまでに約30匹の不妊化・去勢手術を実施。県内の動物保護団体を通じて一部助成を受けたが、それでも1匹1万円の費用は自腹だ。体調が悪い猫がいれば、獣医師に診てもらう。治療費が10万円を超える猫もいた。
 地域住民ではないことで最初は苦労も多かった。「何をやっているんだ」「猫が増えてしまう」「勝手に餌をやるな」と言われた。そのたびに、菅原さんは母と一緒に不妊化・去勢を済ませたこと、餌をあげないとごみをあさってかえって地域に迷惑がかかる可能性があること、ふんの掃除もしていることなどを粘り強く伝えた。
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 「最近うれしい変化があった」と菅原さん。7月中旬、茂木地区の住民が「身近な地域の野良猫を考えるセミナー」を開催。長崎市内で地域猫活動に取り組むボランティアや市動物管理センター所長らがパネリストになった。
 住民約40人が参加。「不妊化・去勢をしていようが、餌やりには反対」「猫のふん害でこまっている」などの意見も出たが、「自分たちの町は自分たちで良くしていこう」という前向きな声もあった。
 菅原さんは「セミナーをきっかけに地域の方からTNRなどへの協力依頼があった。猫の問題を自分ごととして捉えてもらえるのはうれしい」と話す。
 自分が住む町でもないのに、時間とお金を使ってなぜそこまでやるのか。菅原さんは「猫は本能のままに生きているだけなのに、嫌われるのはかわいそう。でも地域猫として共生できれば人に迷惑もかけなくなるでしょう」とほほ笑んだ。

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