自主制作を行うアニメーション作家たちの活躍も、韓国アニメーションが国際的に認められる大きな力となっている。
韓国では1990年代後半から、コンテンツ振興政策の一環として多くの大学にアニメーション学科が設けられ、専門教育が行われてきた。その中から若いクリエーターが育ち、自由なアイディアと技法による多彩な作品が、世界のアニメーション映画祭に出品され始める。
2005年には、自主制作作家たちの権利保護のために作られた団体「韓国インディペンデント・アニメーション協会」が、学生の卒業制作やプロの短編作品を集めた映画祭「インディ・アニフェスト」を開催。現在では、アジア全域から作品が応募される国際的な映画祭へと成長した。
受賞者の中からは、アヌシー(フランス)、ザグレブ(クロアチア)、オタワ(カナダ)、広島の、世界4大アニメーション映画祭で入賞する作家も登場。映画祭をきっかけに、長編監督へとキャリアアップするケースも現れた。
「インディ・アニフェスト」の毎年の優秀作を日本で紹介上映する映画祭『花開くコリア・アニメーション+アジア』も、今年で13回目を数えている。
一方、商業アニメーター出身の監督たちも、劇場用長編で実力を発揮。海外の映画祭で受賞するなど、韓国アニメーションの最前線を国内外に伝えてきた。
人気ドラマ「冬のソナタ」(2002)のアニメーション版を手掛けたこともあるアン・ジェフン監督は2011年に、1970年代の若者たちの日常を、郷愁たっぷりに描いた『大切な日の夢』を発表。
その後も、『そばの花、運のいい日、そして春春』(2014)、『にわか雨(原題)』(2017)、『巫女図(原題)』(2017)といった韓国近代小説のアニメーション化作品で、高い評価を受けている。
また、にわとりの冒険と自立、愛を描いた児童小説のベストセラーが原作の『庭を出ためんどり(原題)』(2011)は、韓国アニメーション映画の最高傑作と言われ、国内アニメーション映画として歴代1位の220万人を動員した。
こうした積み重ねを経て、近年では『整形水』のような、成年向けの劇場用作品も観客に受け入れられる環境が整ってきた。
韓国映画やドラマなど映像コンテンツ全体がさらに洗練されてきたことや、ウェブトゥーンの隆盛など、作品の素材となるコンテンツが国内に蓄積されてきたことが、アニメ業界にも良い影響を与えていると思われる。
そして2020年、ゲームや映画などに比べ遅れていたアニメーションへの国家的支援を進めるための「アニメーション振興法」が施行され、今年はさらに制作や輸出、業界の労働環境の改善などを掲げた「アニメーション振興計画」も発表された。
長い苦難の道を経て、アニメーションが「次に来る韓流」として大ブレイクするための準備が、今着々と進んでいる。
Text:田中恵美(ライター・編集者)
Edited:佐藤結(ライター)