高橋惠子 芸能活動51年でミュージカルデビュー!「初めてのボイストレーニングは目からウロコ」

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昨年、芸能活動50周年を迎えた高橋惠子がミュージカルデビューを果たす。

Musical「HOPE」は、著名作家の遺稿の所有権をめぐって、長きにわたりイスラエルで実際に繰り広げられた裁判をモチーフに描かれた法廷劇。2017年に韓国芸術総合学校の卒業制作として誕生し、第4回韓国ミュージカルアワードにて大賞、脚本賞など多くの賞を受賞するなど、高い評価を得た作品だ。

そんな作品が初めて日本版として上演されることになり、高橋の主演が決定。さらに、演出をミュージカルのほか、映像作品でも活躍する俳優・新納慎也が手がけることも話題に。

大きな節目を超えた高橋が挑む新ジャンルへの思い、そして、主人公が原稿へ執着したように、高橋自身が手放せないものなどを尋ねた。

“歌うこと”は人間の本能的な行動だと思う

――高橋さんは意外にも、今回がミュージカル初挑戦なのだとか?

そうなんです。「マイ・フェア・レディ」というミュージカルに、ヒギンズ教授のお母さん役で出演したことはありましたが、そのときは「歌わない役だから」とお聞きして、お受けして。それが、今回は“まさかの”本格的なミュージカルに出演し、歌うことになってしまいました。

――出演するにあたって、どのようなことから準備を始めましたか?

「ボイストレーニングをしなきゃ」と思い立ち、知人に紹介してもらって初めて行ってきたんですけど、実際に声を出したのは10分程度。あとはすべて発声の仕方や息の吸い方の指導で、目からウロコでした。教えていただいた発声だと声は枯れないし、喉に負担をかけずに歌うことができて、なんてラクなんだろうと。お芝居で出す声と、歌で出す声がまったく違うということを、この年齢にして初めて知りました。

――歌うことに対し、どのような意識をもっていますか?

うちの母が「私はつらいとき、悲しいときも歌うことですべてを乗り越えてきた」と言っていたぐらい歌好きだったのですが、私自身も歌は好きです。鼻歌を歌うこともしょっちゅうあります。そういう意味でも“歌うこと”は、人間の本能的な行動で、誰にでもできるもの。今回、お客様の前で初めて歌を披露することで、自分の中の感情的な何かが解放されるのではないかと、楽しみにしています。

ふとしたときに思い出せる幸せな記憶が、人間にとってプラスになる

――この作品のことを知っていましたか?

知らなかったです。DVDで拝見したのですが、韓国の学生さんの卒業制作によって生まれた作品なのだとか。あちらでは、国が文化を助成するシステムが充実していて、だからこそ素晴らしい作品がたくさん誕生しているのだなと、韓国ミュージカルのすごさを改めて実感させられました。

――脚本を読んだ感想を聞かせてください。

まずは、ホープが守る原稿をK(永田崇人と小林亮太のWキャスト)というキャラクターへ擬人化している表現がとってもユニークだなと感じました。

物語は、30年にわたって裁判を続け、それまで執着していた原稿を最終的に手放し、新たな一歩を踏み出す女性・ホープの姿を描いているのですが、“手放す”って今の時期、とても大事なことだと思うんです。

永田崇人(右)のKは男らしく凛々しいいイメージ

コロナでまだまだ先が見えない不安な時期ですけど、人間にはおそらく計り知れない力があるはずなのよね。この作品と出合ったことで、私も今までやったことのないジャンルに挑戦しようと思えましたし、自分の中に眠っているもの、まだ発揮していないものがあるはずだからと自分に言い聞かせて、稽古に臨んでいます。

小林亮太(右)のKはソフトな包容力が光る

――ホープは、国民的作家が遺した原稿の所有者は自分だと主張する老女という設定ですが、彼女からはどのような印象を受けましたか?

