やまがたSDGsフェスタ、世界は学習歴社会へ

教育評論家・尾木直樹さん講演

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講演する尾木直樹さん=山形市・山形国際交流プラザ

 やまがたSDGsフェスタでは、教育評論家の尾木直樹さんが「SDGsと子どもたちの未来~子どもと大人のパートナーシップ」と題して記念講演した。新型コロナウイルス禍の教育現場や世界で教育の在り方が変わりつつある現状を紹介。一人一人の能力に応じた学習の重要性を説き、「これからの教育は学歴ではなく、何を学んでいるのかが問われる」と語った。以下は講演要旨。

人間力問われる時代

 やまがたSDGsフェスタの催しはすごく多彩で、SDGsのあるべき姿である多様性を体現している点に引かれた。東京パラリンピックも同じで、障害のある人たちが精いっぱいチャレンジする姿に感動する毎日だった。社会もそうなっていけばいいと思う。

 最近、SDGsがわれわれと切り離すことができない夫婦のような関係になってきた。どの項目を見ても素晴らしく、よくこれだけ網羅的に目標を掲げたと思う。17のゴールのうち、教育関係は4番目の「質の高い教育をみんなに」としている。では、質の高い教育に向けて現場はどうなっているのか詳しく述べたい。

 現在は新型コロナウイルス禍のまっただ中で、感染力が強いとされるデルタ株が子どもたちを襲っている。最近は後遺症の問題がクローズアップされており、集中力がない、物忘れがひどいといった多様な症状がある。それが子どもたちにも及んでいる。

 子どもたちのストレスも大変な状況だ。国の研究機関が子どもの心の変化を追うために行っているアンケートによると、昨年4月の時点でストレスがたまっている子どもは全体の75%を占めた。昨年で一番下がったのは12月の72%で、ずっと70%以上の高い数値で推移したことになる。他の調査によると、昨年1年間で自殺した小中高校生は499人で、前年比で100人増えた。実際にはもっと多いかもしれない。これは深刻だ。自傷や他害行為をする子どもも少なくなく、先生は本当に大変だと思う。

 SDGsが発表されたのと同じ時期に、世界の有名な教育研究者が一堂に集まり、2030年という近未来に必要となる子どもの学力はどうあるべきか集中討論した。簡単に結論を述べると、これからはIQ(知能)よりHQ(人間性指数)、つまり学力より豊かな人間力が必要となった。これはAI(人工知能)が登場したからだ。AIは戦争から医療行為までさまざまな場面で活用される。AIに使われないために人間力が問われている。

 世界的に教育の在り方は日本のように時間割で決められた一斉教育から個別教育に変わりつつある。一番極端なのはシンガポールだ。小学生の時の試験で一生が決まるため、熾烈(しれつ)な勉強が繰り広げられていた。本当にすさまじかったが、競争で学力は上がらないことに気付き、一人一人の能力に応じた学習が導入されるようになった。

 このように世界の教育は学歴社会ではなく、学習歴社会になろうとしている。何を学んだのか、何を学び続けているのかが問われている。家庭では子どもの興味、関心を受け止め、分からなかったら子どもと一緒に調べて学んでほしい。そして、疑問を持ったことを褒めてあげてほしい。どう楽しく学んでもらうかが重要だ。

 これからは子どもを主役にSDGsを考えていきたい。保育園・幼稚園の子どもから高校生まで、みんながコロナ禍を生き延びようとしており、それだけでも尊敬すべきだと思う。子どもを主役にしながら、子どもを真ん中にしながら、安心できる社会をつくっていきたい。

誰もが楽しめる企画満載

 山形市の山形国際交流プラザで23日に開かれた山形新聞、山形放送の8大事業の一つ「やまがたSDGsフェスタ」では、笑いを交えたトークショー、本県の環境や特徴を盛り込んだカードゲーム、各企業・団体によるブース出展などを通じ、来場者が楽しみながらSDGs(持続可能な開発目標)の理念や身近さを実感していた。

 コーディネーターを兼ねた寒河江浩二山形新聞社長(山形新聞グループ経営会議議長)と玉手英利山形大学長、兼子良夫神奈川大理事長・学長(大江町出身)が意見を交わしたトークセッションでは、草木塔に示される「山形の人々の自然観」がSDGs達成の原動力になる可能性を指摘。エネルギーや食料などの自給圏を核とし、地域間での補完システムを備えた「山形モデル」の分散自立型社会の実現に期待を込めた。

お笑い、体験、映画理念実感

 お笑いコンビ「次長課長」の河本準一さんと山形県住みます芸人「ソラシド」の本坊元児さんは、2人が共通して取り組む農業を通じたエピソードなどを笑いを交えて紹介し「自分の目的に合った形で無理なく取り組めるのがSDGs。難しく考えずにできることを探してみてほしい」と語り掛けた。貧困と人種差別を取り上げた山形国際ドキュメンタリー映画祭作品の上映会もあった。

 15の企業や行政・教育機関がブースを出展した会場の中心には、来場者が自身の目標「マイアクション」を書き込んだ台紙を張り付ける「SDGsツリー」を設置。山形市桜田小5年の長谷部圭吾君(11)と1年の日彩(ひいろ)さん(7)のきょうだいは「水を出しっぱなしにしない」「給食を全部食べる」と、日常の中で取り組む目標を掲げていた。

 各企業・機関のブースでは、支障木で作ったコースターの絵付けや残紙を使ったメモ帳作り、ブルーシート上に再現した庄内浜でのプラスチックごみ拾いなどさまざまな体験メニューが用意された。親子連れらは各ブースを巡り、自分の身の回りで実践できることについて考えるきっかけにしていた。

 フェスタは来場者を県内在住者に限定して人数を制限したほか、検温やマスク着用、手指消毒などの感染対策を徹底し開催した。

SDGsを進める企業などが多くのブースを出したフェスティバル=山形市・山形国際交流プラザ
来場者がマイアクションを書いた紙を「SDGsツリー」に飾った