女性管理職比率が高い企業はなぜ評価できるのか、投資パフォーマンスで比較

近年、自然環境の保全(Environmental Conservation)、上場企業の社会的責任(Social Responsibility)、健全な企業統治(Corporate Governance)を切り口として、企業活動の適正化に着目する、ESG投資への関心が高まっています。

また、国際連合が提示している17項目の「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」が、ESGを意識した企業活動等により実現が期待される目標、と捉えられるようになりました。

今回は、SDGsのうち、ジェンダー平等に関連して、企業における管理職のうち、女性がどれだけいるかを示す、女性管理職比率に注目したいと思います。


女性管理職比率からわかること

企業の管理職に占める女性の割合に注目するのは、女性管理職の割合が多いほど、当該企業でより多くの女性が働いている可能性が高いと推論できるからです。新卒者を一時期に採用し、企業内での研修で人材を育て上げていく中で、管理職にふさわしい人材が醸成されるというキャリアパスを前提とすると、女性管理職の割合が多い企業は、何らかの理由で、より多くの女性従業員を採用している可能性が高いと推論できます。

また、女性管理職比率が高い企業は、女性従業員が長年、勤務し続けられる理由(女性の就労継続をサポートする社内制度が充実しているとか、商品開発や販売等の面で、女性が活躍しやすい業種であるとか)があるはずです。

このように考えると、女性管理職比率に注目することは、すべての女性のエンパワーメントを目指す「ジェンダー平等」の観点から、評価に値する企業を探し出すうえで、最も簡便な方法であると思われます。

女性管理職比率が高い銘柄の投資パフォーマンス

東洋経済新報社「CSR企業総覧(雇用・人材活用編)」2021年版の「女性管理職の比率が高い企業ランキング」に掲載された上位100社の内、女性管理職比率の高い上場企業76社で組成したポートフォリオは、2016年初以降、TOPIXよりも良好なパフォーマンスを示しました。

また、その中に含まれる、いちよし経済研究所が継続フォローしているユニバース銘柄(22社)で組成したポートフォリオは、上述76社で組成したポートフォリオよりも良好なパフォーマンスを示しました。

女性管理職比率が高い銘柄投資パフォーマンスが良好である背景として、投資家が、それらの企業は好業績を挙げると期待していることが考えられます。

独立行政法人経済社会研究所が2014年3月に公表したディスカッション・ペーパー「上場企業における女性活用状況と企業業績との関係」では、中堅企業(正社員500~1,000人)や中途採用が多い企業、あるいは新卒者の定着率が高い企業において、女性管理職比率の高さが利益率にプラスの影響を与えていると分析しています。このような企業は、ジェンダー平等の実現というSDGsの観点からも高く評価されるでしょう。

時価総額を基準とする中小型株のリサーチに特化したいちよし経済研究所のユニバース銘柄が全て、上記の中堅企業に該当するわけではありません。しかし、女性管理職比率が高いユニバース銘柄で構成したポートフォリオの、TOPIXに対する良好なパフォーマンスは、上記の議論と符合する点も多く、女性管理職比率を投資判断材料の1つとして活用できる可能性があります。

<文:リサーチサポート室 河内宏文>

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