『宝の海をまもりたい 沖縄・辺野古』 沖縄の歴史や文化、現状紹介

 東日本大震災5日後の2011年3月16日、著者は海外の情報を得ていた夫に沖縄に避難するようにと言われ那覇に移住した。母がつぶやく。「沖縄のために何もしてこなかったのに、その沖縄に助けてもらうのね」。それから5年弱、著者は多くの沖縄の友を得て、沖縄の歴史と文化と現状を学び、沖縄への震災がれき搬入反対も闘う。

 沖縄に来て世界観が変わったという。本書は、県外の人が書いた沖縄紹介本でもある。まずは他県の人に読んでもらいたいし、沖縄についてヘイト本が氾濫している中で県内の若者にもぜひ読んでもらいたい。

 琉球併合から琉球史をひもといている。主なものを挙げると、沖縄戦(軍官民共生共死、「集団自決」、ひめゆり学徒隊、心的外傷後ストレス障害=PTSDなど)、銃剣とブルドーザーによる土地強奪、乞食行進、島ぐるみ闘争、復帰運動、コザ反米騒動、大田県政の「基地返還アクションプログラム」と「国際都市形成構想」、沖国大でのヘリ墜落、建白書、先の県知事選での菅原文太さんのスピーチまで多岐にわたる。

 よく短期間に調べ上げたものだと感心する。辺野古の問題も追求している。沖縄平和運動センターの山城博治議長が「信頼と友情があって、行動だけ一緒にできれば、個人の考えは違っていい」と語る粘り強い辺野古闘争の神髄も紹介。「本土が嫌だと言っているのだから、沖縄が受け入れるのは当たり前だろ。不毛な議論はやめようや」と言い切った沖縄での参院予算委員会の自民党議員の発言。辺野古沿岸部の埋立土砂総量は10トントラック約340万台分あるとも。

 「調べれば調べるほど新種が発見され、研究が追いつかない。日本でこんな場所は残っておらず、最後の砦(とりで)だ」(佐藤正典鹿児島大教授)、「大浦湾の生き物すべてが貴重な遺伝子資源であり、新薬開発の可能性の宝庫である」(比嘉辰雄氏)。

 埋め立てではなく「宝の海」を守ることで平和と豊かさの両方が得られる。著者は「沖縄は、日本列島のしっぽではありません。東アジアの臍(へそ)です。命の見本市のような、うつくしい島です」と締めくくる。「一読の価値あり」と勧めたい。

 (平良長政・元県議会議員)

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 本名・印鑰紀子。1971年、東京生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科卒。2011年に沖縄へ移住。著書に『心の目で見た大切なこと、ママに聞かせて』など。ハリー・オースティン・イーグルハート著『女神のこころ』など訳書も多数。

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