障害年金生活になった39歳DINKS夫。今後どの程度の年収を確保すればよい?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、共働きの妻(37歳)と暮らす39歳の男性。体を壊し、現在療養中で、障害年金生活に入ったという相談者。資産総額は1,800万円、住宅ローンも完済していますが、先行きが不安とのこと。今後どの程度収入を得れば安心でしょうか? FPの鈴木さや子氏がお答えします。

現在39歳。体を壊して年金生活に入りました。現在は療養中です。

今後は以前のようには働けそうにありません。幸いにして多少貯蓄ができており、住宅ローンも完済しているのですが、先行きが不安です。どの程度の年収を確保するようにすればよいでしょうか。ちなみに共働きの妻(37歳)がいますが、妻も足に障害を持っているため、将来に使うかもしれない医療費(車椅子など)も備えておきたいです。子どもはたぶん持てないかと思います。

私の年金は月額換算で7万円程度、妻が月給40万円程度。妻は足がわるいため、将来的に介護が必要になる可能性あり。

【相談者プロフィール】

・男性、39歳、無職、既婚。妻37歳。

・住居の形態:持ち家(戸建て・大阪府)

・毎月の世帯の手取り金額:47万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:100万円

・毎月の世帯の支出の目安:17万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:0円(固定資産税月額換算1万円程度)

・食費:7万円

・水道光熱費:1万円

・保険料:かんぽ終身保険1万6,000円、ガン保険2,000円、埼玉県民共済2,000円、年金保険2万円程度

・通信費:1万円

・車両費:0円(妻の障害用カスタマイズ軽自動車を一括購入。10年に1度程度買い換え予定)

・お小遣い:各自3万円程度

・その他:妻の実家に毎月3万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:妻が20万円程度(使わない分)

・ボーナスからの年間貯蓄額:100万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):600万円

・現在の投資総額:1,200万円

※資産内訳:現金600万円、国内個別株700万円、投資信託300万円、純金積立100万円(毎月1万)、iDeCo合計毎月4万6,000円、つみたてNISA年額40万(夫のみ)、年金保険60歳よりトータル600万受け取り予定、負債ゼロ

・現在の負債総額:0円


鈴木:現在、療養中とのこと、とても心配なお気持ちがあることでしょう。療養に安心して専念されるためにも、お金のご不安は少しでも減らしたいですよね。すでに住宅ローンを完済されており、資産形成も進めていらっしゃるため、大きな心配は不要と思います。数字で今後のシミュレーションを確認してみましょう。

今の貯蓄状況が継続した場合、資産は40年間底をつくことはない!

現在、毎月20万円、ボーナスから100万円と、年間340万円の貯蓄ができています。貯蓄ペースが変わらなければ、ご相談者様が60歳、奥様が58歳時点の21年後には、途中2回、自動車(200万円と仮定)を買い替えたとしても、今よりも6,740万円資産が増えて8,540万円となることに。しかも、iDeCoとつみたてNISAにも積立投資されていますので、運用状況によってはもう少し資産形成できるかもしれません。

この8,540万円に加えて、60歳からトータルで600万円の個人年金を受け取り予定です。合計である9,140万円を、100歳まで生きると仮定し、40年間取り崩したら、毎月いくら受け取れるか考えてみましょう。

単純に、9,140万円を40年間で割って計算すると、毎月19万円となります。もし、介護費用として500万円かかるとしても、毎月18万円取り崩せます。現在の生活費(保険料や奥様実家への送金を除く)は、お小遣いを入れても16万円と、この金額を下回っていることを考えると、年金で不足する分や医療費などを考慮しても足りるのでは? と筆者は考えます。ぜひ一度ご夫婦が受け取ることになる年金額を、ねんきんネットや年金事務所などで調べてみてください。受け取る年金に加えて、資産から毎月18~19万円を取り崩しても、40年間底をつくことはないと考えたら、少しほっとされたのではないでしょうか。

運用を続ければさらに資産は延命

また、もしこの資産のうちiDeCoや投資信託などの運用資産について、運用を続けながら、少しずつ取り崩すようにすれば、さらに資産寿命は延びるでしょう。たとえば、60歳時点での運用資産がもし2,000万円あった場合、毎月10万円ずつ運用せずに取り崩したら、なくなる期間は16年8カ月ですが、1%の利回りで運用しながら取り崩せたら18年3カ月に、2%であれば23年2カ月と延びます。その時のご相談者様、奥様の状況によって、すべて現金化するか、運用を続けて取り崩すか考えると良いでしょう。

よって、家計収入と支出の差が、年間340万円である状況が続いた場合は、大きな心配はそんなに要らないと言えます。ご相談者様は、今は治療に専念し、良くなってから可能であれば復職するという心づもりで、問題ないと思いますよ。

もし子どもを希望されているのであればぜひ考えて

ご相談内容の最後にあった「子どもは持てないかと思います」という一文が少しだけ気になりました。ご相談者様と奥様のご希望は文章からはわかりませんが、もし、お金のことが心配であきらめているということであれば、前向きに考えても良いのではないかと私は考えます。

子育て費用は、トータルで2,000万円などと言われますが、それはあくまで毎月の積み重ね。生活レベルを上げすぎなければ、収入が大きく増えなくても、お子様一人は可能です。

少し古いデータですが、子育てにかかる費用を年齢別に中学生まで出している「平成21年度インターネットによる子育て費用に関する調査」によると、夫婦だけの生活に比べて、子どもが一人生まれると年間84~156万円支出が増えるようです。これに加えて、大学費用のための積立を月1万5,000円(合計324万円)するとした場合、ご相談者様は年収102~174万円のお仕事ができれば、現状の貯蓄ペースを落とさずに資産形成ができそうです。もしご希望でしたら、決して不可能ではないという前提で、ご夫婦で話し合ってみてくださいね。

iDeCoの積立は状況次第で調整を

現在、年金収入7万円のうち、iDeCoとつみたてNISAに毎月約5万6,000円積み立てているため、ご相談者様が使えるお金は1万4,000円しかありません。奥様の収入を合計した家計全体で考えればよいとはいえ、ご相談者様自身が毎月使えるお金を、もう少し残してもよいのではないかと感じました。

iDeCoの大きなメリットである所得控除は、所得税が発生しない年になったら受けられません。もし、今年すでに所得税が発生していないのであれば、iDeCoの掛金を最も少ない5,000円に下げるか、あるいは拠出を中断するという選択肢もアリだと思います。もちろん、運用益は非課税ですので、積立投資を続けたいのであれば、このままで良いですが、手元に使えるお金を残したいとお考えであれば、iDeCoを無理に続けなくても良いのではないでしょうか。ただし、掛金拠出を中断した場合でも、毎月の運営管理手数料はかかりますのでご注意を。家計全体での貯蓄力を落としたくなければ、奥様がその分つみたてNISAを始めても良いですね。

今を生きるためのお金も大切にしつつ療養に専念を

ご相談者様の大事な年金収入です。ご自身の身体の状態や価値観に合うお仕事を探す際にも、資金はとても大事。将来への備えも大切ですが、今を生きるためのお金を取っておくことも同じように大切ですよ。ぜひご夫婦で話し合ってみてくださいね。

無駄な支出もなく、しっかり貯蓄もされているため、お金のことはほとんど心配ないでしょう。療養に専念して、ご夫婦で楽しいことにお金を使える日が早く来ることを祈っております。

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