【大学野球】高校時代はプロ注目も志望届は出さず… 桜美林大の新人右腕が初先発で得た手応え

日体大戦に先発した桜美林大・大坪誠之助【写真:川村虎大】

大坪誠之助は土浦湖北高で最速145キロを計測、プロも注目した

飄々と投げ込む姿は、公式戦初先発とは思えなかった。25日に神奈川・等々力球場で行われた首都大学野球1部リーグ戦。今年の春季リーグを制した桜美林大は、ここまで3戦2敗1分け。苦しむチームが4戦目の日体大戦に登板させたのは、今春加入したルーキー・大坪誠之助だった。

初回、四球で出した走者を盗塁と外野飛球によるタッチアップで三塁に進塁させると、暴投で1点を失った。しかし、その後は毎回走者を出しながらもしのぎ、5回を4安打1失点。「意外と緊張しなかったです」と右腕は柔和な表情で投球を振り返った。

ただ、チームは日体大のエース・矢澤宏太投手の前に僅か3安打で、0-2零封負けを喫した。大坪は「四球が勿体なかったですね。負けたら意味がないんで」と語る一方で「高校より大学の方が意外と楽だなって思いました」と手応えも口にした。

茨城・土浦湖北高では、1年秋からエースとして活躍し、3年時には145キロを計測。プロからも注目を浴びる存在になった。しかし、「ビビってしまったんです」とプロ志望届は提出せず大学進学を選択。最初に声がかかった桜美林大に進んだ。

日体大戦に先発した桜美林大・大坪誠之助【写真:川村虎大】

「木製バットは芯を外せば飛ばない」

春季リーグはベンチ外。初めて登板機会を得た山梨学院大とのオープン戦では救援で5点を失った。制球が定まらず、高校時代の投球が通用しなかった。

「すごいショックで悔しくて……」と振り返るが、自分を見つめ直す良い機会にもなったという。制球改善のためにフォームを試行錯誤。ワインドアップからセットポジションに変更すると、徐々に思うところに投げられるようになった。

「大学の方が投手有利ですよね。木製バットは芯を外せば飛ばない」。カットボールやスプリットに近いフォークなど、変化量の少ない球種を武器に大学野球に順応し、秋季リーグでメンバー入りを果たした。

この日も、カットボールを中心に打たせて取る投球を徹底。三振は1つだったが、打たれた安打は全て単打で、外野の頭を越えるような打球はなかった。桜美林大はこの日の敗戦で3敗1分。春とは異なり苦境に立たされている。「一戦一戦やっていくしかないです」。期待のルーキーが、苦しむチームの救世主になれるか。(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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