<社説>緊急宣言解除決定 油断せず基本対策徹底を

 政府は沖縄県をはじめ19都道府県に発令中の新型コロナウイルス緊急事態宣言と、8県のまん延防止等重点措置について30日の期限で全面解除を決定した。 沖縄の新規感染者数の減少傾向は続いているとはいえ、直近1週間の人口10万人当たり新規感染者は43.43人で全国ワーストは依然続いている。まん延防止等重点措置に移行し、一度クッションを置くべきではなかったか。

 油断は禁物だ。沖縄県は政府の宣言解除後も全県で飲食店の営業時間短縮や酒類提供の時間制限など県独自の措置を設ける。早くも「第6波」を警戒する声が出ている。マスク着用を続け、3密を避ける基本的な対策を続ける必要がある。緊急事態宣言が長期に及んだ反省を踏まえ、この時期に医療体制の立て直しも急務だ。

 感染状況を示す県の警戒レベル判断指標は、療養者数と新規感染者数は最も深刻な第4段階(感染蔓延(まんえん)期)である。重症以外も含めたコロナ病床の占有率は第3段階のままである。

 政府分科会のメンバーである医療の専門家は「医療の逼(ひっ)迫(ぱく)状況は改善されてきているがまだ完全ではない」と全面的な対策の緩和に慎重な姿勢をみせる。

 慎重意見がある中で、政府の緊急事態宣言の全面解除を巡り不可解な点がある。愛知県の大村秀章知事が記者会見で、緊急事態宣言解除後の対応に関し「まん延防止等重点措置への移行を県から要請するのはやめてほしいと国に言われた」と明かした。

 新型コロナ対応の改正特別措置法付帯決議は、重点措置の適用を都道府県から要請された場合、最大限尊重し、速やかに検討するよう政府に求めている。科学的な根拠を示さず、政府が都道府県に圧力をかけるかのようなやり方はおかしい。

 そもそも、政府のコロナ対応のまずさが指摘され、第5波では医療逼迫を招き、自宅療養中に亡くなる人が各地で相次いだ。

 厚生労働省の集計によると、新型コロナウイルス感染者のうち自宅で死亡した人は、今年1~9月に全国で122人に上った。

 これ以上、自宅療養者を出さないような対策を求めたい。具体的には、病床数の上積みに加え、既存の病院に代わって患者の治療ができる臨時の医療施設や、酸素ステーションなどの入院待機施設の整備などが挙げられる。人材確保も欠かせない。

 一方、県は今年5月の緊急事態宣言発令から4カ月ぶりの解除となる。この間、観光業や飲食業など幅広い業界に深刻な影響を及ぼした。全国知事会は先月、緊急提言で4兆円の予備費を活用した臨時交付金のさらなる増額と速やかな交付を求めた。緊急事態宣言解除と同時に、政府は都道府県に対する財政支援を急ぐべきだ。

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