「会話文」であなたの演説に臨場感と説得力を!スピーチライター千葉佳織が伝授!「選挙演説のコツ」

株式会社カエカ代表・スピーチライターの千葉佳織です。私は、スピーチスクール「GOOD SPEAK」をはじめとした、話す力の育成に関わる仕事をしています。政治家の方には、選挙に立候補される際の所信表明演説・政見放送の執筆や伝え方のトレーニングを行う選挙サポートの仕事をしています。

総裁選の最中であり、衆議院選挙も近づいてまいりました。この連載では、演説のコツをご紹介いたします。今回は演説中に「会話文」を挿入する方法と効果についてご紹介します。

ここでいう会話文とは「他者の発言」「自分の過去の発言」などを表します。

会話文を入れると良い理由はこちらです。

1.臨場感が増す

会話文は描写力を高めるひとつの手法です。臨場感が伝わりやすい演説は共感や感動を生みやすい。

2.説得力が増す

演説は自分から一方的に話されるものだからこそ、他者の意見が自分の主張の後押しになる。

3.思いや気持ちが伝わりやすい

通常の文章構成より、会話文がある演説は感情を込めて話しやすくなる。

演説は些細な工夫の集合知です。「会話文」という細かな工夫を行うことで、演説を一緒に磨いてきませんか。

状況別:自分のストーリーを語る時

ネガティブな会話の使用例

(未使用)

「私は、これまで〇〇を8年間務めてまいりました。はじめた当時は多くのご批判をいただきました。ですが、20XX年、念願の〇〇を達成させることができ、多くの方の笑顔を見ることができました。私はこの時、新しい挑戦には批判はつきもの、何があっても懸命に前に進んでいく、そう決めたんです。」

(「会話文」使用)

「私は、これまで〇〇を8年間務めてまいりました。はじめた当時はたくさんの方から『そんなことできっこない』『政治経験のないあなたに任せられない』ご批判のお声をいただきました。それでも諦めたくない。20XX年、念願の〇〇を達成させることができ、多くの方の笑顔を見ることができました。私はこの時、新しい挑戦には批判はつきもの、何があっても懸命に前に進んでいく、そう決めたんです。」

ポジティブな会話の使用例

(未使用)

「私は〇〇を推進してまいりました。これまで挑戦したことがない領域です。たくさんの方々の協力をいただきながら、20XX年、ついに〇〇を実現することができました。その時にいただいた数々の激励のお言葉は今でも忘れません。これからも挑戦の精神を…」

(「会話文」使用)

「私は〇〇を推進してまいりました。これまで挑戦したことがない領域です。たくさんの方々の協力をいただきながら、20XX年、ついに〇〇を実現することができました。その時にいただいた数々の激励のお言葉、『子どもが安心して外で遊べるようになった』『地域を本当に考えてくれたのはあなたがはじめて』今でも忘れらません。これからも挑戦の精神を…」

会話文が入ることにより、情景が浮かびやすくなりました。ネガティブな会話文の挿入では、厳しい批判にも立ち向かえる話者の強さが表現されています。ポジティブな会話文では、実際に笑顔で議員に話しかけている明るい様子が浮かびます

過去の自分の言葉の反映例

(未使用)

「私は、12年前から安心感のある政治を目指して活動してまいりました。12年間で、〇〇が実現されました。〇〇が市民のみなさんに浸透しました。〇〇を廃止し新しい〇〇を取り入れました。みなさん、どう評価してくれますか?(拍手)ありがとうございます。」

(「過去の自分の発言」使用)

「12年前、『安心感のある政治を実現する!』『人生を掛けて挑戦する!』ちょうどこの場所で宣言いたしました。12年間で、〇〇が実現されました。〇〇が市民のみなさんに浸透しました。〇〇を廃止し新しい〇〇を取り入れました。みなさん、どう評価してくれますか?(拍手)ありがとうございます。」

過去の自分の発言を散りばめると、都度感情を込めて話すことができます。臨場感が増し、熱意も伝わりやすくなります。『』の前後はしっかりと間をとりながら話すことも大切です。

政策を語る時

現状の課題に不満を言う市民の意見

(未使用)

「〇〇町は、財政難が続いています。過去の投資は結果が出ておらず、無駄遣いをしています。そこで私は、政策『〇〇〇』を掲げ、適切な投資を行い、市民のみなさまが、豊かな生活ができる〇〇町を実現いたします。」

(会話文使用)

「〇〇町は、財政難が続いています。『〇〇町は無駄遣いをしている』『町に活気が感じられなくて悲しい』私は市民のみなさんの生の声を、何度も聞いてきました。過去の投資は結果が出ていない〇〇町に新しい風を吹かせるべく、政策『〇〇〇』を掲げます。適切な投資を行い、市民のみなさまが、豊かな生活ができる〇〇町を実現いたします。」

会話文を入れることにより「市民から直接、不満が溢れるほど大きな問題になっている」ということを表現することができます。

意識するとあらゆる演説で使われている

この会話文表現は、直近で行われた自民党総裁選挙の所見発表演説会でも頻繁に使用されていました。

ただ、意識的に会話文を入れようとされている原稿作成者の方は少ないと思います。演説の話者はご自分、ひとり。ひとりの意見だけでは視点も偏りがちです。「他者から自分に向けられた言葉」「過去の自分の言葉」さまざまな時間軸の人々の助言を取り入れて、主張にさらに説得力を持たせていきましょう。

次の寄稿では、「演説のコツ」を選挙で実践された政治家の方の実体験を元に、現場での実践方法をお伝えしてまいります。

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