衆院任期満了まで1ヵ月、各陣営は準備着々 「金秀離脱影響も」オール沖縄、「分裂の火種抱え」自民県連 

 11月実施が濃厚となる次期衆院選。秋の政治決戦に向け、県内各陣営とも着々と準備を整える。ただ「オール沖縄」勢力では、経済界の立場から支えてきた金秀グループの離脱と自民支持が明らかとなり、超党派の枠組みである「オール沖縄」の弱体化が浮き彫りになった。相対する自民党は総裁選の展開で勢いづくが、沖縄1区の現職・下地幹郎氏(無所属)の自民復党を軸とする「保守合同」の動きが絡み、全県規模で保守の足並みがそろわない火種を抱える。

 「オール沖縄は特定のリーダーが引っ張っているのではない。県民一人一人の思いが結集した運動体だ。この流れは意図的に誰かが止めようと思っても止められるものではない」
 呉屋守将金秀グループ会長の自民支援明言を本紙が報じた16日に、那覇市泉崎の県民広場前で開かれたオール沖縄陣営4氏の合同演説会。金秀離脱を念頭に置いたとみられる金城徹氏の訴えに、大きな拍手が起こった。
 陣営幹部の一人は「これだけの人が集まり、思いを一つにした。金秀が離れたからといってオール沖縄はまだまだ弱まっていない」と自信を見せる。
 だがオール沖縄の在り方については、内部からも革新色が強まっているとの不満がうっ積していた。別の幹部は「(金秀離脱で)ほとんどの保守系や経済界から三くだり半を突き付けられたオール沖縄の正体が本格的に暴かれた。選挙への影響は大きい」と懸念を漏らす。
 自民側も同様の見方だ。一度自民から離れた金秀の支持表明を手放しで喜ぶ態勢こそ整っていないが、オール沖縄のマイナスイメージの広がりに期待を寄せる。菅義偉首相の退陣表明を受け活発化する自民党総裁選で県内も弾みをつけ、次期衆院選に臨もうとする戦略を描く。
 追い風ムードも漂うが、自民復党を狙う1区の下地氏を巡る動向が懸念としてつきまとう。
 「(保守合同の動きを)下地氏の再選を願う(運動)という風に切り替えたい」。下地氏の自民党復党を求める「保守合同を実現し沖縄の未来を創る会(保守合同の会)」の国場幸一会長(国場組会長)は、16日に那覇市牧志で開かれた同会の事務所開きで、復党協議に応じない自民県連への批判を織り交ぜつつ宣言した。
 現状は「自民県連との協議を待っている段階」というのが保守合同の会の“公式見解”のため、周囲は打ち消しを図るものの、集票カードを配布するなど臨戦態勢を整える。
 そのような保守合同の会の姿勢に対し、1区で下地氏と対抗する国場幸之助氏(自民)の周辺は「白黒はっきりさせた方が良い」と受けて立つ構えを見せる。
 ただ保守合同の会には国場組をはじめとした県内有力企業が名を連ねる。同会関係者は「2~4区のマンパワーを1区に集中することになる」と、他区でも自民の集票に関わらないとの立場を示し、県連をけん制する。
 1区だけでなく県内全域に影響が飛び火することを危惧する自民関係者は少なくない。ある他区の関係者は「まとまらなければ、この地域での(自民候補の)当選も危なくなる。(下地氏という)『嫌いなものを食べる』努力も必要ではないか」と漏らした。
 (大嶺雅俊)

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