【コラム・天風録】安全の検知器

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 40代男性の車が警官に止められる。身に覚えはない。呼気検査を拒むと病院へ連れて行かれた。驚くことに、血中から許容量の2倍を超すアルコールが検出され…▲米国で2年前、本当にあった出来事だ。男性は「絶対に飲んでいない」と飲酒を否定した。その後の調べで、「ビール自動醸造症候群」と判明する。胃腸にある酵母が食べた物の糖分を分解してアルコールを生む、まれな症例だった。一番目を丸くしたのは本人だったに違いない▲この2人も「飲んでいない」と説明していた。山陽新幹線の運転士と車掌である。おととい、朝の呼気検査でアルコールが検知され、乗るはずだったこだま号は新岩国―広島間で運休に▲「犯人」はコロナ禍の必需品、アルコール消毒液の可能性がある。近年の検知器はとても敏感で、直前に口に入れた酒種あんパンにも反応すると聞く。となれば、消毒液を見逃すはずもない。判定ミスを防ぐため、メーカーも注意を呼び掛けている▲トラブルに巻き込まれた乗客にとっては、いい迷惑だったはずだ。もっとも「安全第一」の姿勢と考えれば、厳しいチェックも仕方がない。「空振り」で顔を赤らめる分には、誰も責めやしない。