プロ野球チア界のレジェンド 元楽天チア、現東京ガールズのAKI(上田 亜樹)が現役引退を表明。最後の舞台は9月25日

数多くのチアリーダーがプロ野球でパフォーマンスをしてきたが、その中でも最も高い知名度を誇るのは東北楽天ゴールデンイーグルスの『東北ゴールデンエンジェルス』として球団創設から12年間も活動を続けてきた上田亜樹だろう。

2016年にゴールデンエンジェルスを卒業した際には、ファン感謝祭で上田を送り出すセレモニーが開催され、当時の梨田昌孝監督から花束まで贈られた。彼女の卒業は大手メディアも大きく報じた。
プロ野球の歴史で、これだけ盛大な卒業セレモニーを開かれたチアリーダーは上田だけで、その存在感の大きさはチアリーダーの枠を越えて、球団の看板選手にも劣らないものだった。

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上田がプロ野球のチアを引退したのは、5年も前の2016年のこと。ときは流れても、彼女の存在をファンが忘れることはなく、今年7月にオールスターゲームが仙台で開催されたときには、彼女にもスポットライトが当てられた。

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楽天のチアリーダーを卒業する際には、「ダンスがすごく大好きで、こんなに素敵な場所で踊らせてもらい幸せでした。たくさんの夢をもらうことができました。ずっと続けていたダンスももっとレベルアップして笑顔を届けられるようにしたいです」とダンスへの情熱を口にした。
「エンジェルスを卒業してからは球団職員として働きながら、毎日ダンススタジオでレッスンを受け、これでもか!というぐらい踊っていました」と当時を振り返る。

楽天球団が創設された2005年にエンジェルス一期生として加入した彼女は、シーズン97敗を喫した05年シーズンや2013年の球団初の日本一など、球団の栄光と挫折を経験してきたが、そんな中で12年間のゴールデンエンジェルスの活動で最も印象に残っているのは、2011年の東日本大震災と震災からの復興だった。
「12年間、プロ野球専属のチアリーダーというとても大きな舞台で活動させていただき、その最中に東日本大震災が起こり、あの時に感じた感謝の気持ちや大好きな東北の事をもっとたくさんの方に伝えたいという想いはずっと心にありました」
卒業後にゴールデンイーグルスの球団職員として働いていく中で、「球団職員として、また違う形で様々な地域の皆様と、それまで以上に密に触れ合う機会も多く、それまで感じて来たこと、感謝の気持ち、笑顔や元気を日本中に発信したいと強く想う様になりました」と日本に元気を発信したいと感じるようになった上田は、チアリーダーとして現役復帰を考え始めた。

そんな上田の心を捉えたチームが、「あなたを応援します!日本を応援します!」をモットーに活動する『東京ガールズ』だった。
「東京ガールズにチャレンジしたのは、東日本大震災をきっかけに新たに生まれ変わったチーム、そして、どこのスポーツチームにも所属していない独立したチアチームであるからこそ、出来る事があると思ったからです。SNSで観ていたパフォーマンスにも魅了され、『あなたを応援します!日本を応援します!』のチームスローガンと、そして、海外で活躍された柳下容子代表の元、東京ガールズのメンバーとなり、チアリーダーにとって大切なたくさんの事を学びながら、多くの事を発信できるチアリーダーになるには、東京ガールズしかないという想いから、オーディションを受けました」

2019年に東京ガールズのオーディションを受けて、合格。生まれ育った東北を離れ、プロ野球のチア界で『レジェンド』と呼ばれた上田は、『ルーキー』として東京ガールズに加入した。

「同じチームに12年所属という経歴を見て驚きました」と振り返るのは、東京ガールズを率いる柳下代表。
「そんな彼女が、人生を懸け、東京ガールズを選んでくれた事にとても嬉しく、どんな経験をこのチームで一緒にできるか、と楽しみにもなりました」
NFLのサンディエゴ(現ロサンゼルス)・チャージャーズ、そしてNBAのロサンゼルス・クリッパーズと日本人で初めてNFLとNBAでチアリーダーとして活躍した柳下は、東京ガールズを本場アメリカのチアチームにも負けない軍団へと育て上げてきた。
アメリカで活躍してきた柳下から見ても、『AKI』として東京ガールズに加入した上田は、ただのルーキーではなかった。
「自分に厳しいAKIは、行動そのものがプロ。一見、派手な容姿ではありますが、実はとてもまじめで寡黙な女性です。内面は周りを包み込むような穏やかさを持っています。AKIは、チームに調和、協調性、そしてプロ意識をもたらしてくれました」

2019年の夏から東京ガールズに加入して、その年の12月にはとても大きなチャンスが巡ってきた。
柳下の古巣でもあるNBAのクリッパーズの試合でパフォーマンスを披露する機会が与えられたのだ。試合が行われたのはAKIの誕生日でもある12月1日。そして、クリッパーズの対戦相手であるワシントン・ウィザーズは、日本人選手の八村塁が活躍するチームでもある。
「私の誕生日にNBAのクリッパーズのコートで、大好きなチームメイトと一緒に、日本の美しさや和を表現したパフォーマンスができたのは、本当に奇跡の様な夢の舞台でした」
東日本大震災が起こったとき、13歳だった八村は富山県に住んでいたが、高校時代の3年間はAKIと同じ宮城県仙台で暮らした。
「高校時代は地震と津波の影響を受けた仙台に住み、渡米するまでの3年間を過ごしました」
同時期に震災から復興する仙台にいた八村とAKIが、アメリカで同じNBAのコートに立ったのも奇跡的な巡り合わせだった。

