「まこもたけ」を知っていますか。
くせがない淡泊な味とシャキシャキとした食感が特徴の、中華料理などに使われる高級食材です。
まこもたけの生産に積極的に取り組むのが、岡山県里庄町。
毎年、旬の味を知ってもらおうと、収穫期に合わせ「里庄まこもたけを味わうスタンプラリー2021」が開催されています。
2021年の開催期間は、9月13日~11月14日。
この季節にしか出会えない生のまこもたけが購入できるだけでなく、里庄町内や近隣のお店でまこもたけを使ったメニューが登場!
里庄まこもたけの魅力と、「里庄まこもたけを味わうスタンプラリー2021」について紹介します。
里庄町について
岡山県南西部にある里庄町は、人口約11,000人(2021年7月31日時点)のコンパクトなベッドタウンです。
2021年にブレイク中のシンガー・ソングライター 藤井 風さんの出身地。つばきの丘運動公園では午前10時と午後3時に藤井 風さんの曲が流れます。
町のマスコットキャラクターは「里ちゃん」と「まこりん」。
里ちゃんは、暑さが苦手なつばきの妖精です。里庄町の木「つばき」は、つばきの丘運動公園などで冬に見ごろを迎えます。
まこりんは、里庄町の特産品「まこもたけ」の妖精です。
茎も葉っぱも栄養たっぷり! 「まこも」とは
イネ科の多年草「まこも」。茎や葉っぱを食べることができます。
多彩な加工品とともに、食べ方、使い方を紹介します。
まこもたけ
まこもたけとは、イネ科の多年草「まこも」の茎の部分。黒穂菌という無害の菌がついて肥大化します。
手と皮むき器などで緑色の外皮を取り除き、白い部分を食べます。新鮮なものは生食も可能です。
アクやクセがなく、淡泊な味わいで、シャキシャキとしたタケノコのような食感が特徴。
中華料理に使われる高級食材として知られていますが、炊き込みご飯やてんぷらといった和食や、パスタやソテーといった洋食にもアレンジできます。
食物繊維やカリウムが多く含まれており、腸内環境を整え、血圧を下げる効果があるといわれる健康食材です。
白い部分に黒い斑点があることがあります。これが黒穂菌です。取り除かなくても美味しく食べられます。
ちなみに、黒くなったまこもたけは、平安時代はお歯黒の材料として活躍していたようです。
まこもは古くから日本に存在した植物なのですね。
生のまこもたけが食べられる期間は9月後半から11月前半と限られていますが、真空パックのまこもたけ(150グラム 税込380円・500グラム 税込900円)は年間を通して販売中。
まこもたけ直売所などでは、ほかにもさまざまな加工品が手に入ります。
まこも葉パウダー
「まこも」の葉をパウダー状にした、まこも葉パウダー(50グラム 税込1,500円)。
お茶として飲むほか、きれいな緑色なので、料理やお菓子の色づけとしても活躍。
粉末状となっているので、食物繊維・ビタミンなど自然の栄養素をまるごと摂取できます。
まこも葉せんべい
緑色がきれいなまこも葉せんべい(10枚入り 税込350円)。岡山県産米の米粉を使っています。
里ちゃんの焼き印がかわいらしく、お土産に重宝しそう。
まこも葉ジェラート
道の駅笠岡ベイファームのHAPPYのジェラートには、まこも葉が練り込まれたまこも葉ジェラート(税込450円)。
うっすらと緑色に色づいています。
ミルクの味わいとともに、イ草のような和の香りが楽しめて美味しかったです。
入浴剤
食べるだけではありません。まこも葉を使った入浴剤(税込400円)は、「お肌がすべすべになる」とのこと。
大きな袋いっぱいに購入するかたもいるほどの、人気商品です。
乾燥したまこもたけの葉が入っているのがわかるでしょうか。
そのほか、まこも直売所では、予約制でまこもコロッケ、まこもバーガーも販売しています。
まこもの栽培方法
まこもは日本全国で栽培されている植物。イネ科で、米のように田んぼで育ちます。
葉は2メートル以上の背丈に成長!
