コロナ禍 オンライン授業の導入模索 出席の扱いや方法に課題

自宅にいる生徒と教室の生徒の両方に向けてリアルタイムで授業をする徳満教諭=諫早市貝津町、創成館高

 長崎県内でも昨年来、感染拡大や一時的な収束を繰り返す新型コロナウイルス。流行「第5波」では、感染力が強いデルタ株に置き換わり、学校現場はこれまで以上に感染防止に神経をとがらせている。子どもたちを感染から守りながら、学びや行事の機会をどう確保するか。試行錯誤が続く。
  ■先駆けて実践
 「第5波」は、子どもにも感染が広がっているのが特徴。県内の学校で臨時休校や分散登校が広がる中、学年別登校の措置を取っていた諫早市の創成館高(奥田修史校長、767人)では8月31日~9月10日、1、2年生が交互にオンライン授業を行った。
 10日午前8時半、2年2組の教室には担任の馬場剣士郎教諭(27)一人だけ。ビデオ会議システム(Zoom)を利用したホームルームで、馬場教諭がパソコンに向かって「今起きただろう」と“突っ込み”を入れると、画面上に生徒たちの笑みが広がった。
 数学の授業は、教育支援アプリ「ロイロノート」を使った動画配信式だ。生徒たちが問題を解く間に、馬場教諭は回答を板書する様子を動画で撮影し、頃合いを見計らって配信する。「動画は生徒の集中が途切れないよう短く、人間味を持たせるのがポイント」と馬場教諭。
 教室の生徒とオンラインで同時に授業をするハイブリッド方式もある。教務主任の徳満亮智教諭(45)は「生徒たちは画面に映るから寝ることができない」と“効果”を話す。2年の松田遼平さん(16)は「オンライン授業だと勉強に集中できて学力が落ちないのがいい」と前向きだ。
 情報通信技術(ICT)を活用した教育の最先端を目指す同校は1990年にパソコン450台、2012年にはタブレット端末55台を導入、19年春から3年計画で全生徒への端末配備を進め、さまざまなICTを組み合わせた双方向一体型学習法「WIESM(ウィーズム)」を独自に展開している。
 ICT教育の実践を積み重ねる中で襲った新型コロナ禍。昨年春の一斉休校の際には、他校に先駆けてオンライン授業を実施した。今年8月30日の始業式もハイブリッド方式。県内外の教育関係者の視察も相次いでいる。奥田校長は「発言が苦手な生徒がオンラインだとバンバン質問をする。学習効果は表れている。生徒の生活も管理しながら、学びを止めない責任が学校にはある」と語る。
 一方で課題も。文部科学省は臨時休校中のオンライン授業について「授業日数には含まない」と規定。子どもたちに不利益が生じないよう各自治体などに「配慮」を促しているものの、オンライン授業を巡る環境整備はまだまだ十分とは言えない。これについて岩永光弘教頭は「教員が準備して工夫を凝らした授業を行い、生徒たちがしっかり学んでいるのに『出席』にならないのは違和感がある」と指摘する。

長崎大付属中でも教諭がホワイトボードなどを使って初のオンライン授業に取り組んだ=長崎市文教町(同校提供)

  ■普及まだ途上
 GIGAスクール構想などにより、県内の公立小中高でも7月末までに、児童生徒に1人1台端末が配備されたばかりで、教育現場へのオンライン授業の導入はまだ途上だ。
 長崎大付属中(山田喜彦校長、424人)は1~6日の臨時休校期間中、全生徒が学校で使っているノートパソコンを自宅に持ち帰り、初めてオンライン授業に挑戦。教諭らは昨年5月から模擬授業など準備を進めてきた。
 研究推進部主任の入江康介教諭(38)は「『付中(付属中)の授業は生徒がつくる』をテーマに生徒のしぐさや、つぶやきに注目しながら授業を進めているが、オンラインではそれが拾えなかった」と課題を振り返る。
 一方、生徒らは「とても楽しかった」「緊張したけどうまくいってホッとした」などと肯定的に受け止めたものの、通信の乱れや目の疲れ、持ち運ぶ際にリュックの水筒が漏れてパソコンが水浸しになる-などのトラブルも。情報モラル教育にも力を入れてきた同校。「トラブルが発生した時にはその都度、解決すればいい。恐れていては何も始まらない」。入江教諭は現場の思いをこう代弁した。

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