<解説> 5カ年計画に沿った極超音速ミサイル開発 「火星」系列の試射は17年のICBM以来、4年ぶり

9月28日、朝鮮の国防科学院が新たに開発した極超音速ミサイル「火星-8」型の試射が行われた。

極超音速ミサイル「火星8」型の試射が行われた。(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

「火星」系列の戦略兵器が打ち上げられたのは2017年11月29日、「火星-15」型の試射に成功して以来の出来事だ。これは今年1月に開かれた朝鮮労働党第8回大会で決定された「国防科学発展および兵器システム開発5カ年計画」の初年度の重点課題が着実に遂行されていることを示している。

 「戦略兵器5大課題」の一つ

 4年前、朝鮮はアメリカ本土全域を射程に置くICBM「火星-15」型の試射を成功させ国家核武力の完成を宣言した。ところが、朝鮮の自衛的国防力強化のための事業で達成された成果は、ここにとどまらなかった。

2017年11月29日、ICBM「火星-15」型試射の成功により国家核武力の完成が宣言された。(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

その成果は、昨年10月の労働党創建75周年慶祝閲兵式と今年1月の党大会記念閲兵式で確認することができた。

「火星-15」型よりも巨大な新型ロケットが11軸自走発射台車に装着されて公開された。党大会報告によると、それは「強力な核弾頭と弾頭操縦能力が強化された全地球圏打撃ロケット」だ。 2019年10月に試射が行われたSLBM「北極星-3」型より直径が大きい「北極星-4」型、弾頭部分がより大きくなった「北極星-5」型も閲兵式に相次いで登場した。

閲兵式には「火星-15」型よりも巨大なICBMが登場した。(朝鮮中央通信=朝鮮通信)
SLBM「北極星-4」型(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

党第8回大会では、国防工業をより強化発展させるための中核的構想と戦略的課題が言及された。

ここで戦略兵器部門に該当するのは△超大型核弾頭の生産△1万5,000㎞射程内の打撃命中率向上△極超音速滑空飛行戦闘部の開発導入△水中および地上の固体エンジンICBMの開発△原子力潜水艦と水中発射核戦略兵器の保有などである。

今回「火星-8」型の試射を報道した朝鮮中央通信は「党大会が提示した国防科学発展および兵器システム開発5カ年計画の戦略兵器部門における最優先5大課題に属する極超音速ミサイルの研究開発は順次に、科学的かつ信頼できる開発プロセスに沿って進められてきた」と明かしている。

米国が招いた開発競争

 核弾頭も搭載できる極超音速兵器は音が伝わる速さ(マッハ)の少なくとも5倍以上の速度を出して、地球のどこでも1時間以内に打撃できる武器だ。弾道ミサイルに搭載される極超音速滑空体(C-HGB、Common Hypersonic Glide Body)の場合、発射後途中で分離され、低い高度で滑空しながら目標を打撃することができる。レーダーによる捕捉と迎撃が非常に難しいとされる。

今、世界の軍事大国は極超音速兵器の開発競争を繰り広げている。

米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)は9月27日(現地時間)に声明を発表し、先週に空軍と実施した「極超音速空気吸入兵器システム(HAWC)」の試験に成功したと発表した。米陸軍と海軍は昨年3月19日、ハワイのミサイル施設で極超音速滑空体の試射も行っている。

中国は極超音速弾道ミサイル「東風-17」を建国70周年の閲兵式で公開し、ロシアは極超音速滑空体「アバンガルド(Avangard)」を実戦配置した。

核弾頭を搭載できる次世代戦略兵器システムの開発競争を招いたのは米国だ。極超音速兵器と関連して、プーチン大統領は、米国が2002年に「弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約」から脱退したので、ロシアは新型ミサイルを開発したと述べたことがある。

世界最大の核保有国である米国は、2018年に発表した「核態勢見直し(NDR:Nuclear Posture Review)」報告書で自国が潜在的敵国からますます露骨な核の脅威を受けており、これまでよりも多様で進化した核の脅威環境に直面しているという論理を展開し、ここで、米国が極超音速兵器の開発を急がなければならないと強調した。

その後、米国防長官は、米国が数年内にインド・太平洋地域に極超音速兵器を配置すると公言していた。

目的は自国を守ること

 米国が核武力増強を正当化する報告書を発表した2018年は、シンガポールで史上初の朝米首脳会談が開かれた年だ。朝鮮は対話の前提となる信頼醸成のために核実験とICBM試射の中止、核実験場の廃棄など先制的非核化措置を講じたが、米国はそれに相応する措置をとらなかった。

朝鮮労働党第8回大会の報告は、総括期間に朝鮮の党と政府が地域の緊張激化を防ぐために善意の努力と最大の忍耐を発揮したが、米国の朝鮮敵視政策は弱まるどころか、より深刻になったとしながら、自国を狙った敵の先端兵器が増強されている事実を知りながら、自らの力を不断に蓄えないのであれば、これほど危険なことはないと断言している。

極超音速ミサイル「火星-8」型を含む朝鮮の戦略および戦術兵器の開発は、戦争抑止力を確保し、自国を守ることに目的がある。

軍備増強を加速化させる敵対勢力が、ここに二重基準を適用して「脅威」、「挑発」と罵倒し、「交渉のための瀬戸際戦術」などと国際世論を欺いても、すでに決められた5カ年計画とそれに伴う工程表は変更されない。

朝鮮は党第8回大会において、敵対勢力の軍備増強によって国際的な力のバランスが破壊されている現状で、朝鮮半島で戦争の危機と緩和、対話と緊張の悪循環が完全に断ち切られるまで軍事的力を継続的に強化していく確固たる意志を表明している。

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