切断絵巻の1点、富山に 重文の「佐竹本三十六歌仙絵」源重之 秋水美術館で公開

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源重之の肖像や歌をしたためた「佐竹本三十六歌仙絵」の断簡(東京美術青年会出版の三十六歌仙・佐竹本より)

  リードケミカル4億円で購入 

 1919(大正8)年の「絵巻切断事件」で散り散りになった「佐竹本三十六歌仙絵」(鎌倉時代)の一つで、国の重要文化財に指定されている源重之の断簡1点を、製薬会社のリードケミカル(富山市)が取得したことが28日分かった。購入金額は公表されていないが、約4億円とみられる。当時分割された全37点のうち、富山県内の所蔵品はこの1点のみで、同社が運営する富山市の秋水美術館が一般公開する方向で準備を進めている。

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 三十六歌仙絵は平安時代の歌人、藤原公任(きんとう)が選んだ飛鳥から平安時代の優れた歌詠み36人の肖像に和歌を添えた絵巻物。鎌倉時代以降に数多く作られ、その中でも旧秋田藩主の佐竹家が所有していた「佐竹本」は最高峰の名品と言われる。

 もともとは2巻の絵巻物だったが、あまりにも高額だったことから一歌仙ごとに分割された。

 リードケミカルが購入した「紙本著色 三十六歌仙切(重之)佐竹家伝来」は、平安中期の歌人源重之の肖像と「よしのやま みねのしら雪 いつきえて けさはかすみのたちかはるらん」の歌がしたためられている。大阪府などの複数の個人の手を渡り、同社が今年、京都府の個人から取得したとみられる。

 リードケミカルは取材に対し「あらためて発表したい」(広報担当者)として購入時期や金額を公表していない。

 三十六歌仙には、万葉歌人で越中国司として赴任した大伴家持も含まれる。高岡市万葉歴史館の坂本信幸館長は佐竹本の断簡について「大変高価で、実物を目にする機会がほとんどない名品。売られること自体珍しく、富山で所蔵されることは喜ばしい」と評価した。同館は佐竹本の家持の絵の複製を所蔵しており「同じ時期に飾るなどし、歌ゆかりの富山を発信できればうれしい」と語った。