成田凌, 黒木華, コムアイ 出演。 原作 燃え殻 朗読劇「湯布院奇行」 “遠くへ行きたい” 誰も知らない世界へ_

「湯布院奇行」は燃え殻書き下ろし原作、佐藤佐吉脚本、演出は数々のヒットドラマを手掛け、また映画監督としても活躍する土井裕泰の朗読劇。成田凌が演じる作家が、黒木華演じる謎の女に誘われて幻想的な世界に誘われる。コムアイは歌唱と朗読で参加、またコムアイが歌唱する楽曲は坂本慎太郎。

雨の音、紗幕の向こうに成田凌演じる作家が佇む幻想的なシーン。演奏は生、映像演出は時には控えめに、時には状況を雄弁に。「遠くへ行きたい」、”遠く”というのは…。

タイトルロール、キャスト、スタッフ、いわゆるオープニング映像、これから展開される物語を予感させるには十分。歌、コムアイのよく響く歌声、高音、作品にマッチ、音楽、演奏は日高理樹。ミステリアスなメロディ、物語が進行する。場所は旅館、障子の映像、作家を取り巻く状況は実なのか虚なのか、”100日以上滞在してはいけない”と書かれた手紙、電波も充電器もない、テレビも電話も、不思議なことが起こる、なぜ?作家は少しずつ”迷宮”に入り込むように、この状況に迷い込む。猫が鳴く、猫という動物は一筋縄ではいかない生き物。ミステリアスな雰囲気、折に触れて猫が登場、鳴き声、シルエット、「にゃ〜」の声が劇場に響く。

作家、”彼女の記憶”、「遠くへいかない?」遠くとは?作家、「僕」の心の内、内面、「僕」を取り巻いているもの、湯布院”奇行”、最後に見える景色は?成田凌の「僕」、迷い込んだ主人公、映像を中心に活躍しているが、舞台、しかも一風変わった朗読劇にチャレンジ、存在感は抜群、その「僕」を翻弄するのは黒木華演じる複数の女性、時には妖艶に、時にはさらりとかわす、自在に演じ分け、また成田凌とのコンビネーションもよく、キャスティングの妙、そこにコムアイ、テイストの異なる佇まい、歌声が作品世界にマッチ、観客を”奇行”に誘う。

朗読劇ではあるが、映像、音楽、朗読の声が一体化する瞬間があり、その渾然一体な舞台、一種の没入感とでも言うのだろうか、客席全体が、ぐっと舞台の世界に溶け込んでいく。ラスト近く、スクリーンに客席、中央に「僕」場内は明るくなる、この瞬間、観客は完全に、この”湯布院奇行”の共犯となる。行き着く先は、どこなのか、「僕」ですらわからない、メビウスの輪のよう。禅問答のような問いかけ、だから、”奇行”。ユニークな演出、”新しい舞台”を作り出そうというクリエイター、誰も見たことのない景色を見せる舞台、クリエイティヴというのはゴールが見えない旅、あくなき追求を感じる作品であった。

<あらすじ>
「今、君の⽬の前に立っている女を私たちで共有しないか?」
店先で⼥から渡された手紙に、そう書かれていた。
都会での生活に疲れた作家の「私」は、 知り合いの芸術家の勧めで湯布院へ向かう。
そこで瓜二つの2人の女性に翻弄され、 徐々に現実と虚構の境がわからなくなっていき・・・
彼の行き着く先は楽園か、 それとも・・・!?

<概要>
朗読劇「湯布院奇行」
日程・会場:2021年9月28日〜9月30日 新国立劇場 中劇場
出演:成田凌、黒木華、コムアイ 演奏:日高理樹
原作:燃え殻
脚本:佐藤佐吉
演出:土井裕泰
企画:佐井大紀 美術:乘峯雅寛 照明:齋藤茂男 音響:佐藤日出夫
衣裳:Babymix ヘアメイク:中村了太 映像:溝上水緒 劇中絵画:平井豊果 劇中曲:坂本慎太郎
舞台監督:加計涼子 演出助手:河合範子 宣伝美術:熊谷菜生 原作 構成協力:嘉島 唯
製作:TBS

公式HP:https://www.yufuinkikou.com

舞台写真:TBS 提供

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