ホークス松田、刻んできた300本の“熱男弾” 奇跡のVへ「僕もその一員になりたい」

ソフトバンク・松田宣浩【写真:藤浦一都】

高々と舞い上がりテラスに着弾する松田らしい一発

■ソフトバンク 9ー0 西武(29日・PayPayドーム)

ソフトバンクの松田宣浩内野手が29日の西武戦(PayPayドーム)でプロ通算300号本塁打を達成した。史上44人目となる偉業を本拠地で成し遂げた熱男の本塁打ストーリーを振り返る。

最近はスタメンを外れる機会が増えてきた松田だが、この日は「5番・三塁」でスタメン出場。3回の第2打席で浜屋が投じた高めのストレートを振り抜くと打球は高々と上がり左中間のホームランテラスへ。記念の一打は一気に5点差にする貴重な2ランとなった。

「試合に出られたり出られなかったりするけど、出た時には『いつも以上にやったろか』という思いはあるんでね。ここまでしっかり積み重ねてきて、この先の本数がどれくらいかはわからないけど、300本は本当にうれしいです」

また、記念の一発も松田らしいテラス弾になったことについて「2015年に(テラスが)できてから、いかにしてそこに結びつけるかを練習している。ホームランはホームランですから。僕らしいなと思いますよ」と笑った。工藤公康監督も、試合の流れを大きく引き寄せるメモリアル弾を「ベンチのみんなが待ちに待ったホームラン。あれで一気に点差が広がってマルティネスにとってすごく勇気になったと思います」と称賛した。

シーズン3度のサヨナラ弾、鷹の祭典3試合連続など

松田のプロ初本塁打はプロ1年目の2006年4月22日。京セラドームでのオリックス戦の7回にレフトスタンドに突き刺した一発だった。1年目は3本塁打に終わったが、3年目の2008年には初の2桁となる17本塁打を記録した。

その後も本塁打を積み重ねて2015年に自己最多となるシーズン35本塁打。この年はシーズン3度(4月2日・通算128号、6月11日・通算142号、9月6日・通算157号)のサヨナラ本塁打を放ち、工藤ホークス初年度のリーグ優勝に大きく貢献した。この年のチームスローガン『熱男』。本塁打後の熱男パフォーマンスはいつのまにか松田の代名詞となり、現在も継続中だ。

さらに2018年、2019年には2年連続の30本塁打をクリアするなど、鷹の中心打者として常勝軍団を支えてきたが、積み上げてきた数字以上に印象深い本塁打が多いのがいかにも松田らしい。

2010年5月4日には初回満塁弾(通算41号)。2011年4月17日には1試合2本を放ち、2本目(通算56号)が自身初のサヨナラ弾となった。また同年の「鷹の祭典」では3試合連続弾(通算69号~71号)、2018年にも自身2度目となる「鷹の祭典」3試合連続弾(通算227号~229号)を放ち“鷹のお祭り男”のイメージを定着させた。2019年の開幕戦では通算1500本安打を通算245号となる本塁打で飾っている。

思い出深いプロ1号「王監督がなかなか結果が出ない中で1本打つまで使っていただいた」

新型コロナウイルスの影響で開幕が遅れて無観客スタートとなった昨年は、有観客となった初日の7月10日にシーズン1号(通算275号)。観戦を待ちわびたファンとともに“声を出さない熱男”を披露した。

その中で、松田自身が思い出深いのはやはりプロ初本塁打だという。

「当時、王監督がなかなか結果が出ない中で1本打つまで使っていただいた。1軍というのはこんなにすごいのかと感じている時に打てた1本からスタートしたのでね」

そこから積み上げてきた300本の“熱男弾”。自身の節目は迎えたがシーズンの戦いはまだまだ続く。「現状4位ですけど、2021年はこの順位って決まるまで諦めることはできない。あと20試合、どう転ぶかわからないので10月はめちゃめちゃ頑張って活躍したいとみんな思っています。僕もその一員になりたいなと思います」。

2014年の最終戦で劇的なサヨナラ優勝決定打を放った男は、最後まで戦う姿勢を崩すことはない。(藤浦一都 / Kazuto Fujiura)

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