死霊館ユニバース8作目！
『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』は人気ホラー映画シリーズ、死霊館ユニバースの8作目です。
死霊館ユニバースは2013年にジェームズ・ワン監督が発表した『死霊館』を起点としています。“ユニバース”という言葉が示すように、１つの世界観の中で様々な怪奇事件が起こるわけです。公開順／お話の流れの時系列は以下の画像のとおり。
『死霊館』シリーズの恐ろしさは新たなレベルへ 最恐ホラーシリーズの舞台裏を描く特別映像が公開！
このシリーズのメイン・キャラクターが、心霊研究家と霊媒師のペアであるウォーレン夫妻。ウォーレン夫妻は実在の人物で、この2人が実際に関わった事件を元にしたのが『死霊館』、『死霊館 エンフィールド事件』、そして今回の『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』。それ以外の作品はウォーレン夫妻のエピソード等から着想を得たオリジナル・ストーリーです。
つまり死霊館ユニバースは実話を元にした話と、完全創作の物語が混在しています。ジェームズ・ワン自ら監督した作品と彼がプロデュースに回った作品がありますが、全作品ともジェームズ・ワンが関わっています。
ホラーのタイプとしては、心霊・オカルト系。殺人鬼やモンスターが暴れまわるお話ではありません。例えば、このシリーズの顔ともいうべきアナベルちゃん人形は『チャイルド・プレイ』（1988年）のチャッキーのように動き回ったりはしません。その人形がいるだけで様々な怪奇現象が起こるというものです。……と書くと動きのない静かなホラーと思われるかもしれませんが、とんでもない。たたみかけるようにポルターガイスト現象が襲いかかってきます。
『ソウ』『アクアマン』『アナベル』のジェームズ・ワン監督×『スパナチュ』脚本家によるモンスター映画
このへんはアクション映画を撮らせてもうまいジェームズ・ワンならではのセンス。とはいえ目をそむけるような残虐描写が少ないこともこのシリーズの魅力で、ビギナーにとっても見やすいホラーエンタテインメントです。だから多くのファンを獲得し、シリーズの累計興行成績は2100億円だそうです。まさにホラー映画界のマーベル・シネマティック・ユニバース、『ワイルド・スピード』シリーズ（2001年～）ですね。
ホラーであり探偵ものでもある（激怖）謎解きミステリー
さて今回の『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』。ここまで死霊館ユニバースのことを書いておきながら、実はこの作品、過去作をみていなくても全然楽しめる作品です（笑）。というのも今までの死霊館ユニバースとは、特に直接の前作である『死霊館』『死霊館 エンフィールド事件』とは、かなり異なるテイストだから。
『死霊館』というのはもちろん邦題。原題は『The Conjuring』といって、“魔力によって目の前に現れる”みたいな意味です。しかし、日本の配給会社さんが“館”とつけたことからもわかるように、お化け屋敷ものなのです。つまり呪われた家を舞台にウォーレン夫妻が悪魔と戦うわけですが、今回の『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』は“館”が主役ではない。悪魔に憑りつかれ殺人を犯した若者の無罪を証明するため、ウォーレン夫妻が事件の真相を追う、というものです。
『アナベル 死霊博物館』はホラー版『アベンジャーズ』だ!! 主役級の呪いアイテム続々！ 衝撃事件の映画化から始まったシリーズまとめ
このプロットからわかるとおり、本作は“探偵もの”なんですね。そして今までエクソシズム（悪魔祓い）やチャネリング（死者との交流）にその能力を使っていたウォーレン夫人ですが、この作品ではその能力が、より進化して過去を透視する的なパワーを見せます。そう、サイコメトラーというか“サイキック探偵”なのです。
そして夫婦が今回挑むのは悪魔ではなく、悪魔を利用しようとする真犯人なのです。だから今まで以上にアクティブな内容となっています。逆に言えば、今までの『死霊館』映画を好きだった人は少し戸惑うかもしれませんが、「さすが『死霊館』！」と思わせるホラー演出は健在。さらに映画の最初の見せ場である、なぜ若者に悪魔が取り憑いたか？ のくだりは『エクソシスト』（1973年）のリメイクといっても過言ではないし、若者が変異していく様子は『シャイニング』（1980年）です。名作ホラーへのオマージュと『死霊館』らしさをまぶした“謎解きミステリー”なのです。
そして死霊館ユニバースは新たなフェーズへ！
今回ジェームズ・ワンはプロデュースに回り、『ラ・ヨローナ 〜泣く女〜』のマイケル・チャベスがメガホンを取りました。恐らくジェームズ・ワンとしては『死霊館』に新風を吹き込みたかったのでしょう。お化け屋敷物としては前2作で完成されていたので、同じようなシチュエーションで第3弾を作ったところで“焼き直し”でしかない。さらにウォーレン夫妻というキャラをもっと立たせたいと考えたとしても不思議ではないです。
『ラ・ヨローナ ～泣く女～』監督が語る、「Jホラーからの影響」「人を怖がらせる方法」
そしてジェームズ・ワンは本作を監督せず、全く新しい、しかも18禁のヘビーなホラー『マリグナント 狂暴な悪夢』（2021年11月12日公開）を手がけました。ワン監督として若い才能に死霊館ユニバースを託し、また新しいチャレンジに乗り出したのです。そういう意味で、死霊館ユニバースは新たなフェーズに入り、その記念すべき第1作目が『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』なのです。
それにしても、悪魔に打ち勝つことも大変ですが、それ以上に、人々に悪魔の存在を証明することはもっと大変なのです。ウォーレン夫妻にとって最もハードな事件だったでしょうね。
文：杉山すぴ豊
『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』は2021年10月1日（金）より全国公開
レジェンド幽霊が本領発揮！『ラ・ヨローナ ～泣く女～』は有名怪談話をハイテンションで映画化したホラーエンタテインメント!!
