東海道新幹線でホットコーヒーが売れるわけ 車内販売1位独走、人気商品の舞台裏

By 関かおり

 東海道新幹線車内でのホットコーヒーの販売(JR東海提供、写真はイメージで実際の車内販売ではありません)

 旅の気分を盛り上げてくれる車内販売。ところで、東海道新幹線の車内販売で一番売れているのはどの商品か知っていますか。わたしはずっとペットボトル飲料かビールだろうと思っていました(現在、JR東海は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて車内での酒類販売を中止しており、ビールは買えません)。

 見出しに答えを書いてしまったけど、正解はホットコーヒー。データが残る2010年からぶっちぎりの首位の座に君臨し続けています。なぜそんなに売れてるのか? 手掛けている「ジェイアール東海パッセンジャーズ」に聞いてみました。(共同通信=関かおり)

ジェイアール東海パッセンジャーズが東海道新幹線車内で販売しているホットコーヒー(JR東海提供)

 ▽月10万杯!

 東海道新幹線の車内販売で、ホットコーヒーは平均して1日約3300杯、月に約10万杯売れる。第2位のアイスコーヒーは1日1200杯、月に約3万6千杯。これは新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けている21年4~6月期のデータで、コロナ前はこの3倍くらい売れていたという。

 ホットコーヒー販売の歴史は長い。国鉄時代から売られ、人気商品だった。ジェイアール東海パッセンジャーズはコーヒーを「車内販売で最も重要なアイテム」と位置づけ、11年にブランド「アロマエクスプレスカフェ」をつくって、開発や販売に力を入れ始めた。

 新幹線車内で販売するコーヒー開発のため打ち合わせをするジェイアール東海パッセンジャーズ社員ら(JR東海提供)

 人気を維持するため、味はコーヒー会社からの提案を集めて検討、細かい調整を繰り返している。これまでに20回リニューアルした。

 同社営業推進部の浅賀教博(あさか・のりひろ)部長によると、コーヒーの味にははやり廃りがある。「シングルオリジン」と呼ばれる単一の豆を使うコーヒーがはやった時期もあれば、苦みの強い深煎(い)りのコーヒーが好まれた時期もあった。今は酸味を抑え、華やかな香りやこくのある味わいを重視している。

 浅賀部長は「東海道新幹線はビジネスユーザーが多い。特に40代のビジネス客の男性に好かれる味を追求している」と話す。

 ▽こだわり

 ホットコーヒーは新幹線車内に設けられた準備室のコーヒーマシンを使って販売直前に用意し、ポットからコップに移して提供する。現代の技術をもってすればもっと簡単にほかほかしたコーヒーを出せそうなものだと思うが、浅賀部長によると「できたての状態で提供することにこだわっている」。

東海道新幹線車内の準備室でコーヒーを入れるパーサー(JR東海提供)

 JR東日本は、駅の売店で事前に購入してから乗車する客が増えたことなどを理由に19年、新幹線車内でのホットコーヒー提供を終了。JR西日本は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、現在山陽新幹線の車内販売を中止している。

 新型コロナの影響を受けているのは東海道新幹線も同様。利用者数は低迷した状態が続く。そんな中で、今年7月には3段階で焙煎(ばいせん)した豆をブレンドした新アイスコーヒーがデビューした。

 「コロナ禍でも移動をしなければならない東海道新幹線のお客様に、車内で少しでものんびりしてもらいたいという思いで開発した」

 ジェイアール東海パッセンジャーズは「快適な旅行をしていただくために、車内販売は重要なものだ」とし、当面、車内販売を続ける方針。前回のリニューアルから約3年がたつホットコーヒーは、間もなく新しい味を検討する時期を迎える。

© 一般社団法人共同通信社