野球を辞めてしまった理由「楽しくないから」 大人が忘れないでほしい子どもの原点

「始めたばかりの子に何から教えてあげればいいですか?」

編集部が取材をもとにヒントを導く連載「First-Pitchコーチ」

First-Pitch編集部では野球に関わる人たちの疑問解決のヒントを届けていきます。「First-Pitchコーチ」と題し、取材に基づいた参考例を紹介します。まずはSNSなどでも質問が多かった野球未経験の保護者が感じること。「始めたばかりの子に何から教えてあげればいいですか?」。この回答が導かれた先にあるものは、いつまでも持っていたい永遠のテーマです。

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野球を始めたばかりの小学生たちにまずやってほしい練習は「ボールを投げる、打つ、捕ることを楽しむ」ことだと思います。プロ野球選手や多くの指導者が口を揃えて言います。当たり前のことですが、それが当たり前じゃなくなっている現実があるので、目立ってしまいます。

では、どのように保護者が「楽しませるか」。それを行うにあたって、グラブとスポンジボール、プラスチックバットの3点を用意していただければと思います。各家庭によって家のルールが違うので、お子さんはお父さん、お母さんに確認をしてからにしてほしいですが、家の中でも楽しく、“室内野球”をやりながら練習してもらえればと思います。

内容はこだわりません。ボールだけ使って、ストライクゾーンに投げられたことを純粋に喜んでほしい。打球が前に飛んだこと、捕球できたことにも同様です。

大事なのはこの次で「こうやって投げた方が良いボールが投げられるよね?」「こう打ったらもっと強い打球が飛ばせるんじゃない?」と保護者から子どもに語りかけて欲しいです。ある少年野球の指導者さんから聞いたのですが「子どもたちはそこから考えることを覚え『もっと上手くなるにはどうすればいいだろう』という思考の習慣が生まれる」と言います。実際にそのように教えすぎず、考えさせる指導で子どもが育っている、と。

そこからお父さん、お母さんら保護者の方々が動きの基礎的な部分を教えてあげれば、子どもたちは自然な形で野球を学んでいくことができると思います。野球を始めたばかりの小学生たちには、楽しむことを忘れず、野球の基本も覚えていくといった取り組みのバランスが大切になっていくということですね。

逸材が辞めてしまったその理由はシンプルな一言

こんな話も現場の指導者さんから聞いたことがあります。小学6年生で遠投70メートル、50メートル走のタイムが7.2秒。年間の本塁打数は30本以上を数える、周囲に逸材と呼ばれるような子がいました。しかし彼は、小学校卒業と同時に野球を辞めてしまったそうです。理由は「野球が楽しくない」――。たったそれだけでした。

野球が上手くなるためだけに、野球の基礎を教える練習は、果たして心から楽しいと言えるのか――。もちろん、楽しいだけでは技術が上手くならないことも野球の醍醐味のひとつです。そこが子どもと保護者が心から同じ思いを持っているのならば、いいかもしれません。ただ、どんなに能力があっても、どんなに良い結果を残しても、そこに「楽しさ」がなければ、子どもがモチベーションを維持することは難しい点を忘れないでいてください。(記事提供:First-Pitch編集部)

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