池田理代子の原作アニメ「ベルサイユのばら」スケールの大きな主題歌たち  リマインダーが選ぶアニメソング ー 70年代編

原作漫画の世界を損なわず丁寧に仕上げられた「ベルサイユのばら」

1979年10月10日から約1年にわたり放送された名作アニメ「ベルサイユのばら」。

女性として生まれたはずなのに男性として生きることを運命づけられた主人公・オスカルが颯爽と剣を振るい、たくさんの人たちを指揮する凛々しい姿に魅了された人も多いはず。よくぞここまで原作漫画の世界を損なわず、最後のシーンまで丁寧に仕上げてくれたと胸が熱くなる素晴らしいアニメ作品だ。

オスカルの声を担当したのは田島令子。オスカルの抱えた宿命と、フランス革命に突き進む時代に翻弄される姿をクールな声で表現。田島令子以外に考えられないと思うほど原作ファンも納得のキャスティングだったと思う。アンドレの声は志垣太郎が担当。こちらもまたイメージ通り。叶わぬ恋に身を焦がすオスカルへの深い愛がひしひしと伝わってくる。

名フレーズの強烈なインパクト、主題歌「薔薇は美しく散る」

「ベルばらの主題歌を知ってる?」と質問すれば、多くの人が即答で「♪ バラはバラは~」と口にする。そう、曲名は知らなくとも歌詞で伝わるこの強烈なインパクト! 正式なタイトルは「薔薇は美しく散る」だ。この曲は「♪ 人生楽ありゃ苦もあるさ」という名フレーズでおなじみの『水戸黄門』の歌詞を書いた作詞家・山上路夫が担当したものだ。

 私はバラのさだめに生まれた
 華やかに激しく生きろと生まれた
 バラはバラは 気高く咲いて
 バラはバラは 美しく散る

オスカルの宿命をこんなに短い言葉で、的確に表現できる素晴らしさ。そして誰もが口ずさまずにはいられない「バラはバラは」という言葉のチョイス。さすがとしか言いようがない。

一方、作曲は数々の名曲を世に送り出してきた馬飼野康二が担当。ドラマティックでロマンあふれるメロディーは、これ以上にないほどストーリーにぴったりだ。導入部分のリズムが、オスカルの愛馬の蹄の音に聴こえてくる不思議。高音ボイスで歌い上げる鈴木宏子の情感こもった歌声も高潔な雰囲気でとても美しい。

後奏に挿入されるアンドレのセリフ入りバージョンも!

実はこの曲、後奏にアンドレのセリフが挿入されていることをご存じだろうか。テレビではショートバージョンが使われているため耳にすることはなかったが、レコード盤で初めて聴いたときの衝撃たるや…!

曲がフェードアウトしていく中、突如、「ジュテーム… オスカル!」とせつなくつぶやくアンドレのセリフ… 幼心にも愛の告白だと分かる志垣太郎の確かな演技力。スピーカーの前で、気恥しく感じたのはきっと私だけではないはずだ。そして、この “セリフの挿入” という技法は主題歌だけでなくエンディング曲「愛の光と影」でも引き継がれている。

アンドレのせつなさを歌うエンディング曲「愛の光と影」

主題歌「薔薇は美しく散る」がオスカルの運命を描いたものなら、エンディング曲「愛の光と影」はアンドレのせつなさを歌った泣き歌だ。曲が終わりに近づいてくると、何やらアンドレの一人語りが聞こえてくる…

 愛しても、愛と呼べない
 僕の目はもう君を見ることが
 できなくなる…
 あぁぁ… オスカル…
 オスカーーール!!

アンドレ、愛の大絶叫である。オスカルの名前を呼ぶ熱量。やばい、愛が重すぎて、愛情の圧がすごい。ボエマーのようなアンドレのセリフに、思わず聴いてるこちらも引いてしまうほどだ。

実はこの激アツなセリフは、シリーズの途中から消されてしまう。まるで初めからなかったかのようにエンディング曲だけが、しれっと流されるという悲しい憂き目にあってしまうのだった。理由は不明だが、不評すぎて消されてしまったのではないかという話も。真相やいかに…。

斬新! 壮大なネタバレを含んだオープニングとエンディング

これら2つの曲に共通する注目点がもうひとつある。

物語の後半でアンドレは視力を失い、ラストシーンでオスカルは激戦の中、銃弾に倒れて物語の幕は下りるのだが、「♪ バラはバラは気高く咲いて、バラはバラは美しく散る」と歌われていた主題歌を思い出してほしい。

この曲で「美しく散る」とオスカルの死はすでに壮大なネタバレだ。さらにエンディング曲では「僕の目はもう君を見ることができなくなる…」というアンドレ最大の見せ場までネタバレしている。今聴きなおすと、「これ、本当に大丈夫だったの?」と思わずにはいられない。

原作の漫画は1973年に連載終了し、宝塚歌劇団での初演は1974年からスタートしたという。社会現象とまでいわれた人気作だったことから、誰もが物語や結末を知っている前提でアニメは作られたのだろう。それにしても今のアニメでは考えられない。楽曲からのネタバレなんて… なんという斬新さ!

放映から40年以上の時を経ても、今なお楽曲は愛され、カラオケで熱唱する人も多いという。アニメ「ベルサイユのばら」、そしてドラマティックな素晴らしい楽曲たちはこれからも愛され語り継がれていくことだろう。もちろん歌うときには、ぜひともセリフ入りで熱唱してほしい。

※2020年10月10日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: 村上あやの

あなたのためのオススメ記事石森章太郎が作詞を手掛けた「サイボーグ009」主題歌「誰がために」

▶ 漫画・アニメの記事一覧はこちら!

80年代の音楽エンターテインメントにまつわるオリジナルコラムを毎日配信! 誰もが無料で参加できるウェブサイト ▶Re:minder はこちらです!

© Reminder LLC