伏兵モファットのインフィニティが初のポール・トゥ・ウイン。フォードも今季初勝利/BTCC第7戦

 2021年シーズンも終盤戦に突入したBTCCイギリス・ツーリングカー選手権第7戦が、9月18~19日にクロフトで開催され、予選でキャリア初ポールポジションを獲得した伏兵エイデン・モファット(インフィニティQ50BTCC/レーザーツールズ・レーシング)が、レース1のライト・トゥ・フラッグでFR初優勝を飾ると同時に、続くレース2でも2位表彰台登壇と“覚醒”の大活躍。同ヒートでは好調ジェイク・ヒル(フォード・フォーカスST/MBモータースポーツ・アクセラレーテッド・バイ・ブルースクエア)がシーズン初、移籍後初の勝利を手にし、週末最終のレース3は古豪ウエスト・サリー・レーシング(WSR)の4冠王者、コリン・ターキントン(BMW330i Mスポーツ/WSR)が今季3勝目を飾っている。

 メルセデス・ベンツAクラスを走らせた時代から、ファミリーチームに所属してBTCCを戦って来た24歳のモファットは、この週末もロリー・ブッチャー(トヨタ・カローラGR Sport/TOYOTA GAZOO Racing UK)や、セナ・プロクター(FK8型ホンダ・シビック・タイプR/BTCレーシング)ら、前輪駆動NGTCモデルに乗るドライバーたちがプラクティス最速を記録するなか、予選セッションに入るとFRのインフィニティで予想外のスピードを発揮する。

 同じくFRマシンのBMWに乗る盟主ターキントンや、今季からWSR製の3シリーズにスイッチしたアダム・モーガン(BMW330i Mスポーツ/カーゴッツ・ウィズ・シシリー・モータースポーツ)、そして前戦スラクストンでもフロントロウを獲得したヒルのフォード・フォーカスSTを出し抜き、0.040秒差でBTCCキャリア初の最前列グリッドを得た。

「6~7年越しの夢がようやく叶ったね!」と、若くしてBTCCレギュラーとして活動を続けて来たモファット。「クルマは1日中素晴らしく感じたよ。アッシュ(僚友の現王者アシュリー・サットン)がシーズンを通してやってきたことから、これが良いクルマだとはわかっている。だから今日はあまりセット変更せず、非常にテクニカルなコースなので、ドライブに集中したんだ」と説明したモファット。

「ポールを獲得することは期待していなかったけど、僕らは予選で速くなると確信していたんだ。前輪駆動車両がFP2で新しいラバーのタイヤセットで走らせていたのに対し、僕らは予選で投入するまで中古タイヤで走っていたので、実際に立っている場所が見えなかった、ということだと思う」

「(予選8番手だったチームメイトを含め)トップ10に2台のクルマが入るのは素晴らしいこと。どんな天候でもレース当日は強いクルマになると確信しているよ」

 明けた日曜レース1のスタート直前には軽い雨が落ち、未知のダンプコンディションに挑んだモファットだったが、18周のレースでヒルのフォードを抑え切ったモファットがポール・トゥ・フィニッシュの完勝でインフィニティとの初勝利を達成。2位ヒルの背後では、序盤の攻防でターキントン攻略に成功したプロクターのBTCホンダが表彰台をもぎ取っている。

ワクチン接種が一定数の成果を得たとして、防疫対策のほとんどを撤廃したイギリス。決戦前のドライバーたちもファンの声援に応える
メルセデス・ベンツAクラス時代には優勝経験もあるエイデン・モファットだが、これがインフィニティでの初ポールに
「どんな天候でもレース当日は強いクルマになると確信している」との言葉どおり、ダンプ路面で始まったレース1を制してみせた
サクセスバラス満載のインフィニティに対し、レース2のオープニングで狙っていたジェイク・ヒル(フォード・フォーカスST/MB Motorsport accelerated by Blue Square)

■次戦シルバーストンではハイブリッド搭載のトヨタ・カローラが登場予定

 続くレース2もポールから発進したモファットだったが、ここで逆襲を見せたのが2番手に並んだヒルで、オープニングラップから積極果敢なアタックを仕掛けたフォード・フォーカスSTは、高速左コーナーで首位インフィニティにアウトに並ぶと、続く右ヘアピンのインを抑えて首位浮上に成功。前戦に続き直後に導入されたセーフティカー(SC)にも動じず、サクセスバラストをフル積載するモファットを抑えて今季初優勝を記録し、3位にはプロクターとの入れ替わりでジョシュ・クック(FK8型ホンダ・シビック・タイプR/BTCレーシング)が続く結果となった。

 続くレース3はリバースグリッド抽選を経て、前戦4位フィニッシュのターキントンが最前列からスタートを切ると、2番手の3冠王者ゴードン・シェドン(FK8型ホンダ・シビック・タイプR/チーム・ダイナミクス)と、3番手に浮上したサットンのインフィニティを従え盤石のレース運びを披露。後続のアクシデントも影響なく、そのままの順位で16周のチェッカー。この勝利でターキントンはランキング3位に浮上し、ポディウム獲得の選手権首位サットンは、そのリードを29点としている。

「悪い週末ではなかったけど、慎重にプレーして頭を使ってドライブしなければならなかったため、いつものスタイルではなかった。予選とレース1ではバラストが大きな打撃だったが、この段階で重要なポイントを重ねられてOKだ」と連覇を狙うサットン。

 一方、そのレース3でも6位に入り、ランキングでも7位にジャンプアップを果たした僚友モファットは「後輪駆動で最初の勝利を収めたかったし、物事がうまくいくことを望んでいた」と、思惑どおりに進んだ週末に手応えを得ている。

「BTCCで優勝するには何が必要かはわかっているが、数年経っていたから自分自身に大きなプレッシャーを掛けていたんだ。FR初勝利は素晴らしかったが、レース2は、マシン重量のせいでおそらくもっと特別だった。最大のバラストでドライブする方法を学ばなければならず、それが血まみれのハードワークだと理解した(笑)」

「(従来、その状態で勝利を飾る)アッシュの経験を全面的に活用させてもらったよ」

 2021年も残すは3戦となったBTCCは、続く第8戦シルバーストンをバック・トゥ・バックの連戦に指定し、この週末となる9月25~26日に開催。同ラウンドでは、来季2022年の本格導入を予定する共通ハイブリッド機構搭載のテストカー『トヨタ・カローラBTCC(現『トヨタ・カローラGRスポーツ』)』が、元王者アンドリュー・ジョーダンのドライブで実戦参加を果たす予定となっている。

ジネッタ初優勝、BTCC初参戦、そして移籍後初優勝と「ここクロフトは僕と好相性の思い出の地」とレース2勝者ジェイク・ヒル
レース2では5位、レース3では3位表彰台までカムバックした現王者アシュリー・サットン「この段階で重要なポイントを重ねられてOKだ」
レース3も後続では複数台が絡むマルチクラッシュが発生し、先頭集団は楽な展開に持ち込む
レース3は4冠ターキントン、3冠シェドン、2冠サットンの実力派ドライバーたちが並ぶ表彰台となった

© 株式会社三栄