オリは山本&宮城が「不安材料でもある」 混戦パ・リーグの行方を専門家が占う

オリックスの山本由伸(左)と宮城大弥【写真:荒川祐史】

首位ロッテの強みはリリーフ陣「先発が5~6回まで抑えれば」

混戦のパ・リーグは、ロッテがやや抜け出し、27日現在で2位のオリックスに3ゲーム差をつけている。5.5ゲーム差の3位に楽天が続き、日本シリーズ4連覇中の4位ソフトバンクも、ようやく戦力が整ってきた。残り試合は20試合ほど。現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で21年間捕手として活躍した野球評論家の野口寿浩氏が、各チームの強み、不安、Vへの起爆剤を探った。

ロッテは主力のレオネス・マーティン外野手が、19日の日本ハム戦で右足甲を骨折し戦線離脱。どうなることかと危ぶまれたが、右翼手として角中勝也外野手、山口航輝外野手、DHとして佐藤都志也捕手が出場機会を増やし、それほど穴を感じさせない。野口氏は「もともと外野手は飽和状態でしたから、マーティンと同じレベルの選手はいなくても、ある程度穴を埋めることはできる。選手層の厚さという強みを実証した格好です」と指摘する。

ロッテの強みはもう1つある。「強力なリリーフ陣です。現状では先発投手が5~6回まで抑えれば、後はなんとかなるくらいの安定感がある」と野口氏。首痛で戦列を離れていた唐川侑己投手が今月24日に1軍復帰し、6月にトレードで加入した国吉佑樹投手、今季好調の佐々木千隼投手、守護神の益田直也投手を合わせた4人は、全員防御率1点台をマークしている。

1996年以来、25年ぶりのリーグ優勝を目指すオリックスはどうか。強みは山本由伸投手と宮城大弥投手の先発2枚看板。山本は破竹の12連勝中だが、20歳の宮城は8月21日の西武戦で11勝目を挙げたのを最後に、白星から遠ざかっている。「山本と宮城の圧倒的存在感は強みであると同時に、不安材料でもある。今後、2人は登板間隔を詰める可能性があり、どこまで対応できるか。万が一、この2人がケガをするようなことがあれば、優勝の可能性は非常に低くなります」と野口氏は言う。

楽天のラッキーボーイは山崎剛「勢いのある選手に乗っかり上昇するケースも」

追う立場のオリックスにとって起爆剤となりそうなのは、左太もも裏を痛めて登録を抹消されていた吉田正尚外野手の復帰だ。26日の楽天戦で代打出場し、今後はスタメン復帰が見込まれる。野口氏は「吉田正が本来の3番で実力を発揮すれば、好調の4番・杉本(裕太郎外野手)にいい形でつながる。吉田正がいない間、代役の3番として健闘した紅林(弘太郎内野手)が5~6番で活躍すれば、なおさら得点力が上がるでしょう」と見ている。

やや首位が遠のいた楽天は「一昨年、昨年に比べると、劣勢でも粘り強さを発揮できるようになってきた。特にリーグトップの打点を稼いでいる島内(宏明外野手)の勝負強さは頼もしい」と野口氏。また、ここにきて1番打者としてスタメン出場を増やしているのが4年目の山崎剛内野手である。守備も中堅、遊撃、二塁などを器用にこなす。「こういう勢いのある選手にチームが乗っかり、上昇するケースがありますからね」と野口氏も注目している。

不安材料はなんといっても、右太ももを痛めて8月26日に抹消された守護神・松井裕樹投手の不在。野口氏は「酒居(知史投手)や宋家豪(投手)が代役を務めていますが、2人ともプレッシャーのせいか、中継ぎの時ほどの投球はできていないのが現状です」と分析する。

ソフトバンクは27日現在で首位に7ゲーム差をつけられ、リーグ連覇は風前の灯。しかし、故障で不在だった守護神の森唯斗投手、セットアッパーのリバン・モイネロ投手が復帰し、リリーフ陣は固まった。昨年、9月末の時点で2位・ロッテにゲーム差なしと肉薄されながら、10月に22勝4敗1分(月間勝率.846)のラストスパートをかけ突き放したことは記憶に鮮明だ。野口氏は「昨年10月のイメージが強烈過ぎて、優勝候補から除外する気になれない。優勝争いをかき回す存在としても侮れません」と言う。

まれにみる混戦でファンを楽しませてきた今季のパ・リーグ。最後の最後にも波乱が用意されているのだろうか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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