【寄稿】政局の秋(WEB版)/POKKA吉田 POKKA吉田のネタは今でも手回収

東京オリンピック・パラリンピックが終わった。菅政権が願った政権支持率浮揚はなく、むしろその後の各種世論調査ではますます政権支持率が低下し政権発足以来最低値を更新するという事態になった。一方でオリパラそのものは日本人選手の活躍も目立ち、大会としては盛り上がったと思っている。

9月の自民党総裁選に出馬する意向をずっと前から明らかにしていた菅首相。自公の支持層は菅政権の支持率低下が危機的レベルにあることを気にしていたし、8月22日投開票の横浜市長選では、菅首相は自身の地元である同市に自身の側近である小此木氏を応援する形で自民党本部が全力で応援する形式の選挙戦を戦い立憲や共産などに担がれた山中氏に圧勝を許すことになった。20時開票の時点で当確が出るという圧勝劇であり、小此木氏はその場で政界引退を表明するという事態になってしまう。なお、小此木氏はつい先日まで菅政権で国家公安委員長をやっていた人物だ。この横浜市長選直後にあっても菅首相は総裁選出馬を明言しており、11月頃に実施される予定の衆議院総選挙での自民党の苦戦が予想されるという流れになっていた。

ぱちんこ業界的には、ちょうど4年前に開店休業中だった風営法議連の活動が再開したタイミングで、遊技機性能規制や型式試験に関することその他もろもろ業界側の課題について、自民党の国会議員の力を借りる形で警察庁と対峙することが増えている。既にその実績は多数あって、たとえばこの一年だけで言っても昨年の公的融資対象や経過措置延長の規則附則改正は、自民党の国会議員たちの力があったから実現できたものである。その自民党の国会議員が警察庁など官僚に対して力があるのは当たり前だが自民党が公明党とともに政権与党にあるからである。自公が総選挙で過半数を割って下野したら、同じ国会議員に頼んだとしても警察官僚の反応は変わる可能性もあるわけだ。その意味では菅首相を自民党のトップとして総選挙に向かっていくという流れは私としてはかなり不安であった。ところが3日の自民党臨時役員会で菅総裁(首相)が総裁選不出馬を表明。前日までは出馬に積極的だったこともあって各紙各局による報道が過熱。既に総裁選へ出馬を表明していた岸田氏、高市氏、そして出馬するかもと言われていた河野氏、石破氏、野田氏などを含めて「菅政権批判」だったマスコミは「誰がポスト菅になるか」という視点に一気に切り替わったわけだ。これにはマスコミでの扱いが確実に矮小化される立憲や共産などの野党にとっては大変である。かくして、今年おそらく初めてだと思うが、総選挙に向けて自民党にとって強材料が出てきた、ということになった。

総選挙で自公が過半数を割らない限り、自民党総裁は日本の内閣総理大臣となる。今年は重要な選挙(横浜市長選他、東京都議選なども含めて)で自公はことごとく負けてきたわけで、菅首相が退陣することで風向きが変わるということだろうか。なお、それでも元の衆議院の議席が多いことから総選挙でたとえ自公が過半数を確保したとしても議席減の流れは変わっていないだろう。業界視点で自公に過半数を維持してもらいたいということで言えば、総選挙も油断してはならないことはいうまでもない。
さて、菅首相が退陣することを決めたからか、政府は11月以降の行動制限緩和の方針を固めることとなった。これはかなりの出来事であり、宣言だ飲食だ移動制限だ人流だロックダウンだ、などの「制限をするだけ」という場当たり的な方針ではないからである。制限緩和というのはコロナ禍における出口戦略であり、これがないと日本経済も元には戻れない。ワクチン接種のスピードがこのところ加速しており、本紙が発行される頃には接種率で日本はアメリカを抜いている見込みである。新しい変異も次々現れることから3回目の接種などの施策も併用が必要だろうが、ようやく日本も欧米諸国と同様にワクチンパスポート的な社会に向かおうということである。これを政府が決めたのだから良いことである。

ワクチン接種でいえば、本稿を書いている今、モデルナの2回目の接種の翌日であり、今回は副反応も出ている。具体的には発熱、頭痛、倦怠感などだ。ただ、これは単なる通過儀礼なのでしかたがない。日本社会がどのようなワクチンパスポート化に進むのか、そのときぱちんこ営業はワクチンパスポートをどのように取り入れているのか、これはまだ不明だ。各紙各局の報道は旅行、大規模イベント、酒類提供飲食の業態に絞った報道を続けている。当たり前だがこれらはコロナ禍で最も影響を受けた業態である。

業界的には業界で働く人たちのワクチン接種を職域接種で広めていく、ということに取り組んでいるところが多い。また、企業や団体によっては取引の有無にかかわらず地域住民に職域接種を拡大させているところもある。この一年半、かなり酷い体制のコロナ対策だった東京都のように渋谷に打てずに予約からあぶれる若者を一か所に密集させるような愚と比較すると、業界企業や団体による職域接種の方がよほど良いコロナ対策でありよほど社会のためだった。これからも自治体によっては東京都のようにグダグダなところ、しっかりやるところ、格差は出てくるだろうが、これは我々にはコントロールの方法がない。東京都の場合は昨年、有権者が東京都のトップである小池百合子氏を再選させたのだから、この状況を「誰が悪いのか」と言えば、昨年の東京都の有権者が悪いとしか言えない。

コロナ禍の出口戦略である行動制限の緩和は、10月頃には実験等などの検証も入るそうである。11月になるかどうかはわからないが11月以降にワクチンパスポート化していく流れを菅政権が固めて公表したことは大きい。次の総理総裁が誰になったとしても、自公政権が続く限りこれは継続されていくからである。今のところ政府の行動制限緩和方針について、総裁候補が反論しているケースはない。

本紙が発行される頃には既に総裁選の選挙戦あるいは総裁選の結果が出たあと、ということになるだろう。衆議院の解散の有無や日付によって総選挙の日程は変わってくる。今は自民党総裁選のおかげで政治についての報道はほぼほぼ自民党になっており、誰が新総裁・新総理になっても支持率は高いところからスタートするはずだ。昨年、菅政権が誕生したときは圧倒的な支持率であった。

総選挙で自公が議席をどこまで減らすか、どこで下げ止まるか、過半数確保はなるか、過半数確保できたとして安定多数まで届くかどうか、いろいろ注目点はある。今年の秋は菅首相の事実上の退陣表明で自民党内の政局動向が日本社会を今後どうするか決めていく、という状況になった。総裁選はもちろん総選挙にも大注目である。なので来年の参議院選挙のことは、また今後タイミングを見て触れようと思う。

■プロフィール
POKKA吉田
本名/岡崎徹
大阪出身。
業界紙に5年在籍後、上京してスロバラ運営など。
2004年3月フリーへ。
各誌連載、講演、TV出演など。
お問い合わせ等は公式HP「POKKA吉田のピー・ドット・ジェイピー(www.y-pokka.jp)」か本誌編集部まで。

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