38歳手取り年収700万、ずっと独身予定の男性「5000万の物件、購入するタイミングは?」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、38歳・会社員の男性。手取り年収は700万ほど。将来にわたって結婚する予定はないという相談者。好立地で5,000万円ほどのマンションを購入するべきか悩んでいるといいますが、タイミングの決め方など、判断のポイントは? FPの渡邊裕介氏がお答えします。

38歳、独身です。将来にわたって結婚する予定は確実になし。今のところ海外赴任や引っ越し転勤などもほぼなしです。

2年前に転職し、大企業でそこそこの給料をもらえる立場になりましたが、今このタイミングでマンションを購入したほうがいいのかどうか迷っています。

検討しているのは、ターミナル駅から1駅離れて徒歩5分程度で、その他徒歩圏内に2路線使える立地で、5,000万円ほど。借入額は4,800万円程度を考えています。頭金をもっと出してもいいのですが、金利が安いので住宅ローン減税的にこの金額が最適かなぁと……。金利は0.5%、返済期間は35年と考えています。

【相談者プロフィール】

・男性、38歳、会社員、独身

・住居の形態:賃貸(東京都)

・世帯の手取り金額:700万円(年収)

・ボーナス:なし

・毎月の世帯の支出の目安:25万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:10万円

・食費:3万円

・水道光熱費:1万円

・教育費:5,000円

・通信費:5,000円

・お小遣い:5万円

・その他:日用品 5,000円、衣服・美容5,000円、健康・医療1万、交通費1万

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:10万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):2,000万円

・現在の投資総額:1,000万円


渡邊:こんにちは、ファイナンシャルプランナーの渡邊です。独身の男性の住宅購入相談です。金額的なご相談よりも、このタイミングで購入した方が良いのかということを気にされているので、マンションを購入するメリットや注意点と賃貸で住むメリット及び注意点について整理しながら、ご自身の生活スタイルにマッチした方向性について考えていきましょう。

マンション購入のメリット・注意点は?

まずは、購入のメリットと注意点を見ていきましょう。

【メリット】
・マイホームを持つ充実感・満足感がある
・自分の理想の間取りにリフォームすることが可能
・住宅ローンを組むと団体信用生命保険に加入するので、万が一の時に住宅ローンの支払いがなくなる
・住宅ローン完済後、マンション価格が落ちていなければ資産となりうる
・エリアや物件によっては、将来売ったり貸したりすることができる

【注意点】
・簡単に住み替えができない
・住宅ローンを組むので負債を抱える
・頭金や諸費用など手元資金が少なくなる
・住宅ローン返済後も管理費や修繕積立金などコストがかかる

相談者にとって、購入にどんなメリットが考えられる?

ご相談者にとって、購入することのメリットは大きく2つが考えられます。

●日々の生活の充足感
マイホームを持つという充足感が得られ、ご自身の理想の間取りや内装を実現できるので、生活する空間が大切な人にとっては、最も重要なポイントになります。

●経済合理性
エリアや物件選びに成功し、将来価値が下がりにくい物件を購入することができれば、ゆくゆく売却したり、貸したりすることで、賃貸に住むよりも経済的なメリットを享受できる可能性があります。

住宅ローンの団体信用生命保険は、万が一の時の保障となるため、家族をお持ちの方にとっては、非常に大きなメリットになります。ご相談者の場合は、将来にわたって独身であるという前提で考えてらっしゃるので、このメリットはあまり期待する部分ではないでしょう。

賃貸と比較すると……?

では、賃貸のメリット・注意点について見てみましょう。

【メリット】
・家族構成や仕事など、ご自身をとりまく環境の変化により、その都度引越しをすることが可能
・年収の変化に合わせて、家賃の高いところや低いところへ住み替えることが可能
・勤め先によっては家賃補助が出る場合がある
・住宅ローンがないので、破綻するリスクがない

【注意点】
・家賃を払い続けなければならない
・高齢になると借りられる物件が限られてくる

賃貸の一番のメリットは、将来住み替えがしやすい点になります。長い人生を考えた時、家族構成や職場など、ご自身をとりまく環境が変化する可能性は大いにあります。また、仕事で得られる年収の変化や、リタイア後の生活など、住居関連に拠出できる金額も変化する可能性があるため、必要に応じて住み替えが可能なのは大きなメリットと言えるでしょう。

一方で、長生きのリスクとも言えますが、長生きすることで家賃の負担が長期にわたり、じわじわと重くなる可能性もあります。高齢者が借りられる物件は今後増えてくるとは思いますが、ある程度長生きした場合でも家賃を負担できるだけの準備は必要です。

自分の価値感にマッチするのは?

このように、購入か賃貸を検討する際に、どこにポイントを持っていくかによって、選択が変わってきます。

当たり前の事でもありますが、何のために購入するのかを改めて考えましょう。もしマイホームを持つことに憧れがあり、購入することで日々の生活が充実するのであれば、購入に踏み切ってよいでしょう。注意点を考慮すると、管理費や修繕積立金などコストにも着目し、物件選びに強い専門家に相談しながら、エリアを含め物件の品定めをしっかりとした上での購入を目指しましょう。

逆に、まだ将来に対して明確なビジョンがなく、生活や考え方が変化する可能性が高いのであれば、慌てて購入する必要もないように思われます。

物件価格や市場動向だけにとらわれすぎずに

ご相談者は、しっかりと貯蓄や運用もされており、堅実に生活を送られてきています。ご年収や今の生活費などを確認すると、検討されている物件価格については、特に問題なく購入することは出来るでしょう。

一方で、まだ明確に購入したい意思がないようでしたら、賃貸で住みながら、将来に向けた貯蓄を継続することで、ゆくゆく購入することやそのまま賃貸で住み続ける選択肢も選ぶことができます。

物件価格の市場動向や税制の動向などで購入のタイミングを図ることは、経済的な合理性のみを追求していることになります。ご自身の理想の生活をしっかりと描き、それを実現するために、住宅購入という選択肢が自分にマッチするのかを考えてみましょう。その上で、購入タイミングや物件価格やエリアを考えると、失敗のない住居選びをすることが出来ます。

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