工藤監督の「チャンスある」が現実に? 上昇気配の鷹に固まり始めた「勝利の形」

ソフトバンク・工藤公康監督【写真:藤浦一都】

2019年以来、勝利していなかった西武・高橋を打ち崩して2年ぶりに勝利

■ソフトバンク 5ー2 西武(28日・PayPayドーム)

ソフトバンクは28日、本拠地・PayPayドームで西武に5-2と快勝した。3連勝で首位・ロッテとは6ゲーム差、3位・楽天とは0.5ゲーム差に接近。工藤公康監督がこれまで語ってきた「まだ全然逆転のチャンスがある」の言葉が、にわかに現実味を帯びてくるかもしれない。

これまで苦しめられてきた天敵を攻略した。2回に2019年以来、勝ちのなかった西武・高橋からデスパイネが先制2ラン。さらに甲斐も11号2ランで続いて、一気に4点を奪った。5回には再びデスパイネが右前適時打を放って5点目。このリードを先発の千賀が7回途中2失点の好投で守ると、終盤は岩嵜、モイネロ、森の「勝利の方程式」で逃げ切った。

9月19日の楽天に敗れ、借金が今季ワーストの4となっていたソフトバンク。だが、そこから2度の3連勝を飾り、直近7試合は6勝1敗に。一気に借金を減らし、再び貯金1とした。戦いぶりも元来、得意とする先行逃げ切りの形が増え、不調を脱しつつある。

その要因の1つはデスパイネの復調だろう。五輪予選や故障での離脱を繰り返してきた今季は一時は打率も2割2分を切るほどの惨状だった。だが、9月15日のロッテ戦から10試合連続安打。それまで2本しかなかった本塁打も、この10試合で3本と量産している。柳田、栗原の後ろを打つデスパイネに当たりが出てきたことで、得点力もアップ。8月は1試合平均2.8点だった得点は、9月は4.4点となっている。

「信頼している彼らがいい抑えをしてくれたのはチームとしては、プラスに働く」

そして、なかなか揃わなかった「勝利の方程式」がようやく固まったことも大きい。故障などで離脱のあった岩嵜、モイネロ、森の3人がようやく集結。3人の復帰当初はまだ不安も拭えなかったが、やはりこの3人がいるとチームは落ち着くもの。この日はエースが抑え、3人が締めるという理想の戦いぶりが形となった。

後ろが固まれば、それが先発投手陣にも相乗効果をもたらすもの。工藤監督も「信頼している彼らがいい抑えをしてくれたのはチームとしては、プラスに働くんじゃないかと思います。先発投手も安心して、そこまでいけば勝てるんだという思いで投げてくれる」と語る。1イニングでも長く、から、いけるところまで全力で、と先発陣の思考にも好影響を与えてくれる。

工藤監督は借金が嵩んだ際でも「まだまだ全然チャンスはあると思っている」と強気の姿勢を崩さなかった。ここに来て、助っ人の復調、勝利の方程式の安定で、チームは上昇気配を漂わせ始めた。まだ、ロッテとは6ゲーム差と厳しい状況には変わりはない。それでも、この工藤監督の言葉が現実のものになる可能性が、にわかに膨らんできている。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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