「表現に不十分な点、おわび」 滋賀県警本部長、西山さん犯人視文書を謝罪

滋賀県議会の本会議で西山さんに対する不適切な表現を謝罪し、頭を下げる県警の滝澤本部長(2021年9月28日午前10時37分、大津市・県議会議場)

 滋賀県東近江市の湖東記念病院での患者死亡を巡る再審で無罪が確定した元看護助手の西山美香さん(41)=彦根市=が国と滋賀県に計約4300万円を求めた国家賠償請求訴訟を巡り、県側の訴訟実務を担う滋賀県警が無罪判決を否定する内容の準備書面を提出した問題で、県警の滝澤依子本部長は28日、県議会本会議で「書面の表現に不十分な点があり、西山さんをはじめ関係者の心情を害したことについて、県警を代表しておわび申し上げる」と謝罪し、訂正する方針を示した。

 滝澤本部長は一般質問で同問題について見解を問われた。県警が大津地裁に提出した準備書面に「患者を心肺停止状態に陥らせたのは原告」などと、西山さんを犯人視する記述をしたことについて「再審で無罪判決が確定したことを県警として重く受けて止めている」などとした一方、「訴訟で原告が主張する内容に、県警の認識と必ずしも一致しない部分もあり、県警として必要な主張を行う」とも述べた。

 準備書面を巡っては、三日月大造県知事が17日、「西山さんを深く傷つける表現があり、極めて不適切」と謝罪し、書面を修正するよう県警と県の担当者に指示していた。県警は現在、犯人視記述のほか複数の主張の修正作業を進めている一方、再審で認定された県警の捜査の不当性については反論を維持する方針。

 大津地裁は昨年3月の再審判決で、同病院の患者の死亡について、自然死などで事件性がなかった可能性が高いと判断。西山さんの「自白」の信用性や任意性を否定し、取り調べ刑事への恋愛感情を利用して自白を誘導するなどしたとして県警の捜査の不当性を認めた。

 国賠訴訟は、西山さんが昨年12月、殺人容疑で逮捕した県警や検察の違法な捜査などで精神的、財産的損害を受けたとして提訴。県警の「自白の誘導」や、西山さんに有利な捜査報告書を検察に送らなかった点などを追及し、冤罪(えんざい)を招いた当時の捜査の実態などを明らかにする方針。

【資料写真】滋賀県警の滝澤依子本部長

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