河北春秋(9/24):今ではあまり聞かなくなった「丹精」という…

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 今ではあまり聞かなくなった「丹精」という言葉を国語辞典で引いてみた。「丹精する」という形で多く使われ、意味は「まごころをこめて物事をすること。心を尽くして丁寧にするさま」などと載っている▼用例として向田邦子さんのエッセーのこんな一節-。「私は父から家庭農園のひと畝を分けてもらい、落花生(らっかせい)や茄子(なす)を丹精していた」。なるほど、大事に育てた畑作物や果実などを表現する際に、使われてきた言葉に違いない▼もちろん今も多くの農家は丹精の手を休めない。「モモがとてもおいしかったよ。ホテルで6個も食べたよ」。東京五輪の女子ソフトボール米国代表のエーリクセン監督が、福島市で試合後にそう語った。丹精のたまものに対するうれしい称賛だった▼東京電力福島第1原発事故後から続いた農産物の輸入停止をようやく、米国が撤廃した。野生のキノコ類だけでなく、野菜やコメの規制もなくした効果は大きい。規制を続ける中国や韓国などに波及するかもしれない▼多難な道を歩んだ福島の農産物だが、意外にも震災前の倍近くに輸出量が増えているという。行政などの頑張りで、東南アジア諸国に販路を広げたためだ。安全性は折り紙付き、そして品質もまた同じ。丹精した農産物の販路がより広がりますよう。(2021.9・24)