肥大化する茎は根本の50センチメートルほどの部分です。
まこもたけの収穫期は、天候で前後することもありますが、9月後半から11月前半。
栽培から収穫の流れは以下のとおりです。
里庄まこもたけを味わうスタンプラリー2021
旬の里庄まこもたけを味わってもらおうと、里庄町が毎年開催している「里庄まこもたけを味わうスタンプラリー2021」。
2013年からスタートし、2021年で9回目となります。
期間中に対象店舗で里庄まこもたけを使った料理を食べたり、里庄まこもたけ商品を含むお買い物など、合計500円以上のお会計でシールが1枚もらえます。
パンフレットに付属している応募ハガキにシールを2枚~5枚貼り、必要事項を記入し提出すると、里庄町内の企業の品が当たるかもしれません。
賞品は以下となっています。
2021年の応募締め切りは11月24日。郵送の場合は当日消印有効です。
・違う店舗のシールを集めてください
・里庄町役場企画商工課の窓口の応募専用箱に入れるか、63円切手を貼って郵便ポストに投函してください(一部対象店舗にも応募専用箱があります)
・ハガキ1通につき1口。1人何口でも応募可能
里庄町・浅口市・笠岡市内の飲食店や洋菓子店、直売所やスーパーなどがスタンプラリー対象店となっています。
里庄まこもたけをつかったメニューを提供しているのは以下の店舗です。
- 鳥屋 楓【初】(里庄町)
- お好み焼き ラブリー(里庄町)
- 台湾料理 四季旺(里庄町)
- 魚屋+台所 ななつや(里庄町)
- SOL BAKERY(里庄町)
- 備前屋会館(里庄町)
- 活魚料理 魚専(里庄町)
- 喫茶 チロル(里庄町)
- 手延べダイニング&ライブ Macaret(里庄町)
- カフェ@サンラヴィアン(里庄町)
- かもがた亭本店(浅口市)
- パティスリーシエル(浅口市)
- 海鮮料理 ぶしの花道(浅口市)
- パンカフェ Assiette(笠岡市)
- 洋菓子工房 ベルジェ(浅口市)
里庄まこもたけを購入できるのは里庄町内の下記の店舗です。
- JA晴れの国岡山 鴨方直売所「なごみ」
- もりはらストアー
- まこもたけ直売所
- JA晴れの国岡山 里庄直売所「里ちゃん」
- ファイン
- 小野酒店
スタンプラリー対象店は里庄まこもたけの緑色のぼりが目印です。
天候やまこもたけの収穫状況により、商品の提供ができない場合もあります。
町をあげて特産品「里庄まこもたけ」に取り組む里庄町。
生産者やスタンプラリーの主催者はどういった思いで取り組んでいるのでしょう。
里庄まこもたけの生産者である株式会社アグリケイエル 販売部長 荻野 良(おぎの りょう)さんと、里庄まこもたけを味わうスタンプラリー2021を主催する里庄町役場 企画商工課 樋之津 公祐(ひのつ こうすけ)さんにお話を聞きました。
お話を聞きました 株式会社アグリケイエル 販売部長 荻野 良さん
──里庄まこもたけの生産・販売に取り組んだきっかけは?
荻野(敬称略)──
株式会社アグリケイエルは、株式会社ケイエルシステムというコンピューターの会社が母体となっています。
岡山市に本社を置き、全国の自治体にシステムを販売している会社です。
2011年の東日本大震災で、取引先である自治体で大きな被害があり、東北へボランティアに行きました。
そのことが、地域に目を向けるきっかけとなったんです。
取引先である里庄町役場のかたから、特産品としてまこもたけの生産に力を入れたいという話を聞き、2013年頃から生産を開始しました。
はじめは農業ボランティアという形で、初年の売上はわずか30万円。これでは事業としては成り立ちません。
継続して生産に携われるよう、商品を開発したり、東京や大阪でのイベントに出店し出荷先を探したりと、認知を広げていきました。
2018年、里庄まこもたけの生産と販売を主事業とする株式会社アグリケイエルを設立し、より力を入れていくことに。
今でも繁忙期は、アグリケイエルだけでなく、ケイエルシステムの社員総出で収穫していますよ。
──コンピューターの会社からまこもたけ栽培へ! 大変だったのではないですか?
