中国リスクに冷静な日系機械企業、動揺する市場と「肌感覚」に差

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杉山健太郎

[東京 24日 ロイター] - 中国の不動産開発大手、中国恒大集団の資金繰り問題が金融市場を揺さぶり、実体経済への波及が懸念されているが、現地に進出する日本の資本財関連企業は影響を見極めている段階で、実際に事業計画を見直す動きは広がっていない。中国から欧米に向けたモノの輸出は底堅く、それらの生産を支える工作機械メーカーには年内の中国受注は高水準で推移するとの見方が多い。

中国では、8月の製造業購買担当者景気指数(財新/マークイット)が景況改善と悪化の分岐点の50を1年4カ月ぶりに割り込んだほか、鉱工業生産が2020年7月以来の低い伸びとなるなど、ソフトデータ・ハードデータの両面で減速感が出ている。

これに中国恒大集団のデフォルト(債務不履行)危機が追い打ちをかけ、投資家心理が悪化。日銀の黒田東彦総裁も22日、金融政策決定会合後の記者会見で、同問題が市場に及ぼす影響などを注視していくと述べた。

一方、今のところ日本からの中国向け輸出は堅調だ。財務省が9月16日に発表した8月の貿易収支によると、輸出は前年比26.2%増の6兆6058億円で、前年同月を6カ月連続で上回った。このうち中国向けは同12.6%増の1兆4210億円となっている。

中国向け輸出を品目別にみると、化学製品が4.2%ポイント、電気機器が3.3%ポイント、一般機械が1.3%ポイントの押し上げに寄与した。

みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストは、直近の中国恒大集団の問題もあり、景気全体の鈍化は避けられないものの、日本企業が中国で存在感をもつ自動車、機械、素材といった業種については「相対的に打撃は小さいはずだ」と指摘。むしろ産業高度化のための機械は売れていると話す。

<母なる機械>

産業高度化に必要な機械の代表格の一つが工作機械だ。金属などの素材を加工して、複雑な部品を精密に作る。すべてのモノづくりにかかわるため「機械を作る機械」、「マザーマシン(母なる機械)」とも呼ばれる。日本工作機械工業会のデータによると受注総額の6割が外需で、そのうち3割が中国向けとなっている。 昨年夏以降では、新型コロナウイルス感染の危機をいち早く脱した中国は新興自動車メーカーや半導体関連の生産が活発化。テレワーク需要も追い風となり、パソコンやスマートフォン用の電子機器の製造受託サービスなどの設備投資が進んだ。

工作機械の受注も急増。単月の中国向け受注額は今年2月に300億円を超えると、その後も3月373億円、4月377億円と拡大。5月は387億円と、1998年7月以降、過去2番目の高い水準に達した。

8月の受注は前月比21.1%減の239億円と9カ月ぶりに250億円を割り込み、さすがに減速感が出ている。ただ、受注額の水準自体はコロナ前の19年と比べてもまだ高く、業界関係者からは「年明けからのオーバーヒート状態がようやく落ち着いてきた」(大手メーカー首脳)と前向きの受け止めも聞かれる。

シチズン時計の子会社で、工作機械を手掛けるシチズンマシナリー(長野県御代田町)は、昨年夏から景況が急回復。今年4─6月期の受注額は同期として過去最高になった。同社の広報担当者は「足元は4─6月期に比べると落ち着いているが、少なくとも年内の受注は高い水準を維持する」との見方を示す。

ある関西の自動車部品メーカーは、米国の完成車メーカーなどからの新規受注を背景に、中国で設備投資を計画している。同社首脳は、半導体不足やサプライチェーンの混乱で自動車メーカーが減産を余儀なくされていることは気がかりだとしつつも、「過度に悲観的になって投資を必要以上に控えたり、雇用を調整したりすることはしない」と話す。

中国では来年秋、党の最高指導部を決める5年に1度の共産党大会が予定されている。みずほ証券の小林氏は「共産党大会の年は国威発揚のために経済政策も拡張路線が採られることは歴史が示している」と指摘。その上で「21年前半の中国経済は弱かったが、22年も弱いままだと高をくくると、痛い目を見るかもしれない」という。

他方で中長期の見通しについては慎重に見極めたいとの声も聞かれる。前出の工作機械大手メーカー首脳は、来年以降の受注について「神のみぞ知る」とし、警戒を緩めていない。

(杉山健太郎 編集 橋本浩)