蒼井翔太◆「もし演者が好きという方でも、見に来ていただく皆さまには、演者を作品の中で生きているキャラクターとして見ていただきたいという気持ちがあります」

舞台は、徳川慶喜が絶対権力を維持し続けている明治64年。そんな架空の日本で、闇の処刑人組織・鵺が暗躍する――。今年4~6月に放送され、独自の世界観で話題を呼んだアニメ「擾乱 THE PRINCESS OF SNOW AND BLOOD」が、この秋舞台化! キャストはアニメと同じで、鵺に所属する処刑人の雪村咲羽役は三森すずこ、同じく処刑人の月城真琴役は蒼井翔太と、豪華な布陣だ。今回、蒼井へのインタビューを敢行! アニメと舞台でそれぞれ月城を演じる上で気を付けていることなどを深掘りした。

――アニメ「擾乱~」は、好評のうちに幕を閉じました。印象的な反響はありましたか?

「『擾乱~』は、驚かれる要素が多い作品だったように思います。放送は1クールでしたが、その中で1~4話が第一章、5~8話が第二章、9~12話が第三章といった“章立て”がありました。それと、キャラクターが異形の物に変わってしまう展開もあって…。僕として一番印象に残っているのは、主人公の“雪”こと雪村と暮らす少女・中村浅陽(伊藤彩沙)のかわいさ。浅陽は雪のことをすごく愛しているんですよね…。視聴者の方からも『浅陽ちゃん、かわいい!』という声があって、オンエアのたびにめちゃくちゃ反響を呼んでいたように思います」

――蒼井さん演じる“月”こと月城は、一見物腰柔らかですが、真意がつかめない処刑人。男装の麗人であるという設定に加え、雪村の同僚でありながら、裏切ったり、協力したり…といった行動にも驚きがありました。

「 “月”に限らず、そういうところがあるんですよね。もう一人いる処刑人の“花”こと花風エレーナ(Raychell)も序盤で“雪”と対峙(たいじ)する展開がありました。同じ組織で活動しているはずなのに、“雪”“月”“花”の3人って何なんだろう…と思っていましたね。後半に入ると、1人ずつの事情がひもとかれていきますが、最後まで“どうしてこんなことをするの?”と、理解が難しいのが“月”でした」

――そんな“月”、異形のへ変化しつつ、“雪”への思いを吐露しましたよね。

「変わってしまった“月”は、化け猫というのでしょうか…。『かわいい』とは程遠い姿になってしまいました。それは、それほどまでに“雪”を思っていたからこそ。抱えていた腸が煮えくり返るような思い、自分の思い通りにならない心情、自由になりたい思い、“自分に正直に生きるんだ”という意思…。彼女の人間くさい部分がすごく出ていましたね」

――キャストの方々は、今回の舞台化の話どのように受け止めていたのでしょうか

「キャスト同士の内輪では、『舞台化したら面白いよね』みたいな話はしていました。キャストの皆さんは、僕以外も舞台での演技経験がある方々ばかりでしたし…。正式にお話をいただいてからはワクワクしていましたね。僕自身が演じる“月”は、男装の麗人。“アニメよりもそこをしっかりと表現するには、どうしたらいいんだろう”と、ずっと考えていました」

――アニメで同じ役をやっていたからこそ、舞台でも演じやすい部分はあるのでしょうか?

「それはあると思います。今日行われたビジュアル撮影も、本番とは少し違うのですが、舞台での“月”としての衣裳で臨ませていただきました。アニメで“月”というキャラクターを演じさせていただいたからこそ、彼女のバックグラウンドや、常に心に持っているものが分かっています。そのおかげで、スムーズに撮影を終えることができました。表情を作る時も“月”に背中を押されて、自然に彼女らしい表情になったかなと。そこはありがたいことですね」

