<社説>玉城知事就任3年 公約の進捗丁寧に説明を

 2018年9月30日の県知事選で玉城デニー氏が初当選してから3年がたった。任期は残り1年を切り、1期目の集大成の時期を迎える。 3年前に想定していなかったコロナ禍への対応が目下の最重要課題だ。とはいえ、県の感染症対策や限られた予算の中での優先順位をオープンにし、県民の理解と協力を得ていくことはコロナ前と変わりはない。むしろ行政運営の透明性や説明責任が一層重要になっていることを踏まえ、公約の進捗(しんちょく)について分かりやすい説明を求めたい。

 玉城知事は就任以来、「誰一人取り残さない」社会の実現を掲げ、多様性の尊重や女性リーダーの育成などを打ち出してきた。SDGs(持続可能な開発目標)の理念を県の施策展開に反映する考え方は、世界的な潮流を捉えた取り組みといえる。

 玉城知事らしい独自カラーやしなやかさを発揮してきた一方で、住民ニーズに応える行政サービスの提供や効率化に結び付いてきたか、3年間の具体的な成果も問われる。

 玉城知事は知事選で掲げた公約の291件について、「完了」が5件、積極的に取り組む「推進中」が280件、調査や要請段階にとどまる「着手」が6件と説明した。ほとんどが「推進中」にくくられており、何に重点を置き、その達成率はどの程度なのか、留意事項は何かなど説明不足は否めない。

 目玉公約の一つである中高生のバス通学無料化については、住民税非課税世帯などの中高校生を対象にしたところまで無料化が進んでいる。一方で保育料無料化など実態とかけ離れた公約もある。施策ごとに進捗を可視化するとともに、残り任期で達成を目指す重点政策を改めて明確にする必要があるだろう。

 任期中の来年5月に、沖縄の施政権が日本に返還されて50年となる。半世紀にわたる沖縄振興の功罪を総括し、沖縄自ら制度設計に取り組む重要な節目だ。ただ、現状では既存制度の延長・継続で国への要請姿勢が目立つ。知事選でうたった「新時代沖縄」のスローガンにふさわしい戦略や自治の姿を描けているのか、不断の点検が必要だ。

 国と県との関係では、辺野古新基地建設阻止の公約を巡り、玉城知事は政府に対話を呼び掛け続けるが、政府は一向に応じずに埋め立て工事に突き進んでいる。

 翁長雄志前知事は保革のイデオロギーを超えて県民の一致点を見いだす「オール沖縄」の政治体制を構築し、民意を背景に国の強権と対峙してきた。辺野古反対の公約を引き継いだ玉城県政だが、オール沖縄の政治の枠組みは支援してきた企業の離脱が続くなどほころびが見える。

 玉城県政は新基地建設阻止に向けて有効な手だてを見いだせていない。繰り返し示された民意は玉城知事にとってかけがえのない力であることを再認識すべきだ。

© 株式会社琉球新報社