60歳時の平均貯蓄額は3000万!50歳で老後資金の準備ができない、私の将来はどうすれば…?

50歳になったら、老後資産がリアルな問題として迫ってくる年齢です。実際どのくらいの貯金をしているのでしょうか。貯金ができてない50歳の心配に、ファイナンシャルプランナーが、今からできる資産形成を解説します。


60歳で貯金がゼロ、300万以下の割合は?

60歳で貯金がゼロ円、または貯蓄が300万円以下という人は、どのくらい割合でいると思いますか?

PGF生命は「2021年の還暦人に関する調査」を行なっています。これは2021年に還暦を迎える人を対象にしたアンケートです。それによれば、60歳時点での貯蓄額の平均は約3,026万円ですが、もっとも多く回答が集ったのは100万円未満で25%です。次いで、100~300万円未満が10.7%です。また、貯蓄額2,000万円未満の人は約66%という結果になっています。

平均の貯蓄額が3,026万円でも、300万円未満は約35%。つまり、3人に1人は老後資金の準備ができていないことになります。これをみると貯蓄がある人とない人が二極化しているのがわかります。

さてさて、貯蓄が300万円というのは、老後資金としては全然足りません。準備ができていないと言っていいでしょう。

そうはいっても、「これが現実だよ」「だって貯められなかったんだよ」という嘆きの声が聞こえてきそうです。

大丈夫、たとえ60歳で「貯蓄がゼロ」でも、なんとかできます!そのかわり、心して準備してください。

安易な手段に頼らないで、まずは働く

最初に、「貯蓄ゼロの老後」を想像してみてください。かなり暗い気持ちになってしまいます。

60歳で貯蓄がないと言う状態で、仕事を辞めてしまっては生活が成り立ちません。年金の受取りは65歳からなので、あと5年はあります。「繰り上げ受給をすればいい」なんて、安易に考えてはいけません。

繰上げ受給をすると年金の受給額が減ってしまい、それが一生涯続くことになります。結果的に自分の首を絞めることになるので注意です。生活保護を受ければいいという人もいますが、そんな簡単に受給することができません。持ち家があればダメですし、親族へ「扶養は可能か」という連絡がいきます。

ここは、まず「働く」ことを考えてみてください。

「なんだ、結局は働くのか」とガッカリしないでください。「働く」というのはシンプルですが、効果がもっとも大きな手段です。

老後生活で最も大切なのが「収支のバランス」

会社員・公務員で働けば、厚生年金に加入することになりますので、その分、厚生年金が増えます。

この間、できるだけ貯蓄を心がけてください。子どもたちへの教育資金や住宅ローンなどの支出は減っていると思いますので、貯蓄に回せる金額が増えるかも知れません(給与も下がっているかも知れませんが)。

また、生活費の節約も大事です。これから始まる年金生活に向けてのダウンサイジングです。

老後の生活でもっとも大事なのは、「収支のバランス」です。

「収入である年金の受給額を増やしながら、支出の生活費を減らしていく」これによってお金の心配のいらない老後生活が実現できるといっても過言ではありません。

65歳からお金のプランニングが大事!

65歳になりやっと何も考えずにゆったり…なんて、安心してはいけません。「人生100年時代」と言われています。やっと3分の2が終わったところです。残りの人生3分の1の生活資金は貯まりましたか?

ここは、「もうひと頑張り」です。できれば、70歳まで働いてみるという選択肢もいれてみるのもいいでしょう。

65歳以降は、体力に合わせて「時短」という働き方に切り替えることもできます。給与は減ってしまいますが、働くことは生きがいにも通じることになります。

これによって、収入を得ることができます。その間、年金の繰下げ受給をしてはいかがでしょうか? 繰下げ受給をすることで、受給額は年8.4%の増額になります。70歳まで繰り下げると42%の増額です。

これによって、70歳以降の年金だけの生活になったときに楽になると思います。

年金受給額180万円から274万円に増額するシミュレーション

ここまで読んで、「ほんとかなぁ〜」とちょっと半信半疑という方のために、シミュレーションをしてみましょう。

男性:60歳。65歳での年金受給額180万円。

60歳からは再雇用。60歳から64歳までの年収は420万円、65歳から69歳までは、時短で働くので年収は156万円とします。

60歳以降も働くので厚生年金が増えます。約10万円増えるとしたら、65歳の年金受給額は190万円になります。190万円を70歳まで繰下げ受給しますから、70歳での受取額は約270万円です(190万円×142%=2,268.8万円)。

さらに70歳まで厚生年金に加入して働くのですから、ほんの少し年金が増えます。増加額は約4万円とします。70歳からの年金受給額は274万円になったというわけです。

60歳の時点で、65歳からの年金は180万円だと思っていたのが、70歳まで働いて、さらに繰下げ受給をすることで、274万円に増えるということです。

さすがに、1年を274万円だけで生活するのは、苦しいと思いますが、妻の年金を合わせると300万円以上になると思います。これでなんとか、年金だけでも生活できるようになるでしょう。

節約に成功していれば「収支のバランス」が取れる額となります。「収支のバランス」がとれれば、老後生活ではお金の心配から開放されて過ごせるようになります。

この収支のバランスをとることで、「減らない財布」を手に入れることになりますから、ちゃんと暮らしていける老後に一歩近づくことができます。

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