催事場・コンサートホールの事業者、コロナで半数が赤字 都市部ほど深刻

 新型コロナウイルス感染拡大から1年半が経過した。2020年4月の第1回目の発令から現在まで、大都市圏を中心に緊急事態宣言は最も多い地域で4回発令され、大規模な展示会や演劇、音楽イベント、スポーツイベント等は延期や中止、人数制限などの影響が深刻さを増している。
 東京商工リサーチでは、全国の主要催事場・コンサートホールの運営業者(指定管理含む)138社の業績を調査した。138社のうち、半数の70社が2020年度(2020年4月期~2021年3月期)の決算で最終赤字を計上している。赤字企業は、“コロナ前”の2018年度(2018年4月期~2019年3月期)から1.9倍に急増し、コロナ禍での事業者の窮状が改めて明らかになった。
 政府は、10月1日にすべての都道府県で緊急事態宣言の解除を決めたが、大人数が集う催事・コンサート等は当面、来場人数の制限が継続される。こうした会場を運営する事業者は、さらに我慢の経営が続く展開となる。

  • ※本調査は、TSR企業データベース390万社から2018年度(2018年4月~2019年3月期)、2019年度(2019年4月期~2020年3月期)、 2020年度(2020年4月期~2021年3月期)の3期連続で売上高、当期純利益(以下、利益)が比較可能な催事場・コンサートホールの運営業者(指定管理含む)138社を抽出し、分析した。

 

  • ※指定管理施設が複数の都道府県に跨る場合は、本社が所在する都道府県で集計した。

 

コロナ禍で環境が激変、半数以上が赤字に

 全国の催事場・コンサートホール運営業者の売上高合計は、2018年度(2018年4月期~2019年3月期)が6951億4100万円、2019年度(2019年4月期~2020年3月期)が7124億9900万円と順調に伸びていたが、2020年度(2020年4月期~2021年3月期)は5325億2200万円に急減し、新型コロナ感染拡大の影響が直撃した。
体験型イベントの多様化などで2019年末までは、大都市圏を中心に催事場の稼働は高水準で推移していた。だが、2020年初頭から新型コロナ感染拡大に伴い、催事や公演は多くが延期や中止を余儀なくされた。都心部の大型催事場は、2020年度の稼働率が2018年度比で7割以上落ち込むなど、経営に深刻な打撃を受けた。
 事業者によっては、2020年3月期決算から新型コロナの影響が及んだケースもあり、先行きの不透明感にも拍車をかけ、当面、稼働率低下の長期化が懸念されている。
 最終利益は、2020年度は379億9600万円の赤字だった。2019年度(340億7300万円の黒字)から211.5%減少した。集計対象の138社のうち、ほぼ半数の70社(構成比50.7%)が赤字となった。新型コロナの影響がなかった2018年度(36社)比では、1.9倍に急増した。

コンサート―ホール業績

 

地域別業績 大都市圏の落ち込みが顕著

 大都市圏(首都圏1都3県、大阪府、愛知県、北海道、福岡県)と、それ以外の地域の業績を比較した。コロナ禍の2020年度は、大都市圏の売上高は4062億9100万円(前年度比27.4%減)だった。減少率は全国(同25.2%減)を2.2ポイント上回り、大都市圏以外(同17.3%減)と比較すると10.1ポイント上回った。
 人口100万人を超える政令指定都市をはじめとした大都市圏では、他の地域に比べ緊急事態宣言の発令回数が多く、催事や公演の延期や中止が相次いだ。また、2000人以上が収容可能な大型ホールや展示場、1万人以上の動員が見込めるアリーナ施設・ドーム球場などの大型施設の数も多く、稼働数の落ち込みが業績に深い傷跡を残した格好だ。

損益別 減収減益が6割

 138社の業績(前年度比)は、減収減益が最多の84社(構成比60.8%)、次いで、減収増益が40社(同28.9%)で続く。減収企業は124社に達し、全体の約9割(同89.8%)を占めた。
 一方、増益は46社(同33.3%)だった。新型コロナで催事件数が激減し、売上増が見込めない環境下でもコスト削減など経営のスリム化を図り、低稼働を耐え忍ぶ企業も散見された。
 だが、長引くコロナ禍での対応も限界にきている。今後、再び新規感染者が増加し、催事の延期・中止が頻発すると、赤字に耐えられない企業が一気に増える懸念も出ている。

コンサートホール黒字赤字

 新型コロナ感染拡大に伴う三密回避、ソーシャルディスタンスの徹底で、ビジネス関連の展示会やシンポジウムなどのイベントはオンライン開催が定着化した。また、音楽関連のイベントやコンサート、スポーツイベントも度重なる延期や中止に、無観客公演や来場人数の制限が広がり、“コロナ前”の集客は困難な状況が続いている。
 こうした厳しい環境を背景に、催事場・コンサートホール運営業者の2020年度決算は、ほぼ半数が赤字決算に追い込まれた。大型ホールや催事場の施設管理や運営は、自治体が出資する第三セクターが担うことも多く、もともと経営基盤は安定していた。だが、加速化する指定管理者の民間への移管や自治体による文化事業等への予算が先細るなか、突然襲い掛かった新型コロナの直撃で、施設運営や施設存続への余波も懸念されている。

 すでに施設運営への影響は民間事業者では顕在化し、私営のライブハウスや劇場はコロナ禍での閉館アナウンスが相次いでいる。10月1日には全国で緊急事態宣言が解除され、イベントやコンサート等での収容人数が緩和されるが、“コロナ前”の水準には程遠い。展示会やコンサート開催には、運営・設営から多くの作業が必要とされる。長引くコロナ禍による疲弊は、周辺の関係先にも波及しており、状況に合わせた画一的でない支援策が求められる。

データを読む一覧に戻る

最新記事・倒産状況に関するお問い合わせ

フォームからお問い合わせ

お問い合わせはこちら

電話・FAXでのお問い合わせ

株式会社東京商工リサーチ 情報部
03-6910-3155

最寄りのTSR支社店へお問い合わせください 支社店一覧

関連情報

© 株式会社東京商工リサーチ