国民意識の改善はまだだが、新しい変化が見え始めた ~第9回日韓共同世論調査結果を公表します~

 言論NPOは9月28日、9回目となる日韓共同世論調査結果を公表しました。日韓の国民意識は、2018年の韓国での徴用工に対する判決や2019年の日本政府による輸出制限などを受け、日本では2019年から、韓国では2020年の調査で激しく国民感情が悪化していましたが、一年が経った今もその影響を払しょくできない状況にあります。

 そうした中、今回の調査では、日韓の国民意識は冷え込んだままであるものの、米中対立下の中での韓国側の意識の変化や、ポップカルチャー等の文化交流等が国民間のつながりを深める新しい潮流が広がり始めていることも、明らかになりました。

 しかし、両国民の相手国政府への不信感も大きく、今回の調査結果は、両国政府に関係改善を突き付けるものとなりました。

 この調査は、言論NPOと韓国の東アジア研究院(East Asia Institute, EAI)が2013年から9年間継続して毎年共同で実施しているものです。
 日本の18歳以上の男女を対象に8月21日から9月12日まで訪問留置回収法により実施され、有効回収標本数は1000。
 韓国側の世論調査は、韓国の18歳以上の男女を対象に8月26日から9月11日まで調査員による対面式聴取法により実施され、有効回収標本数は1006です。

 今回の調査結果のポイントは以下の通りとなります。さらなる詳細はこちらからご覧ください。

  • 日韓両国民の意識は昨年よりも落ち着いたが、韓国人は63.2%と6割は、日本に「良くない印象」を持ち、日本人も48.8%が韓国にマイナス印象を持ち続けている。現状の日韓関係について「良い」と判断する韓国人はわずか1.3%、日本人で8.1%しか存在しない。
  • 日本人で、来年3月の選挙で誕生する韓国の大統領に日韓関係の改善を期待するのはわずか4.6%、日本の新首相に期待する人は1.6%しかない。これに対して、韓国人は、自国の新大統領に改善を期待するのは22.4%、日本の新首相に期待するのは18.1%と、日本人よりも期待が高いが、それぞれ半数程度は新大統領、新首相になってもこの状況が「変わらない」と見ている。
  • 韓国人の79.1%と8割近くが日韓関係は重要だと考えている。日本人は韓国の現政権の対応への根深い不信から、日韓関係が重要との見方が減少している。ただ、米中対立の深刻化を受けて、韓国と日本が米国との同盟関係や民主主義の点で重要性を認める傾向が強まっている。
  • 韓国人の間に中国への脅威感が増加。朝鮮半島の不安定化もあり、日米韓の軍事協力の強化を求める声が高まるほか、半数の韓国人がQuad(クワッド)への韓国の参加を支持しています。
  • コロナ過で国民間の交流ができない中でも、若い世代に広がる韓国のKポップの人気などから文化面での交流が政府間対立とは別に両国の好感度を上昇させています。若者層に生活の視点から相手国を感じる新しい潮流ができ始めています。

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