県民宿泊割が再開 大雨被災の温泉街雲仙 感謝の再スタート

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土砂災害後の励ましへの感謝の気持ちを込めて接客する内田さん。手前は雲仙伊乃里グッズ=雲仙市小浜町、雲仙スカイホテル

 新型コロナ禍での県民限定宿泊キャンペーン「ふるさとで“心呼吸”の旅」が再開された25日、8月の大雨土砂災害から復興へ歩み始めた長崎県雲仙市の雲仙温泉街では、被災後に県内外から寄せられた激励に対する感謝の気持ちを胸に宿泊客を迎えた。
 「いいお湯で気持ち良かったよ。ありがとう」-。宿泊客からの言葉が何よりも有り難い。8月13日に八万地獄が土砂に覆われた影響で、地獄からの温泉供給などが一時停止した雲仙スカイホテルの若おかみ、内田亜希子さん(42)は「(源泉のある)地獄があっての温泉旅館。キャンペーンを機にリスタートを切りたい」と、接客できる喜びをかみしめている。
 だが、キャンペーンをきっかけに被災の負のイメージを払拭(ふっしょく)しようと期待する一方で、コロナ禍が続く限り宿泊客数の回復は望めないんじゃないか、という不安もある。八万地獄からの温泉供給は仮復旧したものの、地獄の噴気で水を温めてホテルに戻す「燗(かん)つけ」はまだ復旧できていない。代わりにボイラーでシャワー用の水を温めているため、毎日の燃料代が数万円単位でかさみ、経営を圧迫し続けている。
 キャンペーン再開初日の25日、同ホテルでは20組がチェックイン。そのうち県民割引対象は9組で、出足は「ぼちぼち」。それでも、常連客からは「大丈夫でしたか」「泊まりに行くので頑張って」などの電話やメッセージが多く寄せられていて、これから客足が上向くと期待している。
 内田さんには、小地獄地区の土砂崩れで犠牲になった雲仙温泉観光協会職員、森優子さん(32)へ寄せる思いもある。同ホテルでは、雲仙温泉を擬人化したキャラクターの温泉むすめ「雲仙伊乃里(いのり)」のPRに力を入れ、ファン向けに伊乃里をイメージした特別客室も用意。森さんは、会員制交流サイト(SNS)で伊乃里の役になって情報発信する“中の人”を務め、7月には同ホテルが開いたSNSイベントに出演し、伊乃里と雲仙をPRしたばかりだった。
 「ゆうこりん(森さん)には、伊乃里ちゃんグッズを一緒に考案してもらった」と振り返る内田さん。今でも伊乃里ファンの宿泊客と話していると、森さんを思い出して涙があふれそうになる。「ゆうこりんの分まで雲仙と伊乃里ちゃんを盛り上げていく」と、復興と森さんへの思いを重ねている。
 この日、県民割引を利用して同ホテルに家族4人でチェックインした井手可奈さん(32)=長崎市=は「硫黄の香りがすると『雲仙に来た』と思える。(八万地獄の)山が崩れているけど、温泉街の様子は以前と変わらず安心した。リフレッシュして帰れそう」と笑顔で話し、客室に向かった。