評判が広がり野球用具メーカーが商品化 汗と蒸れから解放される“包帯パンツ”とは

野球選手も愛用する汗と蒸れから解放される“包帯パンツ”とは

男が「勝負する」時に気合の入るパンツを作りたい

「包帯パンツ」をご存じだろうか? 野球界に限らず、プロアスリートはユニホームの“下”までにこだわっている。ある球団は、チーム単位で発注するほどその快適さがもう手放せない。汗のベトつきを防ぐ快適なパンツができるまで、開発者に誕生秘話を聞いた。

包帯パンツは体を守る上において、強度の問題から試合での野手の着用や、スライディングパンツとの併用はお勧めはできないが、プロの投手が実際に試合でも履いているケースも多い。汗をかいてもまとわりつかない。それでいて動きを阻害しない素材が人気を博し、2007年の発売から「他のパンツは考えられない」という選手が現れるほどの人気になった。普段使いはもちろん、練習でも効果を発揮してくれる。

見えないオシャレといわれる下着だが、スポーツ選手にとってはパフォーマンスにも影響する。履き心地が悪かったり、蒸れたりすれば、練習でも試合でも集中力を欠く。ただ、アンダーシャツやスパイクなどは年々、機能性が上がっていく中、肌に直接触れる下着への関心は高くなかった。「どんな物でも大差はない」という固定観念に、包帯パンツは風穴を開けたのだ。

オリジナルブランドHOHTAIの『包帯パンツ』は、2008年11月に東郷神社で行われた「包帯の陣」展示会が始まりだ。この展示会で「甲冑パンツ」と呼ばれる戦国武将の甲冑を模した包帯パンツが各メディアで取り上げられ、プロ野球選手の耳に入った。愛用者が爆発的に広がり、野球メーカーの「スラッガー」が商品化するまでになった。

「包帯パンツ」の生みの親は、ログイン株式会社代表取締役の野木志郎さん。かつては、父が経営する女性用の下着製造会社の後継ぎとして働いていた。ところがアスリートが国を代表して戦う姿を目の当たりにして、心が変わった。「日の丸を背負って戦う男たちのためのアンダーウェアを作りたい」と独立を決意した。

開発者が世界のパンツを履きまくってたどりついた「課題」

しかし、そこからの道のりは険しかった。スポーツのパンツの開発に取り掛かるも、何を作ったらいいのか全く分からなかった。最初にやったことは「世界中のパンツを買い漁って履く」ことだった。世界各国を回り、高級パンツを購入することもあった。その数は数千枚を超えた。スポーツのパンツは「汗」を克服することにあると確信し、開発のテーマが決まった。

汗で気持ち悪くなる原因。それは通気性の悪さにあった。そこで野木さんは、通気性の良い素材を集めて、スポーツパンツの開発に取り掛かったが、合成繊維で作らないと強度が弱くなるという問題点にぶつかった。ナイロンやポリエステル等の合成繊維を使用した糸は汗を吸わないため、「つなぎ目のないパンツ」のように汗の不快感の原因となってしまう。テーマである「汗」の問題解決に時間がかかり、開発を断念する手前まで追い込まれた。

2004年6月、「もう無理や」と諦めかけていた野木さんのもとに、父がタンスから「包帯」を出してきて手渡した。これがきっかけとなり、開発は再び動き始める。包帯素材は元々、傷口に使用するため肌にも優しく、通気性と強度にも優れている。開発までいくつもの壁を乗り越え、2007年2月、待望の「包帯パンツ」が完成した。

こうして、2008年の展示会を迎えることになるのだが、この甲冑のデザインには「男が勝負するときに気合いが入るように」という野木さんの思いが込められていて、文字通り「男の勝負パンツ」として戦国武将の甲冑をイメージしたデザインが施されている。それが勝負師たちの心を打った。

汗や蒸れからの解放で、野球をはじめ、多くのスポーツ選手から愛されている。高いレベルの選手のこだわりは、下着にも隠されていた。

【写真】評判が広がり野球用具メーカー「スラッガー」が商品化 汗と蒸れから解放される“包帯パンツ”

【写真】評判が広がり野球用具メーカー「スラッガー」が商品化 汗と蒸れから解放される“包帯パンツ” signature

(記事提供:First-Pitch編集部)

© 株式会社Creative2