――同じ役を演じるからこそ、注意する点もあるのでしょうか

「見に来てくださる方の“好き”には、いろいろなものがあると思うんです。キャラクターが好きで見に来てくださる方ももちろんいらっしゃるでしょうし、演者が好きな方もいらっしゃって、もちろん“蒼井翔太が演じるから見に行きたい!”というのもうれしいですし…。とはいえ、もし演者が好きという方でも、見に来ていただく皆さまには、演者を作品の中で生きているキャラクターとして見ていただきたいという気持ちがあります。そのために、見た目や表情を通じて、その生を全うすることが大切だと思うんです。それは、一般的に言うと“憑依させる”というのかもしれません。僕らキャストは、彼ら彼女らの姿をちょっとお借りするわけですから、実写だからといって、少しでも違うところは出したくない。しっかり爪の先まで、彼ら彼女らになりたいです」

――声だけでお芝居していたキャラクターを、全身で表現するということですね

「そうですね。それは、単純に僕としては楽しいことだなと思うんです。ただ生きているだけでは経験できない、彼ら彼女らになれるので…。すごく役得でもあり、人生の勉強にもなりますし、“こういう生き方もあるんだ”とも思えますし。僕はまだまだ、“一度きりの人生”を語るには早いですけれど、役をいただき、演じるようになってからは、いろんな“生”を目の当たりにしてきました。そのことは、蒼井翔太として生きていく中でもすごく役に立っているんです」

――ちなみに、アニメ「擾乱~」では、月城らが革命をもくろむ反体制派組織・クチナワと戦いますが、蒼井さんの中で最近、革命的だった出来事はありますか?

「コロナ禍になり、いろいろなものを自分で用意するようになったことでしょうか。今までは、声優、タレント、アーティストとして、作品や歌など、目の前のお仕事に集中することが一番の目的。そのために、衣装やスタジオなどを、スタッフの方々に用意していただくケースがほとんどだったんです。それが、コロナ禍でガラッと変わりました。例えば、ラジオの収録をリモートですることが増えています。そうすると、頼りになる方に相談しつつ、機材を自分で用意して、組み立てなければいけません。お仕事で使うものを自分で組み立てることって、僕はほとんどなかったんですよ。説明書も全然読まない人間だから(笑)。コロナ禍になってから、初めてしっかりと説明書を読むようになりました。これは、僕の中では革命です。もちろん、今も周りの方々に用意していただくものはたくさんあるんですけど…。決してコロナ禍を肯定するわけではありませんが、“今のままではいけない”と、考え直せるきっかけになりましたね」

――それでは最後に、「舞台『擾乱~』」がどんな作品になりそうかを教えていただけますでしょうか?

「舞台は、本編とはまた違ったお話になるようなんです。“アニメをそのまま再現するとしたら、アクションシーンとかはどうしよう!?”と思っていたんです。“月”が異形の物になった時の姿は、体がすごく露出しているし、ぴょんぴょん飛んでいるし…。ただ、ファンタジックでダイナミックな舞台になるはず。それと、おそらく、舞台でも“月”はやることがいっぱいあるキャラクター。刀は用意されていて、殺陣を教えてくださる先生もいらっしゃって…。アニメでも“月”は刀で戦っていたから、そこはしっかりとやり遂げたいです」

【プロフィール】

蒼井翔太(あおい しょうた)
8月11日福井県生まれ。獅子座。B型。アニメ「ヴィジュアルプリズン」(TOKYO MXほか)が10月8日スタート。アーティストとして、ライブツアー「蒼井翔太 LIVE 2021-2022 WONDER lab. coRe」を12月25日から開催予定。

【作品情報】

「舞台『擾乱 THE PRINCESS OF SNOW AND BLOOD ~陽いづる雪月花編~』」
10月28日(木)~11月7日(日)
会場:東京・明治座
©擾乱製作委員会

徳川慶喜が絶対権力を維持し続ける明治64年の日本。葛原仁(小林親弘)率いる闇の処刑人組織・鵺に所属する雪村(三森)、月城(蒼井)、花風(Raychell)らが、反体制派組織・クチナワを駆除するために戦う姿を描く。アニメに引き続き、同じキャストで舞台化。

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取材・文/仲川僚子 撮影/藤木裕之

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