巨人・中田翔「3タコでも高評価」の背景に〝アニキ〟阿部二軍監督との絆

広島戦に昇格即スタメン出場した中田翔(東スポWeb)

巨人の中田翔内野手(32)が待望の〝アニキ〟を手に入れた。巨人は21日の広島戦(マツダ)に0―2で敗れ今季7度目の零封負け。首位・阪神とのゲーム差は3・5に広がった。その一方で昇格即スタメンとなった中田は3打数無安打1四球も、原辰徳監督(63)は高評価。その裏にはわずか10日間の二軍生活ながら、より強固になった阿部慎之助二軍監督(42)との師弟のキズナがあった。

故郷・広島での快音は出なかった。「6番・一塁」で出場した中田は2回の第1打席で四球を選んだが、その後は2三振を喫するなど3打数無安打に終わった。

チームも打線が相手先発・床田にプロ初完封を許すと、先発の山口は6回に2失点。原監督は「完封されているわけだから。今は我慢しながら、やるべきことだけはちゃんとやる」と次戦へ切り替えた。

その一方で中田については「まあまあ、いい感じだと思いますね」とうなずくと「結果は出なかったけど、フィールディングなんかもうまいしね。あれを1ヒット(単打)で止めるところもね、すごいですね」と、強襲打をグラブに当てた6回の守備には合格点を出した。

とはいえ中田に求められるのはあくまでもバットでの結果。残り26試合、起爆剤としての働きなのは間違いない。現在の上昇気配を生んだのは、やはり二軍での経験が大きかったようで、二軍で中田は阿部二軍監督の十八番である腰を落としてのティー打撃にも、泣き言を言わず連日、汗を流した。同監督から「アガれ」と指示されると、中田は「ハイッ!」とうれしそうに従っていた。

また16日の楽天戦(ジャイアンツ球場)、2発を含む3打数3安打の中田に第4打席では阿部二軍監督から「1球も振るな」と指示が出された。実戦では貴重となる相手の攻め方と球筋を見ることに専念させるため。中田は指示通り見逃し三振に倒れた。

目の当たりにした球界関係者は「中田にとって必要だったのは信頼できる兄貴分。今の中田にこんなに厳しく言ってくれる人はいなかった。〝舎弟〟としてすべてを委ねて従っていれば、悩むことなく野球に集中できる。日本ハムのリーダーとして長年、気が張っていた中田にとって阿部二軍監督がいる二軍は最高の環境だった」と指摘した。

実際、大阪桐蔭から日本ハムに入団後、中田が〝アニキ〟と慕ったのが、現侍ジャパンの稲葉篤紀監督(49)だった。その稲葉氏が14年に現役引退すると「大将」中田がチームを引っ張る立場となった。以降、目に見えないストレスも募っていたのだろう。

もともと中田と阿部二軍監督の関係は深い。2013年のWBCで中田は野手最年少として代表入り。そんな〝新顔〟を現役だった稲葉監督とともに、主軸だった阿部二軍監督がサポートしていた。代表デビューで結果を残した中田は17年WBCでは「日本の4番」に成長。それから時が流れ巨人二軍で「新旧背番号10」として同じユニホームでプレーすることになった。

二軍滞在期間はわずか10日間だったが、二軍でようやく得た〝アニキ〟のためにも中田は結果で応えられるか。

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