東京ガールズのメンバーたちがNBAのコートで踊れたのは、多くの人の協力があったから。「あなたを応援します!」と言い続けてきた東京ガールズを、今度は無数のファンが応援して、クラウドファンディングを通して渡航費を支援してくれた。
「NBAのコートに立つにあたり、クラウドファンディングも行いました。後日、ご支援くださった方をご招待して、東京でパフォーマンスを行いましたが、仙台から駆けつけてくださった方々もいらっしゃり、本当に胸が熱くなりました」

NBAという大きな夢舞台でのパフォーマンスなど、AKIは東京ガールズのメンバーとして順調なスタートを切ったが、2020年春に世界を襲ったパンデミックにより、活動が制限されてしまう。
「東京ガールズのメンバーとなり、2020年の年明けにはコロナ禍で活動はかなり制限されましたが、その中でも東京ガールズとして出来る事、チアリーダーである自分に出来る事を探し、全力で突っ走った2年間でした。こんな時だからこそ、よりレベルの高いパフォーマンスを突き詰めようと、出演機会が無くてもチームリハーサルを継続し、向上心あるチームの中で自分自身のパフォーマンスに対する向き合い方も変わり、コロナ禍だからこそ、スピリット面でも鍛えられる事が多くありました」

AKIに東京ガールズで鍛えられた部分を尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「技術面では『ダンスの魅せ方』です。東京ガールズはNBAスタイルを基軸とし、本当に様々な雰囲気のダンスナンバーが何十曲もあります。迫力の中にある女性らしさや、女性の強さ、今年は医療従事者の皆様へ感謝の気持ちを込めたパフォーマンスも新たに加わったりしました。体の動きや表情だけではなく、内面からしっかり魅せる事、ダンスの雰囲気を創り出して表現することは特に学ぶ事ができたと思います」

「スピリット面では、『強い気持ち、自分を持つこと』です。東京ガールズは独立したチアチームであり、活動範囲は幅広くありますが、必ず約束された出演機会がある訳ではありません。コロナ禍では特に、出演機会が少ない中でもリハーサルは継続していく、という状況の中で、『何を目指すのか、何のために活動するのか』
自分やチームとしての原動力、軸となるものを改めて深く考え、強いものにする事ができました」

「現在受け持っているチアスクールで、『コロナ禍でも、マスクをしていても、もっと伸び伸びと笑顔でチアを楽しんで夢中になれるような環境を作りたい』という想いも強くなり、子供達の夢を後押ししたいという新たな目標ができたことも、今回の現役引退につながる1つとなりました」と現役引退の理由を明かしてくれたAKI。
今後は指導者として後進の育成に励んでいく。
「まずはチアを大好きになってもらいたい事が1番です。チアを楽しむ気持ち、チームメイトと踊る事の楽しさを通して、素直に『ありがとう』と言えたり、誰かのために行動ができたり、夢を本気で追いかける事ができるような、そんな素敵なチアリーダーを育てていきたいです」

AKIが現役チアリーダーとして踊る最後の舞台は、9月25日に東京ガールズの公式インスタグラムにて行われる「インスタライブ」。
これまで支えてくれたファンに感謝の気持ちを直接伝えることはできないが、世界中のどこからでもアクセスができる「インスタライブ」は、日本中だけでなく、アジアにもファンがいるAKIにとって相応しい舞台とも言える。
「球団創設時からずっと応援してくださっている方々、遠方や他球団ファンでも応援してくださった方々、アジアシリーズで訪れた台湾でお会いし、熱く応援してくださった方々、本当にたくさんの方に支えられて、感謝の気持ちでいっぱいです。
チアリーダーを仕事にしてから、悔しかった事、悲しかった事もたくさんありますが、それ以上に皆さんの笑顔が大好きで、お会いした事が無くても応援してくださる方がいたり、その気持ちが本当に嬉しくて、ここまでチアを続ける事ができました。
マスク越しではありますが、大好きと言ってくださった『笑顔』を届けられる様に、25日は今までで1番最高のパフォーマンスで、言葉にはできないたくさんの感謝の気持ちをお伝えしたいです」

東京ガールズ2020-21年感謝祭・インスタライブ 9月25日(土)21:00から
メンバーの想いが沢山あふれたインスタライブをお楽しみに☆彡
https://www.instagram.com/tokyogirls_official/

東京ガールズ・柳下容子代表からAKIへのメッセージ

現役、お疲れ様でした。卒業のタイミングを自分で決める選択は本当に大変だったと思いますが、その先の希望や、それ以上の目標を見つけられた事でしょう。寂しい気持ちはもちろんありますが、心からAKIの卒業をお祝いし、今後もAKIを全力で応援していきたいと思っています。
これからも、チアの持つ可能性を広げ、共に駆け抜けようね!!!
AKIとの出会いに心から感謝。そして沢山の希望をありがとう。

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