まわりから「狂ってる」と言われるぐらい、原稿への執着をもっているけれど、それは母親から得られなかったものを愛情や憎しみも含めて、原稿を受け継ぐことで解消しようとしたのかなって。裁判後のホープは、こだわりを捨てた新たな自分として生きていこうと決意し、その姿をはたから見ると年齢的には遅く感じるのかもしれませんが、私は遅いとはまったく思わないんですね。

一般的に、「もうこんな年齢だからこういうふうにしか生きられない」といろいろなことをあきらめる方もいらっしゃると思うんですけど、せっかく生まれてきたのだから、「楽しい」と思える時間をたくさんもったほうがいいと私は思うんですよ。この作品をご覧になった方が、そう思えるようなきっかけになるとうれしいです。

――そんなホープに共感する部分はありますか?

まわりからどう思われようが、大事なものを守ろうとする強さには共感します。強い女性ですよね。

――ホープが原稿に執着したように、高橋さん自身が執着するもの、手放したくないものはありますか?

ものに対してはあまり執着しないほうですが、手放せないものは…記憶ですね。私の母はすでに他界してしまって、もう会うことはできないけれど、故郷の北海道で幼いころに手をつないで歩いたときの、母の手の感触を思い出すとどこか安心するんです。

ふとしたときに思い出す幸せな記憶があることが、自分にとってはプラスになっているので、そういうものがまったくない人生だったらどうなっていたんだろうって…。ものではないから、なくすこともないですし、たまに取り出しては思い出すぐらいですけど、これって意外と大事なことなのかもしれません。

デビュー当時は、3年やってダメだったら女優をやめようと思っていた

――昨年、デビュー50周年を迎えましたが、振り返ってみてどのような50年でしたか?

とりあえず3年やって、うまくいかなかったら普通の生活に戻ろうと思って始めたことでしたから、こんなに長く続けるとは思ってもいませんでした。デビュー当時は女優業に懸けてみようと思っていたけれど、途中で結婚したり、子育てしたり、他のことに費やす時間も増えてきて。

振り返ると、作品に恵まれ、人に恵まれ、運に恵まれ、目に見えない何かに突き動かされながらここまで来たような気がします。一つの節目を超え、これからあと何年できるかわかりませんが、今は自分の持っている力をもう一度そこに注ぎたいという思いが強いです。

――その50年間を支えたものは何だったと思いますか?

少し前に出演した舞台でつくづく感じたことですが、やはりお客様からいただく力、劇場へ足を運んでいただき、喜んでくださったり、笑ったり泣いたりしてくださる姿からいただくものって、私たち演者にとってとてつもない力になるんです。

そして、家族、共演者、スタッフ…。結局、人なんですよね。お客様も人だし、一緒にお仕事をするのも、疲れて帰ったときに出迎えてくれるのも人、そんな人たちの存在が私の原動力です。

――高橋さんがこの「HOPE」でミュージカルデビューするのと同じく、演出を手掛ける新納さんにとっても演出家デビューとなる記念すべき作品です。新納さんにはどのようなことを期待しますか?

初めての演出作品にこの「HOPE」を選び、さらには翻訳も手掛けられるということは、それだけ思い入れも強いと思うんですね。そして、私にとっても初めてのミュージカル。初めての人だからこそ発揮できるものがあるでしょうし、どんな作品を作り上げてくださるのかとても楽しみです。

――公演を楽しみにしている皆さんへメッセージをお願いします。

「この指とまれ」じゃないですけど、この作品にふさわしいキャストが選ばれ、集まっているんだと自分に言い聞かせています。本番へ向け、私は歌のほうと、ホープという女性の人間性を深めるために一生懸命取りむだけ。とにかく脚本が素晴らしいですし、骨組みがとてもしっかりしているので、きっと楽しんでいただける作品になるのではないでしょうか。一人でも多くの方に、ご覧いただければと思います。

最新情報は、Musical「HOPE」公式サイトにて。

撮影:YURIE PEPE