社説:中台TPP 原点に返り可否の判断を

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 国際社会を、驚かせる動きではなかろうか。

 今月中旬になって、中国が環太平洋連携協定(TPP)への加入を正式に申請した。これに先週、台湾も続いた。

 「一つの中国」との原則を掲げる中国は、台湾があらゆる公的な協定や、国際組織に加入することに反対している。常識的に考えると、両者がともに参加するのは難しかろう。

 加入を巡って新たなあつれきが、中台間に生じてしまう恐れがありそうだ。

 TPPは、アジア太平洋地域の国々による経済連携協定(EPA)である。貿易の自由化を進めるため、加盟国は農産品や工業製品にかかる関税を削減したり、撤廃したりする。

 締結交渉を始めた米国が離脱したものの、日本、オーストラリア、マレーシア、シンガポールなど11カ国が参加し、3年前に発効した。

 その後の加入申請は、今年2月の英国以来である。

 台湾については、これまでTPP委員会の議長国である日本と、意見交換を続けてきた経緯もあり、申請してもおかしくはない。

 一方、中国は加入を検討していたようだが、申請までには、高いハードルを越えなければならないとみられていた。

 加入するには、すでに参加しているすべての国の承認が必要となっている。

 加盟国のうちシンガポールやマレーシアは、巨大な中国市場とのつながりが深まるとみて、参加を歓迎しているという。

 しかしオーストラリアは、海洋進出や新型コロナウイルスの感染起源を巡って、中国に批判的な姿勢を示してきた。これに伴って中国から、輸出品への関税を引き上げるなどの制裁を受けている。

 このため、こうした措置が解除されない限り、交渉には応じられないとの立場だ。

 中国に対抗する新たな安全保障の枠組みを、英米とともに構築する。現時点で中国の加入は到底、容認できないだろう。

 高いハードルは、これだけではない。

 中国は、改革・開放政策によって、市場の導入と貿易の自由化を進めてきた。

 とはいえ、多くの基幹産業で国有企業の優遇が今なお続き、半導体などの国産化比率を向上させるため、企業に補助金を注ぎ込んでいる。

 現状では、公正な自由貿易を妨げているといえよう。

 知的財産権の不当な扱いや、政府調達の自国優遇、データ流通への規制など、TPPのルールとは相いれない政策も少なくない。

 TPPの定める基準と合致するよう、国内法の整備などに取り組んだうえでなければ、加入の検討に至らないのではないか。

 TPP設置には、関税の削減や撤廃にとどまらず、公正なルールに基づいた自由貿易圏を広げる狙いがあるということを踏まえておかねばなるまい。

 中台の加入申請は、この原点に立ち返って判断してほしい。併せて、米国にいま一度、復帰を働き掛けるべきだ。