【大学野球】なぜ打率1割の“守備職人”が全国舞台で首位打者に? 慶大・渡部遼人に起きた変化

慶大・渡部遼人【写真:中戸川知世】

今秋は1番を務める渡部遼、2日連続の“猛打賞”で連勝に貢献

小柄な体格でも、チームでの存在は大きい。春の王者・慶大の中堅を守る渡部遼人(はると)外野手(4年)は、20日に行われた秋季リーグの東大戦で先制の適時三塁打を含む3安打2打点の活躍。連日の“猛打賞”の活躍にも「試合の中で色々修正できています」と淡々とした表情を崩さない。

春は主に2番で出場していたが、今秋は1番。堀井哲也監督は「大学選手権でもいいバッティングをしていまして、あのあたりから自信がついてきたのかなと思います。オープン戦でも結果を出していたので」と起用の意図を明かす。チームを連勝に導いた渡部遼は「出塁を期待されて1番にしていただいていると思うので、その役割を果たせているというのは自信になります」と頷いた。

ヒットにも、内容を求める。「結果に左右されないようにというのは意識していて、凡打でも(内容が)良ければ継続します」。19日も第1打席、第3打席で安打を放ったが、「体が開いて重心が下がっていた」。前日の反省を踏まえ「なるべくフラットに、力まずボールを長く見るというのを意識して結果が出ています」。この日のバッティングには手応えを感じたようだ。

昨秋の悔しさから、打撃改革に着手…正木からのアドバイスも

身長170センチ、68キロ。野球選手としては小兵だが、1年春からリーグ戦に出場。50メートル走を5秒9の俊足を生かした広い守備範囲で、チームのピンチを幾度も救う守備職人は、打撃面が課題だった。

昨秋は全試合に出場するも、打率1割台に終わり、冬の期間は打撃改革に着手した。ボールを遠くに飛ばすことを一丁目一番地のテーマに設定。グリップを体の近くから出し、その後にヘッドが出てくる「インサイドアウト」の意識も大事にした。中学時代のチームメートでもある主砲・正木智也外野手(4年)にもアドバイスを受けながら練習に励んだ。

春は打率.265。「思うようなスイングができてきた」。手応えが結実したのが、六大学王者として臨んだ全日本大学野球選手権。16打数9安打、打率.563の大活躍で、首位打者賞に輝いた。

全国の舞台での活躍に自信ををつけ、森田晃介投手(4年)、正木とともにプロ志望届を提出。「野球を始めてきた中で、日本で1番レベルの高いところでやってみたいという気持ちがあったので、目指すなら高いところを目指したい」と口元を引き締める。神宮のグラウンドを駆け回り、実りの秋にする。(上野明洸 / Akihiro Ueno)

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