TCRヨーロッパ第6戦は勝者ジロラミのドライブに物議。宿敵アズコナも「倫理を超えた行為」と苦言

 2021年シーズンも残すは2戦、タイトル争いも大詰めを迎えたTCRヨーロッパ・シリーズ第6戦が高速トラックのイタリア・モンツァを舞台に9月24~26日に開催され、ランキング2位からの逆襲を期すフランコ・ジロラミ(FK8ホンダ・シビック・タイプR TCR/PSSレーシング)がポールポジション獲得からの連勝を達成……したかに思われた。しかし、初戦から繰り返される“過度なディフェンス”行為にライバルからは非難の声が挙がり、レース2では黄旗追い越しのペナルティを受け勝利も剥奪に。代わってマット・オモラ(ヒュンダイi30 N TCR/ヤニーク・モータースポーツ)が今季初優勝を手にしている。

 37点差の大量リードを築き、2018年以来自身2度目のタイトル奪還に向け邁進するボルケーノ・モータースポーツのミケル・アズコナ(クプラ・レオン・コンペティションTCR)だが、超高速バトルの幕開けとなる最初の公式練習こそ最速を記録したものの、続くFP2は旧型ヒュンダイに乗るオモラが気を吐き、予選では宿敵ジロラミにポールポジションを譲ったばかりか自身は4列目7番手に沈むなど、苦しい状況に追い込まれた。

 土曜午後13時に迎えたレース1スタートでは、フロントロウ発進だったジャック・ヤング(FK8ホンダ・シビック・タイプR TCR/ブルタル・フィッシュ・レーシング)が早々に戦列を去ると、7番手発進だったアズコナはトム・コロネル(アウディRS3 LMS/コムトゥユー・レーシング)らとの共闘で、ドゥサン・ボルコビッチ(アウディRS3 LMS/コムトゥユー・レーシング)らを仕留めて4周目には4番手にまで進出する。

 さらに7周目のターン1でコロネルをパスしたスペイン出身の元王者は、8周目に2番手フェリーチェ・ジェルミニ(ヒュンダイ・エラントラN TCR/セバスチャン・ローブ・レーシング)がロッジアでパンクに見舞われトラックサイドに止まったことから、さらにポジションをひとつ上げていく。

 背後に迫ってきた選手権リーダーの圧を感じたか、首位ジロラミは9周目の“アスカリ・シケイン”でワイドになり、このロスでリヤバンパー背後にアズコナのクプラが張り付く展開となる。

 10周目以降、ターン1のシケインからクルヴァ・グランデ、ロッジア、アルボレート(旧パラボリカ)とラインを交錯させながらボディを並べていくものの、ファイナルラップでも決定的な機会は得られず。わずか0.222秒差でジロラミが今季2勝目を手にし、アズコナ、コロネルと続くリザルトとなった。

「僕はできるだけ速く走るべくプッシュしたが、アズコナには大きな力があることが明白だった。それだけに素晴らしい結果だ」と満足げな勝者ジロラミに対し、2位に終わったポイントリーダーはレース後に異なる見解を口にした。

ゲスト参戦も含め、総勢28台のTCR車両が集結した9月24~26日のTCRヨーロッパ・シリーズ第6戦
ランキング2位からの逆襲を期すフランコ・ジロラミ(FK8ホンダ・シビック・タイプR TCR/PSS Racing)がポールポジション獲得からレース1を制するも……
「これほど速いストレートでラインを変えてまで相手に当てるのは危険だし、お互いを尊重する必要があると思う」と、R1直後にも苦言を呈していたミケル・アズコナ(左)

■「フランコはスポーツの限界を超えていると思う」と苦言を呈したアズコナ

「フランコ(・ジロラミ)が苦戦しているのが見えたから、マシンにトラブルを抱えていて彼を捕まえることができると思った」と明かした今季ここまで5勝のアズコナ。「彼の立場は理解できるし、彼はチャンピオンシップに勝ちたいと思っているだろうが、僕らにはあまりにも多く直線上の接触があった」

「これはツーリングカーレースだから、コーナーでのバトルはある程度、そうした勝負が許容されるとは思う。でもこれほど速いストレートでラインを変えてまで相手に当てるのは危険だし、お互いを尊重する必要があると思う」

 明けた日曜の午後13時30分からリバースグリッドの7番手からスタートを切ったアズコナは、すぐさま3番手に浮上するとジミー・クレーレ(プジョー308 TCR/チーム・クレーレ・スポーツ)をアルボレートで突つき2番手に進出する。

 しかしその後、後方から浮上してきたジロラミがヴァリアンテ・シケインの脱出でタイトルを争うライバルを捉えて2番手浮上に成功。そのままリバースポールシッターのニコラス・ベアト(アウディRS3 LMS/コムトゥユー・レーシング)もパスしてレースリーダーの座に返り咲く。

 しかしジロラミはこのアズコナとの攻防の際、コース脇にトラブル車両が停止しており、ヴァリアンテ・シケインはイエローフラッグ掲示中だったことから、レース後にジロラミに対し30秒加算のペナルティが課されて19位に後退することに。一方、一時はジロラミのシビックを追いながら2番手でフィニッシュラインをくぐっていたアズコナも、序盤のクレーレへのヒットに対し5秒加算となり最終結果は4位に。これで勝者オモラ以下、コロネル、ヤングのトップ3となった。

「今回もロングストレートの終わりで接触され、そのままバランスを崩した状態でパラボリカに進入させられた。フランコはスポーツの限界を超えていると思う」と苦言を呈したアズコナ。

「追い越しを試みるたび、彼は防御策のみを徹底して接触を厭わない。相手にスペースを残す考えは一切なく、これらの行動はこのスポーツの理念や規制に違反しており、共有することはできないね。ドライバーはこの種の汚い行動をすることをある程度、理解はしているが、フランコは限界を超えすぎていると思う」

 依然として、アズコナはバルセロナでのシーズン最終ラウンドを前に382ポイントでチャンピオンシップをリードしており、90ポイントが授与されていないジロラミには53ポイントものマージンを有している。そのTCRヨーロッパ・シリーズの2021年最終ラウンドは、WTCR世界ツーリングカー・カップとの併催イベントとして10月8~10日にバルセロナで雌雄を決する。

荒れたレース2では、ペナルティ絡みの裁定が降った結果、マット・オモラ(ヒュンダイi30 N TCR/Janík Motorsport)が今季初勝利を手にしている
アズコナとの攻防の際に、コース脇にはトラブル車両が停止しており、ジロラミに対し30秒加算のペナルティが課されて19位に後退することに
連続表彰台でランキング3位浮上のトム・コロネル(アウディRS3 LMS/Comtoyou Racing)だが「正直、優勝争いに参加するスピードはなかった」

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