荻野──
5月の田植えから9月下旬以降の収穫まで、毎日、草取り。収穫はひとつひとつ、鎌で刈り取り、大変な作業です。
けれど、私たちだからこそできることもあります。
まこもたけは全国的に作られている植物。米が栽培されなくなった休耕田(使われない水田)の利活用であれば、整備等に係る経費の一部を補助してもらうこともでき、米と同じイネ科なので農家さんにとっては作るハードルは低いです。
ただ、「作り方」に詳しい農家さんが、「売り方」にも詳しいとは限りません。
私たちはコンピューターのシステムを販売するプロ。だからこそ、まこもたけの販売に力を注ぐことができました。徐々に販路を拡大し、今があります。
──まこもたけの魅力は?
なんといっても栄養たっぷりなところ。食物繊維やカリウムなどが豊富に含まれ、腸内環境を整える効果やデトックス効果が期待できます。
カロリーが低く、ヘルシーなのもポイント。
味については、アクやクセがほとんどないため、和洋中、どんな料理にも合わせやすいです。
健康食材だからこそ、通年で食べることをおすすめしています。
生のまこもたけが食べられる期間は9月後半から11月前半と限られていますが、真空パックのまこもたけは年中販売しています。
まこも葉パウダーも、ふだんの食生活に取り入れやすいと思いますよ。
まこも葉を乾燥させた入浴剤も人気です。
今後は健康面での魅力をさらに引き出し、化粧品や医薬品といった商品開発もしていけたらと考えています。
お話を聞きました 里庄町役場 企画商工課 樋之津 公祐さん
──特産品「里庄まこもたけ」が生まれた経緯を教えてください
樋之津(敬称略)──
2010年代、農業の担い手が減り、里庄町内に休耕田が増えてきました。
里庄町内の農家さんが水田に何か植えられるものがないかを調べたところ、まこもたけに行きついたんです。
たとえば水田だった場所を畑にして別の農作物に取り組むこともできますが、水気の多い畑となるのでなかなか大変。
まこもたけは同じイネ科で、米が育った水田の環境を有効利用でき、取り組みやすかったのです。
里庄町内のまこもたけの作付面積・生産量はともに年々増えており、2020年の里庄まこもたけの生産量は14トン。
これまでは「里庄といえば!」という特産品はなかなかありませんでした。けれど「里庄といえばまこもたけ」という認知がだいぶ広がってきたと思います。
販売も好調なので、生産者にとっても作りたい農作物になってきていると思います。
コロナ禍で今は中断していますが、中学生の栽培・収穫体験も行なっています。町をあげての特産品にしていきたいですね。
──里庄まこもたけを味わうスタンプラリー2021のおすすめポイントを教えてください
樋之津──
旬のまこもたけを味わってほしいと、地元の生産者・販売店・飲食店といっしょに2013年から毎年開催しているスタンプラリーです。
毎年、多くのかたに参加いただいている人気のイベントなんですよ。
生のまこもたけが食べられるシーズンは貴重なので、食べたことがないかたもぜひ味わってみてください。
テイクアウトができるお店もありますし、直売所などで購入した生のまこもたけを使った調理にも挑戦してみてほしいです。
毎年、里庄町役場の職員にも好評のイベントです。もちろん、私も参加します!
ぜひ旬の里庄まこもたけを味わい、スタンプラリーに参加してくださいね。
おわりに
荻野さんが撮影用に刈り取ってくれた、まだ肥大化する前のまこも。
私の愛車にセッティングしてくれたので、こんな記念撮影もしましたよ。
「天日干ししたら、入浴剤になるよ」ということで、さっそく実践してみました。
まこもの葉がとってもいい香りで、最高の入浴に! ありがとうございます。
4年前(2017年)に里庄町の隣町へ移住してきた私としては、もはや「里庄といえばまこもたけ」といったイメージでした。
お話を聞き、取り組み始めて十数年と想像よりも新しい特産品だったと知り、驚きです。
町と企業と農家さんの連携こそが、今のような盛り上がりにつながっているのではないかと感じました。
毎年、楽しみにしている里庄まこもたけを味わうスタンプラリー。
飲食店ではこの時期限定のメニューが味わえるのでおすすめです。
今度は生のまこもたけを購入し、サラダやパスタにも挑戦してみたいと思います。