ラジオは昔も今も

 朝の散歩にポケットラジオは欠かせないという。ある日、好きなカーペンターズの曲が流れてきた-と、27日のオピニオン欄で諫早市の江川謙吾さん(68)が書かれていた。読んでいて、その曲「イエスタデイ・ワンス・モア」が頭で響き始める▲投書の話は旧懐へと続く。〈学生時代、アルバイト代をため食費を節約して〉、カーペンターズのコンサートを見に行った。〈感動したのを忘れはしない〉▲メロディーが聞こえると、記憶というアルバムの過去のページがすぐさま開く。往時の名曲が不意に流れることもあるラジオは、時として人を懐かしい昔日へと連れ戻す▲夕飯の支度の時間になると、親が好んだラジオ番組が台所でよく流れていた。高校生の頃、こっそり深夜放送に聴き入った。昔のそんな情景は、きっと今の若い人には無縁だろう▲…と思っていたら、紙面で「若者にラジオ人気が高まる」という記事を見つけた。ここ2年ほど、スマートフォンでラジオが聞けるサービスを利用する若い層が増えているらしい▲話し手、パーソナリティーとの距離が近く感じられ、普段は耳にしない曲に聞きほれる。ラジオの持ち味は今昔、そう変わらないのかもしれない。だとしたら、アルバムのページをたちまち開かせる「栞(しおり)」としても、その存在感は変わるまい。(徹)

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