【大学野球】「うちで1番すごい」妹は甲子園胴上げ投手 帝京大・島野が感じた悔しさと原動力

「7番・一塁」で先発した帝京大・島野圭太【写真:川村虎大】

ここまで4連敗だった帝京大は15安打9得点で快勝、島野圭太が決勝打を含む2安打の活躍

長いトンネルからやっと抜け出した。26日に川崎市の等々力球場で行われた首都大学野球1部リーグ戦で、帝京大は筑波大に15安打の猛攻を浴びせ9-2で勝利した。開幕からの連敗を4で止める決勝打を放ったのは、「7番・一塁」で先発したルーキー・島野圭太内野手だった。

「結果が全然出せなくて……。なんとかチームの力になりたいと思っていました」とホッとした様子を見せる。帝京大は開幕から4戦4敗。苦しむチームを救ったのは、1年生の一振りだった。

初回に1点を失い、一瞬嫌な雰囲気が流れたが、裏の攻撃で3得点しすぐにひっくり返した。島野は同点に追いつきなお2死満塁で打席に立つと、左打席から三塁後方に詰まった打球をぽとりと落とし、決勝の2点適時二塁打とした。

「連敗していたので、雰囲気を変えていこうと。いい雰囲気で入れたと思います」。その一打でチームは、勢いに乗った。蓋を開けると15安打9得点で快勝。悪い流れを一掃した。

妹は女子史上初の甲子園胴上げ投手・島野愛友利、優勝後ラインで「おめでとう」と送った

大阪・履正社高時代は、2年時の2019年夏に甲子園で日本一。連覇を狙った2020年は新型コロナウイルスの影響で、春夏ともに日本一を目指す甲子園がなくなった。失意の底にいた島野に声をかけたのが、帝京大の唐澤良一監督だった。

「熱心に誘ってくださったので、帝京大で一花咲かせたいなと思いました」

履正社高時代から、木製バットで練習していたため、大学に入ってバットの違いで苦しむことはなかった。一方で、大学生が投げるボールのキレや変化量には苦戦。対応するために変えたのは考え方だ。

「大振りしてしまうことがあったので、直球は三遊間にゴロを打つような意識にしました。唐澤監督から『ゴロを意識しててもゴロにならず飛んでいくから』と言われていたので」。その言葉通り、この日放った2安打は共に逆方向。「イメージ通りにできたと思います」と、納得する。

3兄妹の次男で、妹は神戸弘陵高(兵庫)女子野球部のエース・島野愛友利だ。中学生の頃から女子野球界のスター。2019年には大淀ボーイズ(大阪)に所属し、中学硬式日本一を決めるジャイアンツカップで胴上げ投手となったのに続き、今年8月23日には初めて甲子園球場で行われた第25回全国高校女子硬式野球決勝でも、胴上げ投手の栄冠に輝いた。

甲子園の決勝後、ラインで「おめでとう」とメッセージを送った。妹の快挙に嬉しい気持ちも、複雑な気持ちもある。「中学と高校で日本一になって、うちで1番すごい。でも、やっぱり悔しい部分はあるので、負けないように頑張っています」。悔しさも糧に練習に取り組んで、この日の結果につなげた。あくまで自分は自分。“島野圭太”として、大学で一花咲かせる。(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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