高比良 突破力が武器 生まれ故郷で飛躍誓う TIP OFF 初代ヴェルカの選手たち(3) ウイング陣

突破力を生かしてチームに貢献する高比良=佐世保市、長崎ヴェルカクラブハウス内体育館

 長崎ヴェルカ唯一の長崎県出身選手の高比良寛治は、長崎市で生まれ、7歳まで佐世保市で育った。競技を始めたのは福岡に引っ越した後の小学4年時。卒業文集に「夢はバスケットボール選手」と書いた。
 だが、中学で部活に入ったものの、顧問は空手出身。実質、専門の指導者が不在で、試合も全然勝てなかった。自分自身も「ジャンプ力もなく、足も遅かった」。最終学年でようやくベンチ入りできた程度だった。
 徐々に“原石”が磨かれていったのが福岡西陵高時代。「昭和っぽい監督でスリー禁止にしたり、とにかくドライブばかりやらされた」。だが、その「走れ走れ」の練習に加え、片道約40分の自転車通学は、自然と脚力を鍛えてくれた。理想像でもある“止められない選手”になるための基礎になった。
 兵庫県の芦屋大進学後は、それまでの反動からシューティング練習に力を入れた。ガード、フォワードに必要な要素を一つずつ増やしていった。
 現在の最大の魅力は、コーチ陣に「まずドライブを意識して」と指示されるほどの突破力。身長は183センチながら、高さのある外国人選手にもひるまず、トップスピードで切り込んでシュートをねじ込む。その後のディフェンスへのダッシュも欠かさない。
 「キャリア的にもここが人生の分岐点だと思っている。長崎には祖父祖母や親戚もいる。決めてやるぞという気持ちを前面に出してプレーする」。負けず嫌いの28歳は、生まれた長崎の地で飛躍を誓っている。

◎「守備は激しく全力で」 松本

 長崎ヴェルカが掲げる「見ていてワクワクするバスケット」に欠かせないのが、競技用語で「2番、3番」「ウイング」と呼ばれるポジション。激しい守備でターンオーバーを狙い、チャンスと見るや速攻で先頭を走る。豊富な運動量が大前提だが、チームには若手から中堅まで、それをこなせる選手がそろっている。
 3戦全勝だった19~23日の天皇杯全日本選手権2次ラウンドで、先発に名を連ねたのはガードの松本健児リオンと高比良寛治。B2経験者の2人は毎試合20分以上コートに立ち、激しい守備、果敢なドライブで何度も得点機を演出するなど、スピードとフィジカルの強さを証明した。
 身長183センチの松本は今年1月、チームの契約第1号で加入した選手。安定感のあるプレーが持ち味で「守備は調子の良しあしがない。常に100パーセントの力を出したい」と気合十分だ。
 3人の大卒ルーキーの成長もチームの躍進に欠かせない。その中でシーズン開幕前から存在感を示しているのが、身長181センチのガード、ディクソンJrタリキ。攻守両面で思い切りが良く、流れを変えるプレーができる。注目は松本、高比良と組む“スリーガード”。守備で前線の圧力を高めて、試合のテンポを一気に加速させる。
 身長184センチでフォワードの榎田拓真は延岡学園高(宮崎)、近大でいずれも主将を務め、チームを高校3年時にウインターカップ8強、大学4年時に全日本大学選手権(インカレ)5位に導いた。状況判断に優れるリーダー候補は、地元鹿児島での開幕戦を「両親も祖父母も見に来る。元気よく持ち味を出したい」と楽しみにしている。
 「シュートの確率や打った本数にもこだわりたい」と意気込んでいるのは身長192センチのフォワード松井智哉。自慢のシュート力に加え、夏場は「ガードの役割にも対応できるように」とパスの基礎練習などにも力を入れた。すべてに積極的な先輩たちに刺激を受けながら、一歩一歩成長の階段を上がっている。

(左から)松本、タリキ、榎田、松井

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