佐世保の「緊急事態」前倒し解除 宿泊割も再開 歓迎の一方、懸念の声も

 長崎県佐世保市のみに適用されている県独自の緊急事態宣言が24日までで前倒し解除されることが発表された22日、営業時間の短縮要請が続く市内の飲食店には安堵(あんど)が広がった。県民向け県内宿泊割引キャンペーン「ふるさとで“心呼吸”の旅」の25日再開も決まり、宿泊事業者は歓迎。一方、飲食店や宿泊施設に人が集まることで、感染再拡大を懸念する声も聞かれた。
 市中心部で居酒屋「ささいずみ」などを経営するクオリムの酒見千紗専務取締役は、宣言の前倒し解除を知り「ほっとした」と胸をなで下ろす。まん延防止等重点措置が解かれて酒類提供ができるようになっても、時短では売り上げが伸びない。一方、飲食店にとって稼ぎ時の年末年始に再び感染拡大することへの不安もあり「このまま落ち着いてくれれば」と祈る。
 スナックや他の仕事を掛け持ちしながら子どもを育てている市内の30代女性は「勤務する店は8月から閉まり、収入がなかった。(時短解除は)本当にうれしい」と一安心。その上で「もし再び時短などになった場合は、店に協力金を出すだけではなく、従業員にもきちんと補償が届く仕組みを」と要望する。
 同市相浦地区で高齢者の生活支援などに取り組む永谷加代子さん(54)は、8月からさまざまな会議や活動が中止になったことに触れ「(宣言が)長かった」と解除を喜ぶ。ただ、時短や外出自粛要請が解かれることによって人々の気が緩んでしまう可能性に「懸念もある」。
 県内宿泊割引キャンペーンは23日から予約受け付けを開始し、25日に再開する。長崎市立山2丁目のホテル長崎の今井義謙支配人は「再開自体は非常にうれしい。この機会にホテルからの夜景を地元の方に見てもらい、長崎の良さを感じてもらえたらありがたい」と歓迎する。一方で、主力となる県外からの修学旅行はキャンセルが相次ぎ、宴会予約も厳しい状況が続く。「(キャンペーンが再開しても)すぐに客足がどの程度戻るか、予想がつかない」と先行きを案じた。
 佐世保市内のあるホテル経営者は、ワクチン接種の証明などの仕組みを導入しないまま再開することに「また感染者が増えないか」と危惧。「キャンペーンではなく、宿泊事業者への助成金など、ほかにも方法はあるのではないか」と話した。

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