ベンチ外がヒーローに 決勝弾の鷹リチャードが元首位打者から得た“プロの流儀”

試合前に王貞治会長から指導を受けるソフトバンクのリチャード【写真:藤浦一都】

決勝弾を放った3打席目の直前には「小久保ヘッドからヒント的なことを」

■ソフトバンク 4ー1 日本ハム(26日・PayPayドーム)

ソフトバンクは26日、本拠地PayPayドームで日本ハムと対戦し、4-1で勝利し、2連勝を飾った。2カード連続の勝ち越しとなり、勝率5割に復帰。勝利の立役者は、前日の試合でベンチ外となっていたリチャード内野手だった。

同点で迎えた7回の攻撃。先頭のリチャードは代わったばかりの井口が投じた2球目、低めのスライダーを捉えると、「だいぶ詰まった。でも行くと思いました」という打球は左翼スタンドへと飛び込んでいった。リードを奪う勝ち越しの5号ソロ。ダイヤモンドを一周しながら、喜びを爆発させた。

この一発には、小久保裕紀ヘッドコーチの助言が生かされていた。1打席目は四球を選び、2打席目は三ゴロに凡退。「打席に入る前に、1、2打席目を踏まえてヘッドと話をしました。内容は言えない、企業秘密なんですけど、ヒント的なことを言ってもらって、それがいい結果になりました」。助言を意識の中に置き、一発に繋げた。

前日の試合ではベンチを外れた。相手の先発が左打者を苦手とするバーヘイゲンということで首脳陣の戦略上の判断だった。もちろん胸の内に悔しさはあったが、「自分は脚でも、守備でも使えないんで。打者がその日の投手に合わないなら外すよな、と思っていました」と意図を理解した。

1軍昇格後、初めてのベンチ外に「何していいか分からなかった」

初めての“ベンチ外”で「何していいか分からなかった」というリチャード。先輩である長谷川勇也外野手に過ごし方を聞くと「試合見て勉強するんだよ」との答えが。ウエートトレーニングに汗を流しながらも試合をチェック。相手の配球などを学ぶとともに「こういうチームの中でプレーしているんだなと改めて自覚しました」との意識も芽生えたという。

これで今季5本目の本塁打。8回にはダメ押しの犠飛も放った若き大砲に、工藤公康監督も「変に臆することなく自分の打撃をしようというのが結果に繋がっている。ああいうところの1本で、あとはブンブン振ってくれればいい。ノビノビとやっていればいい」と目尻を下げる。

この日は孫正義オーナーが観戦に訪れていた。初めて勝利のハイタッチを交わしたリチャードは「孫さん初めて見ました。めっちゃ優しそうでした。名前を覚えてもらえたら嬉しいです」と初々しい。勝率を5割に戻したソフトバンク。上位を追いかけるディフェンディングチャンピオンの中で、リチャードの存在が大きくなってきている。

【動画】本人曰く「だいぶ詰まった」それでも打球はスタンドへ 鷹リチャードが放った決勝5号ソロ

本人曰く「だいぶ詰まった」それでも打球はスタンドへ 鷹リチャードが放った決勝5号ソロ【動画:パーソル パリーグTV】 signature

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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