レア・セドゥ「日本の美意識を感じる」最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』 ボンドガールからボンドウーマンへ

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』© 2021 DANJAQ, LLC AND MGM. ALL RIGHTS RESERVED.

前作『007 スペクター』(2015年)に続いての登板となるレア・セドゥ。2021年10月8日(金)より公開の最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』で、ジェームズ・ボンドの恋人であり、大きな秘密を抱えたマドレーヌ・スワン博士を演じた彼女に、ボンドガールからボンドウーマンへの進化を聞いた。

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ボンドガールからボンドウーマンへ

―ボンドガールからボンドウーマンという呼称に変わりました。それはボンド映画にフェミニスト的な視点を加えることになりますか?

『ノー・タイム・トゥ・ダイ』では、女性たちとジェームズ・ボンドとの関係は対等です。そこが違いますね。これまでの『007』映画では、女性はどちらかというとボンドの欲望の対象でした。でも、この映画での女性たちはもっと確固たる人物になっている。マドレーヌ・スワンは強い女性ですが、さらに強くなっています。彼女の立場はとても複雑なので、『スペクター』とはずいぶん違うと思われるかもしれません。今回はとても感情を揺さぶる映画であり、恋愛映画でもあるんです。

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―『スペクター』のマドレーヌとは違う人物になったようにも見えますね。

もしマドレーヌが前と違って見えるとしたら、それはマドレーヌの別の顔を見ることができるからでしょう。彼女は以前よりも複雑なキャラクターになっていると思います。マドレーヌは成長したというか、いろいろな感情を経験して、複雑な人間になったんです。キャリー・ジョージ・フクナガ監督の影響もあるのではないでしょうか。私の役だけでなく、ジェームズ・ボンドをはじめとするみんなが、より興味深いキャラクターとして登場しています。

―ボンド・ウーマンが2作続けて登場することは非常に稀です。

いまだに信じられないこと。もし、また出てくれと言われたら、絶対にやりたい。もしかしたら、ジェームズ・ボンドになれるかもしれませんね(笑)。

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「強いカリスマ性を持つダニエルは完璧なジェームズ・ボンドだった」

―新しい監督のキャリー・ジョージ・フクナガは、ボンド映画に何をもたらしたと思いますか?

私は日本が大好きなんですが、この映画にも日本の美意識を感じます。それは監督のキャリーが日本にルーツを持っていることと関係があると思います。彼は美意識が高く、様式美を追求し、とても知的で集中力があります。そして、俳優との距離がとても近い。それは素晴らしいことです。実際、クローズアップが多いので、役者の感情を引き出すことができるし、同時に観る側もその人物の中に入ったような感覚になる。キャリーのおかげで、とてもエモーショナルな映画になったと思います。

―キャリー・ジョージ・フクナガと、『スペクター』の監督サム・メンデスの違いは何だと思いますか?

キャリーは、サム・メンデスとは全く違うタイプです。サムはイギリス出身で、演劇の世界から来ていて、ある程度の距離を置いて演出します。一方、キャリーはサムとは異なる文化的背景を持っていて、人物に接近しようと試みる。もちろん、この映画はアクション映画で、爆発やガジェット、激しい銃撃戦などがありますが、映画の中のキャラクターは立体的で繊細に描かれています。

―ダニエル・クレイグとの再共演の印象はいかがでしたか?

ダニエルは、信じられないほどプロフェッショナルなんです。彼はとても寛大で、繊細な部分もあり、知的でもある。とても強い個性を持っているんです。これは俳優としてとても重要なこと。ダニエルにはとてもカリスマ性があって、完璧なジェームズ・ボンドだったと思いますね。カリスマ性というのは、具体的に見えるものではありませんし、それを持っている人を探そうと思っても、実際にはそうそう見つからないものです。でも、ダニエルには間違いなくそれがあるんです。

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』© 2021 DANJAQ, LLC AND MGM. ALL RIGHTS RESERVED.

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「是枝裕和や河瀬直美、素晴らしい日本の監督とも絶対に仕事をしたい」

―『スペクター』の出演後、出産をされましたが、母親になったことが演技に影響を与えていますか?

もちろんです。女性として、そして女優として、母になるということはとても意味のあることだと思います。子供を持ち、人生経験を積むことで、演技の幅が広がりました。でも出演する作品という点では、女優としての視点で選んでいます。

―フランスを拠点としながら、国際的に活躍されているあなたが、たくさんのオファーの中から出演作を選ぶ基準は何ですか?

監督が一番重要です。とはいえ、次はあの監督と仕事がしたい、というような計画を立てたりはしません。 私にとって監督との出会いはラブストーリーのようなもの。偶然と出会いがとても大切なんです。でも、日本の監督とは絶対に仕事をしたいと思っているんです。是枝裕和や河瀬直美の作品はとても素晴らしい。私が日本の文化に惹かれるのは、見た目からでは理解できない部分があるから。表面の下に、いろいろな層が隠れている。もしかしたら、私自身がそういう性格なのかもしれませんね。はっきりはわからないけれど。

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』© 2021 DANJAQ, LLC AND MGM. ALL RIGHTS RESERVED.

取材・文:石津文子

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』は2021年10月1日(金)より全国公開

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