卓球王者は31歳の高校生 川崎総合科学高の渡辺さん がんと闘い、3度目の挑戦で悲願の頂点

全国高等学校定時制通信制卓球大会で優勝した渡辺さん(川崎総合科学高提供)

 8月に開催された「もう一つのインターハイ」と呼ばれる「全国高等学校定時制通信制体育大会」の第54回卓球大会で、川崎市立川崎総合科学高校(同市幸区)の4年生、渡辺壮さん(31)=横浜市瀬谷区=が男子個人の部で頂点に立った。2年前にがんが発覚、闘病を続けながら3度目の挑戦で栄冠を手にした。渡辺さんは「自分を変えるため、何としても優勝したかった」と振り返っている。

 渡辺さんは2006年に中学を卒業し、一度は全日制の私立高校に進学するも、金銭面で通学が困難になり退学。ラーメン店や学習塾などで働き、金銭面でめどが立ったことから3年前、27歳で川崎総合科学高の定時制に入学した。

 2度目の高校生活は、学業や部活動とアルバイトの両立にいそしむ。夕方から授業を受けた後、飲食店で深夜から朝まで勤務。卓球の腕を磨こうと、登校前の昼間に校外のクラブで練習を重ねた。

 だが、2年生の時渡辺さんを病魔が襲った。体が思うように動かせないとの自覚症状があり、病院で検査をしたところ「脊髄のがん」であることが判明。時には学校を休みながら検査や治療を続け、「ここで諦めたら何にもならない」とラケットを手放すことはなかった。

 毎年夏に開催される全国大会は1年生でベスト8、2年生で16強と好成績を収めていたものの、昨年は新型コロナウイルス感染症拡大のため中止に。渡辺さんは日本卓球協会ナショナルチームのコーチの指導を受けるなど練習を重ね、2年ぶりの大会で悲願を果たした。

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